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2-7「3つ首の化け物」

 王様と出会ってからしばらくの時がたち、気付いたら私はニンビギの門の前に戻ってきていた。まずは……


と木の棒をカバンから取り出し人目につかないところで地面の上に立てて置き指で固定する。

 

いつ終わるか分からないからとトーハさんがこの方法で時間を指定できるギリギリの時間を指定してくれたのだろう、王様と予想以上に早く会えたのもありまだまだ方角で言えば南西───十分に時間があった。

 


 さて、これからやることは沢山ある。トーハさんに言われた通り買い物と情報収集をしなくては……!まだ冒険者になりたてですらない私としてはこうやって指針を示してくれるのは非常に助かることだ。あれ、でもトーハさんも冒険者としてはなりたてでもないのでは……?


 それはさておき、まずは買い物をしよう!食料を調達しなくては!


「いらっしゃい! 」


 私は食料を買うために食べ物屋さんの前にいた。火を使う料理は森ではできないので買うべきは果物やパンかな……?携帯食用に干しブドウも買っておこう。私はリンゴやミカンといったフルーツに加えて干しブドウも購入する。


「はい、全部で3000ゴルドね! 」


 店主さんにお金を払おうとカバンから父から貰った巾着を取り出し中を確認する。

 中を見て私はつい「アッ! 」と声を上げてしまう。驚いた……このなかは全部10000ゴルドの価値がある金貨だ!お父さんもお母さんも無理しなくていいのに……


 私は両親に感謝をしながら支払いを済ませた。


「ありがとう! 」


 私はお釣りの7000ゴルド分の銀貨1枚と銅貨2枚を巾着に収め、果物と同じくカバンに入れて店を出る。

 これで食べ物は大丈夫……次は情報収集!

 

 右手で小さくガッツポーズをして気合を入れる。


 それから数分後、私は酒場の前にいた。先ほど王宮の道までに行くときに見かけた店だ。大理石の建物ばかりの中に木造建築とかなり浮いている。先ほどは遠目でみただけだったけど近寄ってみるとこの時間から何人かお客さんがいるみたいで賑やかだ。

 

 情報を得るなら酒場が良いとお父さんが言っていた。しかし……心細い。多分、お父さんも一人で入るなんて想定していなかったのかもしれないが仕方がない。でも、クヨクヨしてはいられない!


 私は意を決して木の棒をギュッと握りしめながら扉を開けて中へ入る。


「へいらっしゃ……お嬢ちゃんここは18歳にならないとダメだよ」


「こうみえて18歳です! 」


 私はカウンターに座りながら訂正する。この年で1人で来るのは珍しいのかな……?

 

 団体のお客さん用のテーブルは4席あるが2席は埋まっているのに比べてカウンターは誰もいない。


「そうかい、そいつは済まなかった。で、注文は? 」


 店主さんに注文を聞かれるも今日18になったばかりでお酒なんて飲んだこともなければ名前も知らない。どうしよう?そもそも今からお酒を飲んでいいのだろうか……


「えーっと…ミルクでお願いします」


 私は考えた末に絞り出すように言った。店主さんは「ガハハハハハハ! 」と笑いながらミルクをコップに注いで出してくれた。


「へいお待ち! 」


「ありがとうございます」


 差し出されたミルクを受け取る。それでこの後はどうすれば……?

 店員さんとお客さん、どちらに話を聞こうか……


「あの、魔王のことについて何かご存知ですか? 」


 私は団体のお客さんの話を伺うことにした、4人組で男性2人女性2人だった。男性は1人は大きなクリリとした目の割に茶髪で腕っぷしが良くあごひげを生やしもう1人は白髪で青いマントを羽織り細い目も相まって熟練の風格を漂わせている。女性のほうは1人は魔法使いのような帽子を被っているものの服装に所々髑髏があると奇抜なファッションの若い方でもう1人は何と白髪の髪を後ろで縛った老婆だった。

 

……冒険者だろうか?


「ああ魔王ねー、何も手がかりがないからこっちも困ってるんだよねー」


 口ぶりからしてどうやらこの人たちも冒険者のようだ。それに足元に剣、弓、槍が置かれているのが見えた。話によると手がかりがないからとりあえず飲もう、ということになったらしい。


「あれ、ダイヤちゃんじゃない? 」


 すると奇抜なファッションの女性が私に話しかけてきた。誰だろう?声のするほうに目を向ける。


「……ルーシーちゃん? 」


 間違いない、この優しそうな顔に声……学校で友達だったルーシーちゃんだった。

 でも私の知っている彼女はもっと地味な服とかが好きだったはずなのに何があったんだろう?冒険者になって変わったのかな?


「やっぱりダイヤちゃんだ! 」


 彼女は私に嬉しそうに抱きついてくる。


「ダイヤちゃんも冒険者になったの!?私もね!最初は不安だったけど……」


 と彼女は卒業してからのことを語り始めた。どうやら卒業後行くパーティーみつからず酒場に入ろうか入るまいかしていたときに声を掛けられ実戦で魔法を披露したところスカウトされたらしい。


 正直に話すと私たちが友達になったきっかけは攻撃魔法の授業の成績がお互い低く話す機会が多かったからだったりする。

 私たちの学校では魔法使いの授業では攻撃魔法が重視されておりより高い攻撃魔法に磨くことがメインだった。

 しかし、私は攻撃魔法は使えず彼女は彼女曰く攻撃魔法の才能がないとかで応用まではいけず、お互い授業をほぼ見学状態で話をした。

 でもただ談笑していたというわけではなく攻撃魔法以外の魔術を磨こうしていた。独学でもやってみせると書店を歩き回ったりしたこともあったっけ。

 その結果私は先生も認める盾の魔法を、彼女は時間がかかったものの卒業直前に巨大化の魔法を手に入れた。何と炎を攻撃させて大きな炎にしたりできるのだ!これには先生含めクラス一同度肝を抜かれた。卒業直前で成績には反映されなかったため、成績だけを判断されたらダメだが成績をみないで実力だけを見るとなると彼女は引っ張りだこだっただろう。


「それで、ダイヤちゃんは……」


 と何かを言いかけてやめたようだ。私の胸に冒険者バッジがないことに気が付いたようだ。

 通常、冒険者は胸にこの世界の守護獣ペガサスが刻印されたバッジをつけることになっている。それがないということは意味するのは1つだけだ。


「実はまだなんだ」


 隠す必要もないので正直に答える。


「そっか…1人なのをみるともしかしてまだ……」


 トーハさんのことが浮かんだが説明すると長くなるので彼女が全てを言う前に頷く。どうしてか今の私はこの場からはやく離れたいという気持ちでいっぱいだった。


「きっと、ダイヤちゃんも良い仲間が見つかるよ」


「ありがとう」


 そういって私は彼女たちから離れた。


「あの、魔王のことについて何かご存知ですか? 」


 結局、私は店主さんに話を伺うことになった。もう1グループのお客さんは全員酔っているみたいで話を聞くのは困難に思えたからだ。


「ああ、お嬢ちゃん冒険者だったんか! 」


「はい、といってもまだ資格はありませんが……」


 正直に答えた。冒険者は証としてバッジを手に入れるらしいが、持っていないので嘘をついても一目でわかってしまうので意味がない。


「そりゃこれから頑張らないといけないな!魔王ねえ…」


 おじさんは心辺りはないかと記憶をたどっているようだ。……意外と冒険者のお客さんは少ないのだろうか?それとも団体のお客さんの会話は聞かないようにしていて一人でカウンターに座るような人の話し相手専門だとか!だとすれば1人の冒険者というのは珍しいだろうから仕方ないのかもしれない。


「おおそうだ!一昨日だったかドンカセから来たっていう御者の兄ちゃんが言ってたんだが、夜客をドンカセまで送って行った帰りに森の中で凄い声がしたってんで行ってみると何といたらしいんだ……3つ首の化け物が!ありゃ最近魔王が放ったっていうペットの1匹に違えねえや」


「3つ首の…化け物……? 」


 3つ首の化け物……つまり1つの胴体に首が三つあるということだろう。該当するのは……ケルベロスだ!トーハさん1人では余りに危険な化け物だ……私がしっかりしなくちゃ!でも攻撃呪文は……いいやダメ!私がやらないと今度はルイーダみたいにトーハさんが!


「大丈夫かい?お嬢ちゃん」


 気が付くと私は汗をびっしょり掻いていて、コップのミルクは空になっていた。


「あの、ありがとうございました」


 私はお礼を言いお勘定をして酒場を出た。外はすでに陽が沈みかけていた。そろそろ待ち合わせの時間だろうか?入ってきた門へ行く。木の棒を立て影の確認をすると間もなく集合時間だ。帰らなくては……


 ニンビギの門を通り森までの道を歩いていく。整備された道を歩いていくようにみせかけて、見張りから見えなくなったらすかさず森へ飛び込み待ち合わせ場所に向かう。


 待ち合わせ場所には既にゴブリンの影が見えた、目を凝らすと右頬に傷がみえる……トーハさんだ!

 

 3つ首の化け物を倒すには私がしっかりしなきゃ……!私は冒険者になるための試練のことよりも3つ首の化け物のことで頭がいっぱいだった。

 

 深呼吸をした後私は覚悟を決めて彼に近付いた。


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