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プログラム№2 起動⑦

 ケラケラと女子高校生数名の笑い声にようやく気が付いた俊介が顔を上げると、まさしくきららが友達と信号を渡ろうとしているところだった。


 ……誰が一人っきりだって?


 俊介は慌てて携帯をポケットにねじりこむと、後を追いかける。


 「じゃあ、うち等はこっちだから」

 軽く手を振った友達に同じようにきららも振り返し、自宅ある方とは反対方向に歩き出す。

 自分の存在がばれぬよう、一定の距離を保ちつつ尾行をする俊介は、あっと短く息を飲みこんでしまう。

 きららがカバンの中に忍ばせたもの、それが何だったのか確認した俊介は、後姿を見失いそうになり、慌てて足を速める。

 薬局店前に置かれたワゴン。到底、高校生のきららが欲しがるものなど、何一つ入ってはいなかった。

 まったく帰る様子を見せないきららの行動は、不可解だった。

 ふらりとゲームセンターに入って行ったかと思うと、男性二人に囲まれたきららがすぐに出て来る。

 どこから見ても、親しい友人には見えませんけど。

 ぶつくさ言いながら、尾行を続けていた俊介はホテルの看板が見え、その中に消えて行こうとするきららを呼び止めた。

 「あっれー久しぶり」

 きょとんとするきららに 、長髪男のほうが、誰と尋ねる。

 「こんな所で何してんの? その二人はお友達?」

 「そう俺たち、とても親しい友達だから邪魔をしないでくれる?」

 無数のピアスを付けた方の男が、にやけ顔で言っているが、鋭い目つきで睨まれ、俊介は生唾を飲み込む。

 「そうなんだ。お邪魔しました」

 俊介はきららの手を掴むと強引に引っ張り、走れと叫ぶ。

 「ちょ、ちょっと待って。いたたた」

 「このバカっ。きららちゃんを殺す気?」

 甲高いまどかの声に、ハッとした俊介はスピードを緩める。

 追手が間近にやって来るのが見え、俊介は屈みこむ。

 「早く乗って」

 「何で」

 「何でも」

 「おい。こら」

 ピアスだらけの男がそう言いながら、拳を振り上げ襲い掛かってくる。

 舌打ちを一回した俊介は、手足をばたつかせるきららを肩に担ぎ、そのまま自宅へ一目散駆け出す。

 何が起こっているのか、理解しかねているきららを玄関先でドカッと降ろすと、頭をポンポンと軽く叩く。

 「親に心配かけちゃいけないよ」

 そう言い残し俊介は踵を返し、さっそうと歩きだす。

 完璧。今の僕、めちゃくちゃカッコいい。ニヤニヤしながらエレベーターのボタンを押そうとする俊介を、きららが呼び止める。

 「ね、あなたは何者なの?」

 来た~。これは、まさかの~、くくくく。ここは振り返るべきなんだろな。やっぱセリフは、名のるほどの者じゃありませんよだよな。よっし行くぞ~。

 俊介が振り返ろうとした瞬間、錬三郎の声がビーンと耳に響く。

 「お主はバカか? そこは黙って去るだろ。それに、なにエレベーターなんか乗ろうとしてんのじゃ。ヒーローの風上にも置けぬ。この不届き者!」

 「俊介、走ってください。レディ―ゴッ!」

 間髪入れずに神山にそう叫ばれ、弾かれるように俊介は駆け出す。 

 その様子を大画面で確認した錬三郎が、満足げにまどかを見る。

 「何ですか?」

 「なかなかいいセリフじゃっただろう? 少女漫画を読み漁った甲斐あったわ。これできららちゃんの心はわし掴みじゃ」

 呆れるように肩を竦めるまどかを見て、神田が肩に手を乗せ、頷いて見せる。

 「あ奴に惚れるなよ。苦しむだけじゃ」

 画面を見つめたまま、錬三郎に言われ、まどかは言葉を失う。

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