1-10「神話のモンスターとの闘い」
「サイクロプスだ! ! ! ! 」
「あれはお話の中の存在のはず、どうしてここに! ? 」
ルイーダ達も巨人に気付いたようで声をあげる。
どうやら、モンスターが存在するこの世界でもサイクロプスの存在は話の中の存在だったらしい。なら何故そのサイクロプスが………? そしてどうして気付かれた………? 遠くから来たということはそれほどまで声が大きすぎたのだろうか?
いいや違う! サイクロプスはそんなに耳が良いということだろうか? 巨人だから俺たちより耳が良いという可能性もあるが仮にそうだとしても距離が離れすぎていないか? 何か他に理由が………
そのとき、ルイーダが持っている松明が目に入った。松明はメラメラと赤い火で辺りを照らしている。
「ギギギギギギギギ! ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ、ギギギギギギギギギギギギギ! ギギギギ! ギギギギギ! 」
【松明は持つな! サイクロプスに勘付かれるかもしれない、月明かりを頼りに進む! お前ら! 武器を持て! 】
ボスの声が脳裏に蘇る。
そうか………松明だ! ! ! ボスが言っていた! サイクロプスに気付かれるから松明を持つなって………やつはルイーダの松明の明かりに気付いて追ってきていたのか………!
ゴブリンが人間の武器を知らなかったように人間もモンスターたちのことで知らないこともあるのかもしれない。とにかく今すぐその松明を取り上げないと………!
「その松明を渡せええええええええ! ! ! 」
俺は隠れていた木から飛び出しルイーダたちの元へ駆け寄る!
「トーハさん! 」
「卑しい貴様らが人質を放って逃げるはずがない! やはり隠れていたかゴブリンめ! ! 」
驚くダイヤとは裏腹に予測していたようにルイーダはブンッ! と剣を振るう!
しかし松明で片手が塞がれていることと身長差から剣を避けるのは容易い………! 俺は剣を横に避け彼の手から松明を奪い取った!
今はとにかく松明を俺が持って囮になろう。2人を助けなければ………!
「こっちだサイクロプス! ! ! 今のうちに逃げろダイヤ! 」
俺は松明を持ちサイクロプスをおびき出すように二人から距離を取るように来た道とは逆、つまり彼らの村とは逆方向に走った!
しかし、走りながら何度振り返って煽るように松明を振ってもサイクロプスは追ってこなかった──────
「ちくしょう! もう月明かりだけで獲物は見つけられるってことか! ! ! 」
俺は舌打ちをして今来た道を逆走する。彼女たちも既に村に向かって走り出していた。
ルイーダとダイヤを追うサイクロプスを追いかける。
サイクロプスは巨体故一歩一歩が大きいが周りに木があることとサイクロプス本人の動きがそれほど早くはないため2人は追いつかれずに済んでいる。このままならすぐに追いつける………!
驚異の逃走劇が繰り広げられサイクロプスとの距離も縮まってきた時だった。
「きゃっ! 」
何かに躓いたようで突然ダイヤが転んだ。それをみてサイクロプスは「うおおおおおおお」と歓喜の雄たけびを上げる。
まずい! このままでは彼女がサイクロプスの餌食になってしまう! させるか!
俺は奴の頭に向けて力を込めて棍棒を投げつけた。
──────棍棒は見事に命中。ガン! と鈍い音がしてサイクロプスがゆっくりとこちらに振り向く。
その隙を見て俺はサイクロプスの両足の間を通りダイヤの元へ駆け寄る!
「大丈夫! ? 」
「すみません、こんなときに何かに躓いてしまって…それよりルイーダは? 」
「ルイーダ? 」
言われて前方を見ると。ルイーダの姿はどこにもなかった。
村以外の方向に逃げたのか? 一体彼は何処に………?
そのときだった、俺たちの木の上で何かが動いた。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああ! ! ! 」
ルイーダだ、彼が木の上からサイクロプスに向かって斬りかかった!
「がああああああああああああああああああああああああああああ! ! ! 」
けたたましい声が鳴り響く。彼は頭の後ろに斬りかかるもサイクロプスの体が厚いかパワーが足りないのか斬ったものの致命傷には至らなかったようだ。
「くそっ………! こんなバカでかい巨人を相手にするなんて聞いてねえぞ! 」
ルイーダが悪態をつきながら残念そうに着地をする。俺はダイヤを担ぎながら彼の元へ向かう。
「サイクロプスは強敵だ、協力しよう! 」
「俺がゴブリンと協力? バカ言うな! 」
「そんなこと言ってる場合か! 俺に考えがある! 」
「そうだな、なら協力してもらおう。俺にも考えがある」
ルイーダが今までの好青年のような振る舞いがウソのように不敵な笑みを浮かべた。
「今度はお前に囮になってもらう」
囮………? 俺が………? いや協力を得られるのに加え、ルイーダに考えがあるのならそれに従うのが上策………か?
「俺は、そうだなここから10本先のこの森の最後の木の上にいる。だからお前はそこまでやつを誘導してこい」
ルイーダは戸惑っている俺を気にせず続け10本先の木を指さした。なるほど、指指した木の先は今日1往復した村が遠くに見えた。森の出口の寸前で仕留めようというわけか。
「分かった、でも狙うのは目だ! 奴の身体は見ての通り固い、なら目を狙うしかない! 」
「ああ、それもそうだな」
先ほどの拒絶が嘘のようにルイーダは快諾した。
「あの、私はどうすれば」
俺が下ろしたダイヤが首をかしげて不安げに尋ねる。
「ダイヤはそこのゴブリンと一緒に囮になってくれ、心配するな! 必ず倒す! ! 」
「いや待て彼女を囮にするのは………」
「時間がない! お前はゴブリンだからすました顔していつ逃げ出すかもしれないからな! 」
彼女を囮にするのは気が引けた──────しかし奴の言う通り時間がないのも事実。
「よし」
「わあっ…! 」
俺は再び彼女を担いだ。
「ま、待ってください。私………自分で走れます! 」
「いや、俺が担いだほうが速い! 行こう! 」
ガアアあアあアアああああああああああアアああああアあああ!
サイクロプスが突如切り付けられた痛みから立ち直りこちらを向き怒りを込め叫ぶ。
そして俺たちを握りつぶそうと手を伸ばす。俺はそれを避けて奴の両足の間を10往復程動き回りルイーダが木に登るための時間を稼いだ。
だいぶ時間は稼いだだろう………そろそろいいだろうか?
俺は最後にもう1回サイクロプスの両足の間を通過しそのまま村のほうへ駆け出す! それをみてサイクロプスは俺たちを捕まえようと走り出す。
「攻撃………来ます! ! 」
サイクロプスが俺たちを掴もうと手を伸ばすと彼女が後ろを振り返り教えてくれることで俺は避けることに専念できた。
奴の手を避けながら森の中を突き進む。1本目、2本目──────次々と木々を通過していく。10本先の木を通過するのは普段は何でもない、恐らく無意識でやったこともあるが状況が状況なだけに。かなり長い時間に感じられた。




