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1-2「そうだ、これは夢だ!」

 改造実験か何かか? 改造されたのか? 命が助からない場合やむを得ず別の生物の身体を使うというのはよくある話だが何でゴブリン? そもそもそんな別の身体に移すということ自体漫画か何かの話ではないのか? いや待て、知らないだけで我が国はこんな闇を抱えていたという可能性もわずかながら…………ないか。


 1人で考えていても仕方がない、丁度そこに同族のゴブリンがいるのだから話を伺うことにしよう。


「これは一体……何かの実験か何かですか? 」


「ギギ? ギギギギギギギギギギギギ」

【はあ? 何話してるんだお前】


 呆れたように顔を覗き込まれる、俺の言葉は通じていない……? 俺には奴が何を話しているのか分かるのに…………そうか! あの「ギギギ」とかいうのが奴らの言語なんだ、ゴブリンになって意味が分かるなら話せることもできるはず!


 俺は脳内で伝えたいことをイメージしながら言葉を紡ぐ


「ギギギギッギギ……ギギギギギッギギギギギギギギギ? 」

【これは一体……何かの実験か何かですか? 】


「ギギギギ? ギギギギギギ」

【実験? なんだそれは】


 よし!意味が通じた!俺は小さくガッツポーズをする。幸い同じ立場ということで目覚めたからと言って手荒な真似をされたりすることはないようだ。


 しかし実験ではない? だとしたらこれは何なんだろう。


「ギギ、ギギギギギギギギギギギギギギ? 」

【あの、あなたも人間なのですよね? 】



「ギギギギ? ギギギギ! ギギギギギギギギギギギギギギギギ! ギギギギギギギギギギギ! ギギギ、ギギギギギギギギギギギギギギ? 」

【人間? 馬鹿言え! 俺は生まれてこの方ゴブリンだ! まさか、その見た目で人間だとでも? 】



 核心をついた質問だけに予想外の返答で驚いた。あの生まれてからゴブリン? なら────なんで俺はこんな姿になっているんだ?


「ギギギギギ、ギギギギギギギギギギギギ。ギギギギギギギギギギ。」

【すみません、混乱しているようです。休ませてもらいます】


「ギギッギ。ギギ、ギギギギギギギギギギギ。」

「わかった。だが、あんまり時間はないぞ。」


 時間がない……? どういうことだろう。

 目が覚めたら洞窟にいて身体はゴブリンになっていて、目の前にもゴブリンがいる。俺はこんなことになった原因を探る。とはいえ今日は平日、いつものように出社していつものように課長の企画書をまとめていつものように怒られいつもの……いやいつもより早く退社して…………その後、何者かの『助けて』という声が聞こえそれに応じたと思ったら雷に打たれて…………



 考えられるのは謎の声と雷だ。


 あのときの寂しさと無力感は今でも思い出せる、それに雷に打たれ死ぬような感覚を味わったということは即死、あるいは意識不明か……あの声にまさか人を呼び込む力があるとも思えない。


 なら答えは一つ──────


 ──────これは夢だ! 目が覚めたら病室か退社前か自室にいて今日1日すべてのことが夢だったということになっていることだろう。


 ならば今は豪快に二度寝といこう!


 俺は瞼を閉じて眠りについた。


 ~数十分後~


 目が覚めると、そこは自室だった! そう、すべては仕事に疲れ果てた男踏破の見る夢だった──────



 ──────なんてことはなく相変わらず松明しか明かりのない洞窟だった。


 嘘だろ…………そうかこういうときは夢だったらつねれば痛まないはずだ! !


 俺は覚悟を決め深呼吸をし目をつむりほっぺを手で挟み、期待をこめて勢いよくほっぺをギュウウウウっとつねる。


 痛い! 痛い! 痛い! 痛い!


 勢いよく引っ張ったため想像以上の痛みが返ってきた。


 なんてこった夢じゃない! 現実だ! ! 本当にゴブリンになってしまった! 異世界転生というやつか! ということはもう原因はあの声しか考えられない!あの声の主は一体誰だ? ゴブリンのお姫様か? 今から運命に導かれた男とゴブリンのお姫様のラヴロマンスでも始まるのか! ? あっははははあはははははこれは傑作だ! ! !


「ギギギギギ? ギギギギギギギギギギ、ギギ」

【起きたのか? 丁度いい時間だ、来い】


 もはやヤケになっていた俺のところに先ほどのゴブリンが近寄ってきた。

 どうやら俺を呼びに来たようだ。そういえば、さっき時間はあまりないとか言ってたな。


 俺はゴブリンのあとを黙ってついていく、一本道を数分歩くと先ほどの部屋よりは大きな場所に出た。

 そこには数十体のゴブリンが集まっていた。


「ギギ! ギギギギギギギギギギギギ、ギギギギギギギギギ! 」

【ボス! 新入りを連れてきました、これで全員です! 】


「ギギ! ギギギギギギギギ、ギギギギギギギギギギ! 」

【よし! それではこれより、作戦を開始する! 】


 ゴブリンにボスと言われたゴブリンは、なるほど一目でわかる通り子供位の大きさの自分たちとは異なり成人のような背丈をしていて明らかに強そうだった。


 ────だが、作戦とは何だろう?


「ギギ、ギギギギギギギギギギ? 」

【あの、作戦って何です? 】


「ギギギギギ、ギギギギギギギギギギギギギ」

【そういえば、お前はまだ知らなかったな】


「ギギギギ、ギギギギギギギギギギギギギギ」

【今から、人間の村を襲うんだよ】


「え? 」


 人間の村を────襲う────?


 このゴブリンが何を言っているのか、よくわからなかった。






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