16-8「1回きりの大技」♤
この城に来て2度目の爆風がオレ達を包み込む。でも、その風も瓦礫もオレ達に届くことはなかった。ダイヤが『盾の魔法』を維持してくれていたからだ。
「ダイヤ、大丈夫かダイヤ」
『盾の魔法』がまだ残っているという安堵から前方に立っている彼女へと声をかける。「はい、大丈夫です」といつものように振り返り微笑んでくれることを期待しながら。
でも、実際は違った。彼女の身体がぐらっと揺れたかと思うと倒れ『盾の魔法』が消滅する。同時にいつから降っていたのか雨が身体を打った。加えてゴロゴロと嫌な音が鳴り響く。
「ダイヤ、ダイヤしっかりしろ」
返事がない。でも息はあるはずだ。疲れて気を失っただけだと縋るような思いで彼女の呼吸を確かめる。
「……ダメだスペード、ダイヤの胸が動いていない」
クローバーが涙声でそう告げる。そんなバカなはずがねえと口元に耳を当てて呼吸を確認するも彼女の呼吸音は聞こえてこなかった。
「嘘だ、なんだよこれ。くそっ! くそっ! 」
余りの悔しさに地面を叩くそして魔王のことを思いだし憎しみのまま魔王のいた方向を見つめる。
そこに魔王の姿はなかった。
「……ダイヤは最期の力で魔王を倒したんだ」
クローバーがそう口にした時だった。
「やはりこうなってしまったか」
背後で声がして振り返る。そこには大賢者が立っていた。
「……大賢者様、どうしてここに」
「いやな予感がしてのう。黙っていてすまなかったがワシはここにくることができたんじゃよ、といっても戦闘では何の力にはなれんがな。ただ……」
そう言って彼はダイヤを見つめる。
「何と死を迎えるというのに美しい顔をしておる」
そう言うと彼は彼女の胸に手を置いた。
「ワシは彼女にすべての魔法を教えた。というのはウソなんじゃ、というのも理由があってのう。彼女は優しすぎる」
思わせぶりなことを呟く。彼女を回復させようとしてんのかと期待をした。けれどそんなことが可能なのか? 仮に可能だとしたらどうしてそれを彼女に教えなかったのだろう?
疑問に思い見つめる中大賢者が口を動かして呪文を唱える。
「『リザレクション』! 」
途端に2人が眩しい光に包まれる。美しい光だった。オレもクローバーも思わずその光に見惚れていた。
どれほど時間が経っただろうか、突然背後から声をかけられる。
「誰かと思ったら老いぼれか、何をしておる」
「何」
「……今の声は」
慌てて振り返るとそこにはどういうわけか魔王の姿があった。
「どうして」
「残念だったな、あの魔法は威力が足りず我の細胞を1つ残らず消し去ることができなかった。我は細胞が1つでも残っていればこのように再生することが可能なのだ」
「そんなバカなことがあるか! 」
堪らずに叫ぶ。だったらダイヤは何のために……
「さらばだ、冒険者諸君。貴様らの集めたオーブと杖は冒険者をおびき寄せる餌に、そして魂は傀儡として冒険者を迎え討つのに利用してやろう。『デモンズペイン』! 」
勝ち誇ったように魔王が呪文を唱えると巨大などす黒い球体が目の前に現れる。
「もう少しじゃ、この魔法を発動している間は他の魔法を使うことはできぬ。すまんが何とかあれを防いでくれ」
大賢者が叫ぶ。防げと言われてもあの大きさを止めることなんてオレには……
諦めかけて天を見上げると巨大な雷雲が目に入った。途端に脳内にダイヤの兄ちゃんの使った剣の記憶が蘇る。
いや、できるかもしれねえ。一回きりの大技だ。
刀を鞘に収めて両手で剣を持ち掲げる。鍵はオヤジが作ってくれたこの雷を通す剣だ。オレにはダイヤの兄ちゃんみてえにあんな強力な魔法は使えねえ。だからそれを自然の雷で補う。
「頼むぜ、『スァンダ』! 」
細長い糸のような魔法をイメージして放つとオレの『雷の魔法』は雷雲へと突っ込んだ。そして
ゴロゴロゴロピシャーン!
激しい音と共に雷がオレの剣に宿り巨大な雷の剣になる。余りの大きさに溢れねえようにコントロールするのがやっとだ。
「な、なんだと」
魔王が驚きの声を上げる。
「へっ、これがオレの大技『秘剣轟雷斬』だああああああああああああああ! 」
声を張り上げ剣を振るうと魔王の魔法とぶつかった。
「く、くそっ……いけっいけっ」
激しい衝突に腕が振るえる。
やべえ、この剣を振り切る力がねえ。このままじゃこの剣を放しちまう。
悲観にくれたその時だった。ふと暖かい手が身体に触れる。クローバーの手だ。
「クローバー」
「……大丈夫、ダイヤのお陰でこれくらいなら」
「へっ、なら決めちまおうぜ」
彼女にそう合図を送ると同時に最後の力を振り絞る。
「「いっけええええええええええええええええええええ! ! ! 」」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお! 」
オレ達の剣は魔王の魔法、そして魔王の身体も切り裂いた。いずれ再生されちまうけれど時間は稼げたんだ。
「後は頼んだぜ」
クローバーとどっさりと地面に倒れて何とか頭を動かすとダイヤとトオハを見てそう口にした。




