7-1「首都クシスへ! 」
コロシアムから馬車で進むこと半日後、俺達は巨大な壁に囲まれた街の前へとたどり着いた。
「さて、首都クシスに着いたわけだが……どうする? 」
馬車から降りた後にスペードがバッグの中の俺に尋ねる。無論この後どうするのかという意味だ。
「どうするって言われても、王様がいる首都となると警備が厳しいだろうからなあ」
そう言ってちらりと森に視線を移すも正直やることがなく、また冒険者に見つけられて戦闘になったら面倒だというのも事実だった。
「ん? 」
その時、あるものが視線に入った。それは馬車だった。しかし、ただの馬車ではなく周りが派手に飾りつけされている馬車だ。その馬車がガラガラと音を立ててこちらに向かってきているのだ、音に気が付いたのかダイヤとスペードも向かってくる馬車に視線を移す。
「あ、あれは」
「もしかして……」
どうやら2人も同じことを思ったようだ。しかし、ここは南の国スウサではなく東の国トーイスなのだ、彼女がいるはずがない!
3人して半信半疑な様子で見ていると馬車は俺達に気が付いたようで丁度スペードの目の前で停車したかと思うと御者かと思われたトリコロールカラーの女性がこちらを見て微笑む。
「これはこれはスペードさん、ダイヤさん、それからゴブリンさん、お久しぶりっす! 」
周りをキョロキョロと見渡して誰もいないのを確認した後に彼女はそう言った。
「ディールさん! 」
「久しぶりだな」
2人が挨拶を返すと彼女、ディールは嬉しそうに微笑んだ。
「久しぶり、元気そうで何よりだよ」
彼女にも見えるようにバッグからチョコンと顔を出して挨拶をする。
「いえいえ、ゴブリンさんこそご無事で何よりです。姿が見えないというのは心臓に悪いっすね、何かとあったのかとちょっとヒヤヒヤしたっす」
胸に手を当ててディールが言う。
「まあトオハはそう簡単にくたばるたまじゃねえからな、心配は無用さ」
「ですね」
2人が愉快そうに笑う。これは褒められているんだよな?
「あ、そうだ! 」
ふとスペードがパン! と掌を合わせる。そしてバッグを両手で掴むとディールに手渡す。
「ちょっと今からあそこの街行こうと思うんだけどよ、すぐ戻るからそれまでトオハのこと預かってくれねえか? 預り金なら払うからさ」
「え、ゴブリンさんをっすか? それは……えーっと……」
そういうとディールは視線をそらした。恐らく店長の顔色を窺っているのだろう。
「……店長がまだ寝てるっすから起きるまでなら……そのあとはちょっと保障できねえっす」
「んじゃ、それで頼むわ、できるだけ早く戻るからさ! 」
「お願いします、ディールさん! 」
正直、スペードの思い付きとはいえこの展開は俺にも願ったりな状況だ。
「ありがとう、よろしく」
俺はゴブリンの顔ながらディールに向けて微笑んだ。




