15-15「ヤギリ」♤
落ちていくトオハを見守る。トオハが落ちてから程なくして何者かが後を追うように飛び降りる気配がしたから恐らくダイヤも一緒だ。トオハはみるみる小さくなってやがて見えなくなった。
「ちっ……この剣で斬れねえのは不満だったがまあこれで生きてはいねえだろ」
吐き捨てるように口にすると兵士達のところへと戻ろうと踵を返したその時だった。
「……タアハがダイヤの魔法で着地するのを確認した」
教えるために近付いてくれたんだろう。透明になってみえねえけどクローバーが耳元で囁く。
良かった。みんな無事だ。
思わず頬を緩ませて「サンキュー」と囁き返しながらもこれから兵士には倒したという体で接するため気を引き締めると彼らの元へと歩き出した。
「おかえりなさいクイーンさん。どうです? 私の予想通りゴブリンが単身乗り込んできたでしょう? 」
城の銀色で煌びやかな装飾がされている玉座の間で今回のことを報告すると眼鏡をかけた黒髪の男が得意げに言う。クイーンというのはオレの考えた偽名だ。
「まあな、しかしよく分かったなそんなことが」
事情が事情なので思わず皮肉のようになってしまいそうなのを堪えて何とか賞賛に聞こえるようなイントネーションで伝えると男はフンと鼻を鳴らした。
「丁度街へと出かけたときに一見強そうなゴブリンを目にしましてね、ですが所詮はゴブリン。力はあっても頭はからっきしの猪突猛進脳だったというわけですよ。政治を任せるなんて土台無理な話なのです」
その言葉に頷く王様の陰で男に対して思わず拳を握りしめ殴りかかりたくなるのもグッと堪える。ここでそのような行動に出るのは最悪だ。何よりトオハは生きている。オレ達はこの男を出し抜いているのだ。何も知らず可哀想だと心の中で笑ってやるだけでいい。
「それで今後はどうすんだ。あのゴブリンは始末したとはいえこっちも侍を持ってかれちまった。約束通りオレを指名してくれんのか? 」
「ええ、ええ。そうさせて頂きます。昨日拝見したところ貴方の実力はどこか抜けてるここの兵士と比べても見事なものでしたから。ですよね王様? 」
「あ、ああ」と王様も同意したそれを聞いて思わずニヤリと笑う。それを男は成り上がりが成功した故の笑いととったのか彼も不敵に笑って見せる。
「それでは本日はお休みください。明日からは戦場それもかなりの激戦区のエストへと向かって頂きます」
「了解」と答えると踵を返して玉座の間を後にしようとしてふと立ち止まる。
オレは今までやり取りしていた王様よりも王様のように決定権を持っているように見えるこの人物の名前を今まで聞いていなかったのだ。その旨を伝えると男は笑う。
「そういえば自己紹介がまだでしたね大変失礼しました。私はヤギリと申します。以後お見知り置きを」
「ヤギリか、よく覚えておくよ」
オレはそう伝えるとともに再び回れ右をすると今度は立ち止まらずに玉座の間を後にした。




