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五 スサノオの憂鬱

 タヂカラオが戻って来た。

「オモイカネ殿のいう通りにし申した」

「ご苦労。これでしばらくは連絡もつかぬ。イヨも安心じゃろ?」

 オモイカネが、画面に「グッジョブ」マークを表示させた。


「はあ? ごみのカネは何にもわかってないんだね」


 イヨがゲーム画面を見たまま言う。

「圏外から出て、着信履歴が何度も表示されたら、奴はイヨたちのこと、もっと心配するじゃん!」

「イヨっちのことも心配してくれるならいい人じゃん。来てもらえばいいじゃん」

「イヨのことも! 主にママ!」

 イヨが顔を真っ赤にした。

「じゃあ、どうするのがいいのよ?」

「馬鹿じゃないの? ミサイルがなくなれば全部解決じゃん。スサノオ!」

「え、まだ俺?」

「早く」

「三十分もあれば、その間に海に落ちるだろ?」

「いいから」


 ちなみに、イヨの「いいから」は、「あんたの言ことなんて聞く気ないから」って意味。こうなったら説得なんて不可能だ。

 まあ、アメノウズメの眼力でさえ効かないイヨを説得できるのなんて、地球上で姐さんだけだし、その姐さんでさえ、成功するのは十回に一、二回だけど。


「しょうがねえな。オモイカネ、どこだって?」

「どうやら、新潟沖あたりのようじゃが、詳しくはクエビコに訊いとくれ」


「そうか」

 次の瞬間、俺は山田の案山子の前に立った。クエビコに手をかけ、問い掛ける。

「おう、久しぶり」

 

 神にとって数年なんて一瞬だから、本当は「久しぶり」でもないが。

 クエビコは返事もせず、俺をじろりと見た。


「イヨがうるせえからミサイル蹴飛ばしてくる。正確な場所を教えてくれ」


 クエビコは身じろぎもせずに答えた。


「新潟沖。新潟県庁から現代の単位で322.3㎞。海上から1023.5㎞。朝6時12分43秒現在」

「オッケー」

 俺はクエビコの帽子を少し直し、「サンキュ」と言うとその場を離れた。


 更に次の瞬間、俺は新潟沖上空で目を凝らしていた。


 俺たちは日本の神だから、それぞれの守備範囲なら移動に時間は要しない。

 そして俺は、一応は三貴神の一柱だから、海も含めた日本上空、正確に言うならEEZ内ならどこでも行ける。


「あ、ホントに飛んで来やがった」

 視線のはるか先を、例の旗のマークを付けた大陸間弾道ミサイルが飛んでいる。

 音速ははるかに超えてるから、音がかなり後からついてくる感じだ。


 ほっときゃオオワタツミの兄貴がうまいことやってくれるだろうに。

 ウズメじゃないが、イヨのやつ、神使いが荒い。


 今度はその真正面に移動。

 ミサイルとの距離はざっと500メートル。


 ごぉぉ、という風を切る音は、本体の距離よりずっと遠い。

 最近の日本で流行っている野球とか言うゲーム。

 その投球速度が時速百五十キロだとすると、そのざっと187倍。

 更に最近流行り始めたサッカーとか言うゲームだと、シュートの最高速はもう少し落ちるが、ボールの重量は野球の数倍。

 でも、今の相手は大陸間弾道ミサイル。

 重量は、弾頭だけで数万倍。

 

 まあ、そんなこと、俺には大した問題じゃないが。


 なんて考えてる間にもう目の前だ。

 この間、実は0.02秒程度。

 ミサイルはさっきまでのおおよそ1/3程近づいた。


 オモイカネには負けるが、俺たちは思考の速さも人間の比じゃない。

 つーか、オモイカネなんて考え過ぎてまともな答えが出てこないし、そういう意味では俺の方が優秀だろ?


 え?

 何でそこまで「俺TUEEEEEE」を強調するかって?

 まあ、今流行りらしい、ってのもあるけど、どっちかっつーと。


 なんて言ってる間にミサイルが目の前に来た。


 はいはい、仕事仕事。

 俺は右足を振りぬき、ミサイルを蹴り上げた。大陸間弾道ミサイルは、あっという間に空のかなたに消えた。


「まあ、どこかの恒星に飲まれる前に、隕石か小惑星とぶつかって宇宙の塵になるか。とにかく、後はカカセオに任せよう」

 手を額にかざしながら空を見上げると、薄暗い空で、いくつかの星が中指を突き立てた手をかたどって光り、そして消えた。


「F○CK座かよ? 西洋かぶれが」

 

で、さっきの話の続きだが、『俺TUEEEEE』を強調する理由だけど。


 そうでもしないと、俺達への敬意をすぐ忘れるだろ?


 お前ら?

クエビコ 案山子です。田んぼにいて、全てを見渡し何でも知っているそうです。

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