15‐13「ダイヤの秘策」
「ダイヤ、作戦ってどんな」
「作戦がある」と言ったダイヤに尋ねると彼女の吐息が耳の直ぐそばで聞こえた。侍に悟られたらマズいということだろう。俺は聞き逃すまいと耳を澄ます。
「私が侍さんが刀を振ろうとしたらお2人の間に大きな岩を出します。ですからトーハさんはその時に生まれた隙をついてください」
「それは、どうやって」
「大丈夫です。私を信じてください」
彼女は侍に悟られないためか短くそう答えると身を屈めたようで横目で見ると地面の小石を拾ったようだった。それを見て彼女が何をするのかを悟る。彼女は『大きくする魔法』を使用して小石を岩に変えようというのだ。後は俺がそこで生まれる侍の隙を突けば侍を倒せる。
作戦は決まった。俺は侍を見つめる。
「どうやら何か決まったようですねえ、でもそれがうまくいくかは別の話ですぜ」
侍が刀を構え直す。それを受けて改めて剣を強く握る。再び俺達の睨み合いが始まった。しかし、前回の経験からお互いダイヤの盾が消えたら俺が仕掛けてくると侍も読んでいるようだった。
再び訪れる長時間に思われる睨み合い、その終わりを告げる様にダイヤの盾がふっと消えた。
「うおおおおおおおおおおおおお」
ダイヤが仕掛けやすいように少しでも侍の注意を向けようと俺が勢いよく駆け出す。それと同時に向こうも先ほどのように駆け出した。一歩、二歩……徐々に距離が縮まっていく。そして再び以前のように侍が刀を振り下ろそうとした時だった。
「『マキシマァム』! 」
ダイヤの声が響き渡り頭上から侍との間にズシンと巨大な岩が出現する。この隙に素早くこの岩を回って刀が弾かれた侍の元へ向かおうとしたその時だった。
『侍は岩を斬る』という噂を思い出しある懸念が生まれる。もしそれが事実だとしたらいとも容易く岩が斬られて回り込む隙に立て直して第二撃を放たれるのではないか?
その可能性は十分にあり得た。刀で岩を斬れるのなら立て直すのにそう時間はかからないからだ。ましてや手練れであるこの侍ならば1秒とかからずにやってのけるかもしれない。
しかし噂が嘘だとしたら俺は岩に激突してしまうだろう。そうなったら呆気なさすぎる敗北だ。
リスクがある2択のうちどちらかを選ばなければならない。しかも目の前に岩は迫っている。考える時間はほとんどない。
もうここまで来ると運否天賦直観にかけるしかないと考えたその瞬間、先ほどの鮮やかな傷痕が浮かび上がった。
これしかない、決断を下した俺は────そのまま岩に向かって走り出した。
「トーハさん! 」
目の前の光景に思わずダイヤが声を上げる。それも当然だ、俺は岩に向かって突進するがごとく進んでいるのだ。自滅にしか見えないだろう。一歩ずつ死への階段を上るかのように岩が近付いてくる。そして衝突するかも思われたその時だった。
ズバズバズバッと音がして豆腐のように岩がみるみるうちに細かく斬られていき俺達の勝利への道が開かれた。
「なに! ? どうして……」
侍も予想していなかったのだろう、岩の隙間から現れた俺の姿を見て目を大きく見開いた。
「簡単だ、俺は貴方の刀の腕を、貴方を信じた。ダイヤの盾に傷を残した貴方ならこの岩も斬ってくれるって」
手短に用件を伝えると小石が降り注ぐ道を進み刀を再び構えようとする侍の間合いに入り込むと左足で地面を踏みしめ右足を勢いよく振るう。
「……見事」
侍はそう口にすると抵抗をせずに両手を広げ俺の蹴りを受けた。




