15-16「裏切り者の正体」♢
夜は閑散としている港町を歩いてフミさんの家に着いた私は以前のように扉を4回ノックする。するとガチャリと扉が開き明かりと仄かな良い香りとともにフミさんが私を迎えてくれる。
「こんばんは、夜分遅くに申し訳ありません」
「あらダイヤさんご苦労様。ささっ、どうぞどうぞ」
彼女は笑顔でそう言うと私を以前のようにテーブルへと案内してくれた。そうしてようやく良い香りの正体に気が付いた。テーブルの上には色とりどりの料理が並べられていたのだ。
「あの、これは一体」
「私ったらごめんなさいね前は気が利かなくてダイヤさんもクローバーさんも姿を消しているのだからお腹が空いていますよね」
「いえ、それは……」
そこまで言いかけて今日は色々あって食事前にこちらへ向かったので何も口にしていないことに気が付く。それを認めたが最後、私の中のお腹の虫が鳴き声をあげる。
「良かった、安心して今日のことは私しか知りませんから」
思わず赤面してしまう私に対して彼女は微笑む。それに対して恥ずかしさを感じつつも1つ引っかかったことがあった。
「クローバーさんはまだいらしていないのですか? 」
「はい、彼女はまだ見えませんね」
彼女がそう答えた時だった。コンコンコンコンとノックが4回される。
「どうやら今ご到着のようですね」
フミさんは微笑むとドアの方向へと歩いて行き手を伸ばして開いて少ししたらクローバーさんが姿を現した。
「……待たせてごめん、馬車を見つけるのに手間取った」
「いえいえ、私も今到着したところですから」
彼女に向かって微笑む。程なくしてフミさんに案内されテーブルに着いた彼女は目を丸くする。
「……これは」
「前回はごめんなさいね、なんもご用意できずにお腹がすいているでしょう」
彼女の驚きようをみて私もこんな感じの顔をしていたのかなとぼんやりと考える。すると信じられないことに彼女のお腹も音を立てるのだった。
「……ごめん」
「いえ、実は私も先ほどそうでしたから」
赤面する彼女に打ち明ける。
「ダイヤも? 」
「はい、ですからこれは私達だけの秘密です」
私が提案すると彼女は「そうだね」と照れ笑いを返してくれた。
♢♧
「「ごちそうさまでした」」
「はい、おそまつさまでした」
「手伝います」
顔所の手料理をご馳走になった私は後片づけを手伝うためにクローバーさんと共に立ち上がろうとするもフミさんに制されてしまう。
「良いんですよ私がやりますから。それよりもお2人はお2人の成すべきことをなさってください」
彼女に指摘されてハッと気がつく、恥ずかしながら美味しい手料理で忘れてしまっていたけど私達の目的はお互いの陣営の情報交換だ。私はクローバーさんを見つめる。
「クローバーさん、気になっていたのですがどうしてスペードさんは戦地ではなくお城にいらっしゃったのですか? いえそれ以前にどうしてトーハさんが単身で乗り込んでくることをご存じだったのでしょうか? 」
質問を投げかけるとクローバーさんは肩をすくめる。
「……ボクも分からない。ただ相談役の人がそうしろって」
「相談役の方ですか? 」
そういえばモンスター陣営にも相談役を名乗る頭のキレそうな人がいたとヤギリさんの顔を思い浮かべながら尋ねると驚くべき答えが返ってきた。
「……うん、確かヤギリって人」
「えっ……ヤギリさんですか? 」
驚いて思わず立ち上がる。その名前はたった今思い浮かべていた名前だったからだ。でもこれは一体どういうことなのだろう?
「……どうしたの? 」
心配そうに彼女が尋ねてくれたので私は彼女とこの問いを共有するために口を開く。
「実はモンスター軍の方にもヤギリさんという方がいるんです」
「……どんな人? 」
「眼鏡をかけた黒髪の男性です」
ヤギリさんの特徴を思い浮かべて伝えると彼女の顔からみるみる血の気が失せる。それが彼女の返答を物語っていた。
一体これはどういうことなんだろう? もしかして……私達は彼の掌の上で踊らされている? でもどうして人間のはずの彼がこんなことを?
壮絶な予想をした私はヤギリさんが恐ろしく感じてその場に凍り付いた。




