2-11「洞窟内の隠し扉」
「う、ううん………あれ?、私………。」
精神を視覚と嗅覚に集中し目を凝らし数時間………目はなれたとはいえ特に背景の変わらない洞窟内、入り口から吹いてくる風ぐらいしか変化がなく瞼が重くなり心の目、心の鼻で見張りをするため目を閉じようかと考え始めたときにダイヤが目覚めた。眠気覚ましも兼ねて「おはよう」と挨拶をする。
「あっ…すみません私、眠っちゃってました!?」
「うん、でもここまで睡眠なしで歩いてきて疲れてただろうから試練に備えての休養は必要だからいいことだと思うよ。」
俺は笑顔で言った。実際、時間制限があるというわけでもないのだからそんなに謝るほどのことでもない。
「でも、トーハさんは一睡もしていないのでしょう?」
彼女の心配そうな声を聞いて俺は「あっ」と間抜けな声を漏らす。そういえばそうだった………この世界に来てから俺は一睡………はしたが旅に出てから今までは一睡もしていなかった。
「大丈夫だよ、俺は試練受けられるかもわからないんだしさ、それにさっきは眠かったけど今は何か行ける気がする。」
そう言って「心配ない。」とガッツポーズをする。
「何が大丈夫ですか!私は心配です。だから眠ってください!トーハさんが眠るまで私は試練を受けません!!」
彼女の予想外の反応に面を喰らった。
怒られてしまった………。
おしとやかな彼女からは想像できないほどの怒った声だった。
「………ごめん。」
「いえ、私こそすみませんでした。急に………。」
彼女が慌てて頭を下げる。
「いやいや、心配してもらえて嬉しいよ、ありがとう。じゃあお言葉に甘えて眠らせてもらおうかな。」
「はい、おやすみなさい。見張りは私に任せてください!」
彼女は力強く言った。俺は身体を横にして瞼を閉じる。瞼が待ってましたとばかりに心なしかいつもよりはやく落ちる。
そしてすぐに、俺は眠りに落ちた………。
「ピューイ。」とスライムたちの泣き声で目を覚ます。疲れは取れている、ダイヤのお陰ですっかり休めた。
「うーん。」、と身体を起こして背伸びをする。今は何時だろう、いや時計はないのだったか………しかしどれだけ寝ていたのかは気になる。たっぷり寝た気分でも実は3時間しか寝ていないなんてのは良く経験したからだ。
「目が覚めたんですね、おはようございます。トーハさん!」
「おはよう。もう陽は昇った?」
「はい、ぐっすり眠れたようで良かったです!」
かなり眠れたようだ、安心した。スライムたちはこちらに気付かない、どうやら朝食を食べているようだ。よっぽどあのリンゴがお気に入りらしい。
すると彼女はカバンからパンとリンゴを取り出した。
「私たちも朝食にしましょう。」
「ありがとう。」
お礼を言ってパンを受け取る、彼女の持ってきたパンは柔らかく口当たりは滑らかでしっとりしていた。甘みも調整されていて甘すぎない絶妙な調整だ。所々にレーズンが入っていてそれも良いアクセントになっている。
「あ、これ美味しいですね!」
嬉しそうに彼女が言った。美味しそうにパンを頬張っている。
「うん。」と頷く。
「ごちそうさま、美味しかったよ。買っておいてくれて助かったよ、ありがとう。」
彼女にお礼を言う。中は洞窟で暗いので朝食感はあまりしないが良い朝食だった。
「い、いえ私は買っただけですから………それで、これからどうしますか?」
彼女は戸惑った後に本題を切り出した。彼女も自分の冒険者の資格がかかっているとあって実は気が気ではなかったのかもしれない
「それなんだけど、ここが試練だとしたら多分どこかに入り口があると思うんだ………どこかに隠し扉みたいなのがあるんだと思う。」
そう言って俺は狭い入り口の割には広い洞窟を見渡した。この広さの洞窟ならば、どこかに秘密の入り口があってもおかしくないだろう。
「秘密の入り口………ですか。」
彼女が緊張したような声を出す。
秘密の入り口とはなんとロマンな響きか、昔は誰もいない人も寄り付かないような場所を秘密基地としたことがある。それだけに口にしながら興奮してしまったのだが、彼女は一転それを聞いて恐ろしいというか緊張しているようで何だか申し訳ない気持ちになってしまう。前述の通り彼女にとってはというか俺にとっても冒険者の資格が得られるというこの場面でロマンとかそういう感情を口にするのはまずかったかもしれない………と俺は口に出さず反省した。
「多分、どこかにあると思うから探してみよう!」
そう声をかけたときだった、「ピューイ!ピューイ!と朝食を終えたらしいスライムたちが近寄ってきた。」
「手伝ってくれるのか?」
俺がそう尋ねると嬉しそうに「ピューイ!」と跳ねる。ありがたい…これで効率は5倍、気持ち的にはそれ以上だ!
俺たちは手分けして洞窟を岩肌に沿って手探りで何か仕掛けはないかと探ることになった。
「何だこれは?」
しばらくして、俺は妙な岩の色に塗装してある引き出しのような取っ手を掴んだのか岩がスライドして中から小さなスイッチが出てきた。
迷わず、そのボタンを押す。するとガーッという音とともにすぐ横の岩だと思っていた扉が開く。扉は高さ幅ともに2メートルとかなり広い。
こんな仕掛けがあったのか………。あまりの手の込んだ仕掛けに呆然とするも数秒後声を振り絞って
「見つけた!」
と皆に知らせる。
「びっくりしました………まさか岩にみせかけてスイッチや扉が隠れていたなんて。」
ダイヤも驚いている様子だ。それに同意を示すかのようにスライムたちも「ピューイ!」と跳ねた。
「行こう!」
決心してダイヤの裾を引いた。これでは逆に怖がっているように見えてしまうだろうが背は小さく、ゴブリンなので彼女が握ってくれたとはいえこちらから握手をするというのは申し訳ない気がしたので仕方がない。
「はい!いよいよ試練の始まりですね………!」
彼女も決心したように答える。スライムたちがついてくるとでもいうように「ピューイ!!!」と勇ましく跳ねてくれたが気持ちだけ受け取っておくとの意味を込めて頭を撫でたら伝わったのか大人しくなった。
スライムが家にしていたのは予想外なのだろうが、こんなに入り口から仕掛けに凝ったダンジョンなら見張りがいるということもないだろう………
………現に俺や彼女は一夜をこの洞窟で過ごしたにも関わらずこの洞窟を出る兵士をみたことはない。彼女も兵士をみたら知らせるだろう誰とも会わなかったのだろう。ならば、こうして袋に隠れず彼女の力になれる!
俺は彼女と2人で隠し扉への道を踏み出した。




