15‐18「作戦開始」
侍の逃亡の2日後、モンスター達に冷たい目で見られながらも侍を倒したという功績から事なきを得た俺は大軍を引き連れて人の少ない戦地へと向かっていった。場所は人間側の本拠地と丁度半分の辺りにある町のはずれだ。目的は侍を捕えたことにより戦力に乱れが生じた敵軍の動揺をついて拠点を確保すること。大軍が動いているのだから無論この襲撃のことは王様もヤギリさんも知っている。あえてそうしたのだ。
そうしてヤギリさんが知っているということは……
「おい、ヤバいぞあの町の防衛に例の女剣士がいる」
偵察に向かったタカラスがけたたましく鳴く。
「なんだって、クソ! どうしてあいつがいるんだよ聞いてねえぞ」
報告を受けたゴブリンの1人が地団太を踏む。女剣士というのはスペードのことだろう。彼女はこの2日間で戦地を1つ奪い取ったようで侍に変わる要注意人物として警戒されていた。
「トーハさんの仰った通りになりましたね」
最後尾である俺の隣を歩いていたダイヤが隙を見て囁く。彼女の反応通りで実のところこうなることは予想していた。ヤギリさんがこの戦争を終わらせたいのなら各陣営にいる警戒されている2人を戦わせてどちらかを潰してしまうのが手っ取り早いからだ。
「どうする? まだおれ達の接近がバレるようなヘマはしてないから気付かれてはなさそうだが引き返すか? 」
タカラスが不安気に尋ねる。
「いや、俺が行く。あの女剣士には借りがあるからな」
悪役染みたセリフを返すと「頼もしいねえ」「それでこそだ」とモンスター達が次々に俺を称賛する。とはいえ厄介なのは弓兵の存在だ。幾ら八百長とはいえ実は透明になってヤギリさんが見張っている可能性もある。こちらも何かそれっぽい方法を考えなければ……
と頭を働かせようとしたその時だった。
「お、おい嘘だろ」
前方のリザードマンが声を上げる。何かと目を凝らすとそこには単身駆けてくるスペードの姿があった。
「女剣士だあ」
「返り討ちにしてやる! 」
スペードの評判に戦意を喪失した者とそうでない者が次々に声を上げる。未だ戦おうとする者達は頼もしいのだけれど彼女は部外者だ。勢い余って殺されてしまうというのも困る。故に……
「待ってくれ、皆手を出さないでくれ。俺が行く」
俺が出る。予想していた展開とは大きくずれたけれどこれはこれで手っ取り早い。俺は最後尾から駆け出しモンスター達が避けて出来た道を通るとスペードに向かって走り出す。
「いきなり大将戦だ」
そんな声が上がった。大将という言葉すら知っていることに驚きながらも同意する。ここで勝ったほうが有利に事を進められるのは確実だ。
「悪いが貴様を倒してこの陣地は俺達が頂く」
一応モンスター軍ということなのでそのようにスペードに叫ぶと彼女は「それはオレのセリフだ」と返した。スペードとの距離は約100メートル。彼女のアドリブに感心しながらも俺は背中にある剣に手をかけて抜くと彼女も同じように剣を抜いた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「はあああああああああああああああああああ」
キィン!
俺達の剣がぶつかりあい一際大きな金属音を奏でた。




