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7-11「交渉」

ダイヤとスペードと別れた後の踏破視点でのお話です。

 ダイヤとスペードと別れた後俺は周りに人がいないのをいいことに大胆にもバラダの手綱を引き街の木の上から門が見渡せる場所まで移動していた。といっても移動は砂漠と森の境界ギリギリの範囲で行いいつ人が現れても木の上に隠れられるようにしてのことだった。


「そういえば、急だから待ち合わせの時間とか決めてなかったな、いやいいか」


 丁度木の棒があるのだから決めておけばよかったと呟くも即座に撤回する。結局、俺が街を見つけるとすぐに戻って2人に知らせたため彼女たちは水浴びをする時間がなかったのだ。1日風呂に入るという人もいるみたいだしたまには彼女たちに時間を気にせず入浴やショッピングをしてもらうのもいいだろう。


「いや、ダイヤのことだ。逆に焦っちゃうかもなあ」


 街の門から2人が姿を現すのを見逃さないようにしながらも彼女のことを思い出し独り言を口にしたその時だった。


「ん? 」


 信じられないものが見えたので見間違いかと腕で目をゴシゴシと擦る。そして改めて門を見て見間違いではないことを確認した。何と門からキョロキョロと周囲を伺うようにしながら1体のゴブリンが姿を現したのだ!


「何で街からゴブリンが? 」


 驚くのはそればかりではなかった。さらに信じられないことにゴブリンは見慣れたダイヤの杖とスペードの剣と刀を背負っていたのだ!


「何がどうなっているんだ? 」


 あまりに突然の展開に状況が把握できずポカンとするも慌てて頬を叩き我に返る。それはあのゴブリンが背負っているのが2人の武器だったからだ。ダイヤは勿論のことスペードもあの武器を手放すなんて状況は普通なら考えられない。何かがあったということだろう!


 俺は慌てて木を飛び降りると手綱を木に結んで遠くへといかないようにしていたバラダ2匹を撫でるとゴブリンの元へと向かった。


「いや、待てよ……」


 俺は突如あることを思いつき踵を返すと王様から頂いたという数日分の食糧の入った袋から食糧を半分ほど取り出した後背負う。


「よし、これでいい」


 そう呟きながら俺は全速力で門から出たゴブリンの後を追いかけた。


【すみません】


 袋だけを背負った状態で首尾よく誰にも見つかることなく近付きゴブリンへとゴブリンの言葉で声をかける。


【ん? 何だ? 】


 ゴブリンが振り向いた。手応えありだ!


【その剣と杖はどうしたのですか? 】


【ああ、これかこれはだなあ】


 そう言ってスペードの爆炎の剣を持つと自慢げに語り始める。


【実はこの『幻想の街』の仕組みに1組の人間がハマってな。それで皆で戦利品を受け取ることになったんだが皆食べ物に手を出してな、正直目先の少しの食料を取り合う姿に目を疑ったよ。その点俺はこうやって立派な武器を持って人間から食料をかっぱらってやろうって寸法さ】


 色々と聞きたいことはたくさんあるがまずはダイヤ達の安否だ。


【戦利品ということは既に人間は】


【ああ、今頃はいつも通り魔王様ご自慢のあの不気味なモンスターへの貢物として運ばれている頃だろうな】


 よかった、ホッと一息をつく。どうやら彼女たちは無事のようだ。しかし、一刻を争う状況なのは変わりない、早く武器を手に入れて助けに向かわなければ!


【えーっと、それでご相談なのですが。先ほど人間からこちらの食料を奪ったのはいいものの武器を失ってしまいまして、どうかこちらとその武器全て交換していただけないでしょうか! 】


 そう言うと俺は袋からさらにダイヤが丁寧に3食用に仕分けしていたパンや干しブドウ、干し肉が入った6つの袋の中から2つを取り出した。


【ダメだな】


 ゴブリンが言う。


【で、ではこちらでは? 】


 そう言いながら俺は更に素早く2つの袋を追加する。


【何? いいやダメだ、こちらは剣2本に杖1本だぞ? それでは足りないな】


【そ、それでは……】


 そう言うと俺は手を震わせながらもう1袋追加した。


【うっ……いやまだだ、この武器たちがあればその倍は食料を! 】


【そ、そうですか……それではこの食料全てと交換してください】


 そう言って最後の袋を置くとゴブリンは跳び上がった。


【何、良いのか? ならば持って行け! 実のところ剣は持ちにくい杖は何か持ち主に返さないといけないような変な気持ちになるから気味が悪かったんだよな。おっと、今更返せと言わせてももう遅いぞ】


 そう言うとゴブリンは6つの小袋を抱えた。俺はその姿を見てニヤリと笑う。こちらの手の内がこれが全てだと思わせて取引を成立させる。ビジネス本で読んだ手法が上手く言ったようだ。ゴブリンは武器よりも食べ物を優先するだろうという推測も見事に的中した。とはいえ、伝説の杖とオーブが6食分の食料と交換なんて人間からすればボッタくりもいいとこだけれど……


【あと、この取引は内緒でお願いします。またこんなに食料持ってると他の方に来られても困るので】


 俺がそう言うとゴブリンは笑った。


【分かってるさ、だからお前も俺がこんなに食料持っているなんてことは誰にも言うなよ】


 俺はゴブリンの言葉に頷いた。するとゴブリンは門の中へと入ろうとするのを俺は慌てて引き留めた、まだ一つ聞かなければならないことがある。


【そういえば、貢物として運ばれた人間はどこから運ばれたのですか? 】


【何だ? まさかその武器で奪う気か? だがそれが叶わないのはお前も分かっているだろ? 街のどこかに秘密の通路があるらしいからそこにあるとは思うが……俺も獲物がかかったってだけでたまたま呼び出されたから武器を手に入れられたものの通路の場所すら知らねえんだ。お前もそうだろ? 】


【そ、そうでしたね】


 一応、この街のゴブリンとして話をしていたという体で取り繕わないと面倒なのでそう答えると門の中へと入る彼を見送った。








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