7-12「幻想の街」
時間が惜しいところだけれど、人間と戦うのに必要な体で交換をしたため先ほどのゴブリンと再会しないように門の外で数分待つ。
しかし、ただ浪費していたわけではない.俺はこの時間に街にあるという秘密の入り口に当たりをつけていた。正直なところ、剣を取りにバラダのいるところまで戻りたかったのだけれどそれは往復のことを考えると時間が惜しかった。スペードに許可を取って彼女の爆炎の剣を借りるとしよう。
「よし、とりあえず壁のある大きな建物を探すぞ! 」
俺は秘密の通路の場所は人が連れていかれているにもかかわらずゴブリンが見ていないということは壁などがある大きな建物内だろうという推理し街を探索するべく先ほどゴブリンが置いて行った2人の武器に手を伸ばした。爆炎の剣に鬼刀と袋に仕舞うとダイヤの杖に手を伸ばす。ふと、先ほどのゴブリンの言葉が引っ掛かった。
「持ち主に返したくなるってもしかしてこのオーブか杖の効果なのか? 」
ふと未知の杖の力に手が震える。しかし迷っている時間はない、俺は素早く杖を掴んだ。
「ぐっ」
その瞬間、得体の知らないもやもやが心を覆う。いったいこれは何なのだろうか? そんなことより早くこの杖をダイヤに返さなければ!
俺は杖を両手で持つとそのまま門を潜り町中へと進んだ。不思議なことに街に入る時は先ほどのモヤモヤした気持ちはなくなっていた。しかしその代わりとばかりに俺の視界に跳び込んできたのは古びた屋台らしき木造の建物に店番のように立っているゴブリンに客のようなゴブリン、荒れ果て苔が生えた地面に幾つも並ぶ廃墟が並ぶ荒んだ街の様子だった。
「なんだ、なんでダイヤ達はこんな街で時間を潰そうとしたんだ」
疑問に感じると同時にゴブリンの言葉を思い出す。確か彼はここは「幻想の街」だと言っていた。つまり人間であるダイヤ達にはこの街が素晴らしい街に見えていたってことだろうか? それならば辻褄が合う気がする。
「とにかく急がないと! 」
俺は当たりのつけた大きな建物目指して歩き出した。ゴブリンに極力見つからないようにしつつしばらく直進するとより大きな建物が視界に入った。ここには壁もある、どうやらここが怪しい。見ると受付にはゴブリンがいてここはダイヤが話していた銭湯みたいな公衆浴場というところのようだ。ここならば2人が武器を手放したのも頷けるし冒険者が確実に武器を手放すであろう浴場で彼らを捕らえそのまま秘密の通路から連行するというのはなかなか理にかなってると思う。
「よし、行くか」
今から敵のアジトへ侵入するという気分になった俺は深呼吸をして頬を片手でパンと叩くと中へと入っていった。
【おう、おおお前は武器を取ったのか。残念だけれどもう目ぼしいものはないぞ】
中へと入ると受付らしいゴブリンが半笑いで迎える。どうやら俺を戦利品から武器を選んで後悔しているゴブリンと勘違いしているようだ。せっかくなのでそれを利用させてもらうとしよう。
【そんなこと言って何かがあるんだろう? 】
【そう思うんならみてきな、右側の通路だ】
俺がぶっきらぼうに言うと負けじとゴブリンもそう返す。
それでは彼の言うように見学させてもらうとしよう。そう言うと俺は右へと曲がりじめじめとした苔の生えた廃墟のような建物内を歩き出して数分、脱衣所らしき場所へとたどりつく。
食べ物以外が散乱した二人の荷物を見下ろすように壁には見慣れたダイヤとスペードの衣服が何事もなかったかのようにかけられていた。
みると信じ難いことに金貨の山は荒らされてはいるがそこにあった。ゴブリンたちは食べ物と武器以外は一切手を付けていなかったようだ。まあ、ここがゴブリンの街なのならば金貨なんて何枚あっても買い物はできないので妥当と言えば妥当な判断だろう。そう冷静に分析して俺はあることに気が付く。
待てよ、ここに服があるってことは今2人は…………
俺は慌てて袋に2人の衣服を押し込むと立ち上がった。ここからは難しい問題だ。2人は浴場に連れていかれ秘密の通路は浴場にあるのかそれとも受付のゴブリンがグルで秘密の部屋があるのか。正直どちらもあり得る可能性だ、どちらが良いだろう……
とにかく悩んでいる暇はない! 俺は意を決して浴場へと続く道を歩き出した。




