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お正月チャレンジ  作者: 柳瀬光輝
8/20

修行

さ・・・け・・・


 母屋と蔵の間を通り抜け、裏山に入り、スマホの灯を頼りに山道を登ると、小さな滝のある場所に出る。

 しばらくの間、滝の近くに設置されたプレハブ小屋で膝を抱え、自分の身に起きたことを考える。

 2日も眠っていないのに、睡魔が訪れる気配は無い。

 ほんのりと東の空が青く色付き、小屋の窓から明かりが射し込む。

 外に出て、川べりに座り、徐々に白みを増していく空を見つめていた。

 やがて太陽が顔を出し、朝日に照らされ、滝には虹がかかる。

 

 服を脱いで下着姿になり、川へと下りて、ざぶざぶと水の中を歩き、滝の真下に置いてある大きな岩の上で座禅を組む。

 この岩は、わざわざ数年おきに岩井家が取り替えている。

 しばらくすると水圧で岩が削られてしまうためだ。

 そんなものを置かずに、立ったまま滝行を行えばいいのだが、何かこれは岩井流の流儀というものらしい。


 滝に打たれながら、ただひたすらに祝詞を唱える。

 どうにも煩悩が多すぎる。

 自分が無になるまで、ただひたすらに祝詞を唱えた。


 どれくらいの時間が経ったのか、目を開けると岸辺でコンちゃんが心配そうに見つめていた。


「コンちゃん。3日くらい山に篭るから。かーちゃんにも伝えておいてくれるかな」


 コンちゃんは、言わなくても全部わかっている、というように頷く。


「邦夫様、断食の行も行われますか?」


 少し考え、ついでだから、と、頷いた。


「では、わたくしと乾、交代で見届け役を務めさせていただきます」


 コンちゃんはその場で手をついてお辞儀した。

 見届け役といっても、ちゃんと行を行うか見張るというわけでは無い。

 万が一、行の最中に倒れたりした時に助ける役、ということだ。


「ありがとう。よろしくね」


 礼を言いながら滝から上がると、冷え切った体にコンちゃんがバスタオルをかけてくれた。

 軽く体を拭き、コンちゃんが用意してくれていた焚き火にあたり暖を取る。

 服を着て、小屋に篭り、また座禅を組んで祝詞を唱える。

 眠気が訪れると、また服を脱ぎ、滝に打たれる。

 何かを掴むまで、眠らずにこれを繰り返す。


 次第に、目を閉じていても自分の側に誰かいるのがわかってくる。

 意識が広がり、自宅に4人、人がいるのがわかる。

 母の他に3人。誰か訪ねて来ているのだろう。

 ご近所に11人。5人ほど道端に集まっている。おばちゃん連中が井戸端会議でもしているのか。

 学校には数十名。授業が終わって部活でもしているのだろう。

 やがて邦夫の意識は、町全体を覆い尽くす。

 残っている穢れの地は、ひいばあちゃんに聞いていたよりも全然少ない。

 町中いたるところに封印があるはずだったのだが、大物は町の中央に1、北北西には封じたばかりの気配が1、これはお京さんの家だ。その他は、西、南、南東、北東に1、計6箇所。

 小物は北、北西、西、南西、南、南東、東、北東、北に、一箇所ずつ。計8箇所。

 合計でたったの14箇所だ。

 思ったよりも楽な仕事かもしれない。

 だが、完全に封印が解かれている所が3箇所ある。。

 小者だが、これは早急に何とかしなければならないだろう。


 就任4日目にしてようやく、邦夫は祝様という存在になった。


 町と一体化し、これより先は町から一歩も出る事は許されない。

 これが、祝、乾、尾崎の家にかけられた呪いでもある。

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