6-6「プラチナランクの実力」
遅れてすみませんでした。
薄暗い洞窟の壁伝いに2組の男女を見守る。男女はしゃがんで何かをしていた。
何なのだろう彼らは……胸騒ぎがする。
息が荒くなるのを深呼吸で抑える。すると異変に気が付いたのかシャーマンがいつの間にか隣にいた。
【どうした? 】
怪訝そうに俺を見る。シャーマンの方をチラリと見つめて告げる。
【人間です】
【何だと! ? 】
シャーマンが目を丸くする。そのまましばらく狼狽した様子だったが目をキリッとさせると勇ましく洞穴の中へと歩いて行った。すかさず見失わないように男女に視線を戻す。2人はまだしゃがんでいたが数秒後に男が立ち上がった。
「これでいいだろう」
男は満足そうに言う。
「木に縄で転がせるってそんなので上手くいくかねえ」
女は不審そうに縄を手で触った。
「まあ、見てなって! ゴブリンなんてこんなものよ! 」
そう言って男は胸を張った。
2人の視線を追うと木々の間に縄が結ばれている。あれで転がそうという魂胆なのだろう。どうやら嫌な予感は的中したようだ。彼らはここに踏み入ろうとしているのだ! あの縄は恐らく挟み撃ちにされないための時間稼ぎだろう。
しかし、鎧、槍、杖とどれをみてもお金を持ってそうな2人がどうしてゴブリン退治なんかを引き受けたのだろうか……疑問が残る所である。
俺がその理由を腕組みをして考えていると洞窟内からヒタヒタと音がした。みるとそこにはシャーマンを先頭に、棍棒を構えた体格のいい3体のゴブリンが集まっていた。
【人間め、おめおめとやられるくらいならこちらから! 】
シャーマンは震えながらそう言うと洞窟の外を指差した。
【かかれえぃ! 】
その言葉を合図に5体のゴブリンが一斉に2人目掛けて駆け出した。
【安心せい、彼らはこの洞窟の精鋭たちだ。負けることはない】
シャーマンは俺に近寄るとそう囁いた。俺は頷いて返すと視線を男女に向ける。丁度ゴブリンたちに男が迫っていくところだった。
【うおおおおおおおおおお! くたばれえええええええええええ! 】
声を張り上げながら突進するゴブリンたちに男は眉1つ動かさずに槍を突き刺す。
【え……】
意味が分からないとばかりに目を見張りながらゴブリンは崩れ落ちる。
【ウソだろ】
【何が起きた】
男は余りの早業に何が起きたのか分からず呆然としている1体のゴブリンを足で蹴り飛ばすと同時に槍を引き抜きもう1体の胸に突き刺した。
【てめえ! 】
地面に叩きつけられて正気に戻ったのか蹴り飛ばされたゴブリンは勢いよく立ち上がり男に向け駆け出すと棍棒を思い切り振った。男がそれに合わせるように槍を振るうとガキィン! と鋭い音と共に棍棒が宙を舞い地面に落ちた。
【あ、あ、ああああああああああああああああああああ】
自暴自棄になったのか拳を握り突進するゴブリンに男は容赦なく槍を突き立てた。無残にもゴブリンは倒れる。
【ば、ばかな……我が精鋭部隊がぜ、ぜ、全滅だと! ? 】
シャーマンが恐ろしい声を上げたので隣を見ると驚き目を見開き再び洞窟の奥へと逃げるように走り去ってしまった。
急いで男たちに視線を戻すともう増援はないと悟ったのか男はつまらなそうに槍を枕代わりにしていた。
「ったく、相変わらず大したことないな。こちとら『顔に傷のあるゴブリン』にしか興味はないってのに。だるいけど乗り込むしかないか」
男は吐き捨てるように言った。
『顔に傷のあるゴブリン』? 俺は思わず頬の傷を撫でる。
もしかしてこの2人の狙いは俺なのだろうか? ならばどうして? 今まで見られたことなんてなかったはずだ! どこでバレたんだ? そもそも顔に傷がゴブリンなんてごまんといるだろう。本当に対象は俺なのだろうか?
目を閉じて考える。
少なくとも俺はギルドでこんな腕のある冒険者を雇ってまで命を狙われるようなことをしてきた記憶はない。高額報酬というのをみると何か確認できる手段があるのだろうがそれは一体……彼らは手当たり次第に殺して回るのだろうか? だとしたら俺がここで出たら狙われてしまうことだろう。
冤罪で死ぬのはごめんだ!
俺は頭を掻く。その時だった
「よし、じゃあこの洞窟に突入といきますか! 」
男の声が響き渡る。男はやはりこの洞窟に突入してくるようだった。
このまま俺が奥に逃げても捕まるのに加えて他のゴブリンまで襲われてしまう。どうせ狙われてしまうのなら……
俺は覚悟を決めるように頬を叩くと剣を抜き勢いよく洞窟から飛び出した。
次回、4月25日更新予定です。




