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虹竜学園の劣等生  作者: 麗羅
能力覚醒編
6/26

6. team SKY

更に時は流れて午後ゼミの時間。私たちは荷物を片付けていた。

『ヤーダー。行きたくないー』

「先輩たちに行くって言ってましたよね」

『周りの目が辛いし、かと言ってテッちゃんのテレポは酔うんだもん』

プーと膨れて言うと、二人は困ったように笑った。我が儘を言っている自覚はあるが、酔ってたら話にならないし。

「では、僕が影操で姿を隠します。それでどうですか」

《お嬢、諦めたらどうだ?ここまで心を配ってくれてるぞ》

『ゴメンね。テっちゃん。我がままで』

「いえ、学校のルールが悪いです」

「ちょっ!!黒羽それ言っちゃダメなやつ!!」

シオくんに言われるまでなく折れますよーだ。みっちゃんのセリフが少し気になるけど気にしないことにしよう。

頷くとテッちゃんは力を使って、私たち三人の姿を隠した。でもさ、イキナリ姿を現したら、先輩たち、驚くよね?怒られないかなぁ。

《きっと、大丈夫でしょう。黒羽殿に慣れていらっしゃるでしょうし》

そうだといいのだが。


で、テッちゃんの能力が切れる前にAクラス用の校舎に着く。テッちゃん、力使わせてごめんね。背中に手を当ててさする。いくらか落ち着いたようだ。

「じゃ、こっちだ。黒羽、無茶すんなよ」

「……分かっています」

大丈夫じゃないよね?


暫く歩くと、水色の扉の前で二人は止まった。みっちゃんが戸をノックすると戸は中から開かれた。開いた先には、眼鏡の先輩が立っていた。

「おー。遅かったな。その子か?」

「はい。日向(ひなた)先輩。あかりん……月見は移動酔いしやすいみたいなので」

日向と呼ばれた先輩は意外そうに私を見てくる。

……なんか居心地が悪かったので、テッちゃんの後ろに引っ込むと、頭を掻きながらワリィと謝ってくれた。お気になさらずと返して中に入る。


水色の扉の中は、部屋の面積に対して、空間が拡張されていた。広いな、普通の教室の一.五倍はあるぞ。って、待て待て待て!!!

『凄っ!!空間操作って、かなり希少な能力なのに!

 かけた力が解けてないとか、どんだけかけた人の能力強いのさ!?』

「あら、月見さんは能力に対して博識なのね」

部屋の中央にある、大きなソファに女の人(たぶん2年)が座っていた。その周辺には一緒にお昼を食べたユウくん、シンくん、タツくんがいた。

おそらく、この人がカントクさんだ。

『はじめまして、カントクさん。月見あかりと言います。 いつも、みっちゃんやテッちゃんにはお世話になっています』

「始めまして、月見さん。私は高二の相沢栞子。

 そして、そこの彼は日向順よ。好きに呼んでいいわ」

栞子先輩………長いな、リコ先輩は私を値踏みするかのようにこちらを見る。

………ん?なんか数値化されてない?……あっ!!

私は慌ててみっちゃんの後ろに逃げる。リコ先輩はたぶん、アナライズ(解析)持ちだ。分析されたら色々ばれる。

「あら、よく分かったわね。いつも悟られなかったのに。

 ……これなら黒羽くんが貴女と組んだのも納得だわ。黒羽くんいい子見つけたわね」

どことなく満足げなリコ先輩を不思議に思っているとクスリと笑われた。なんでさ。テっちゃんは「そうですね」って頷いていたけど説明してよ!

「ごめんなさいね?黒羽くんの能力って強いから、それ目当てに近付いたかと思っていたの。一応先輩として気にしていたのよ」

『?その通りですよ?私一人じゃ本選まで、どころか退学ですし』

《お嬢、ストレート過ぎだろ》

《それが、あかり様の美点ですけどね》

本当の事を言うとリコ先輩どころか、私以外のみんなが笑い出す。シオくんたちやテッちゃんたちなんて苦笑だ。失礼な。


で、皆の笑いの発作が収まると、日向先輩が代表みたく、口を開いた。

「ふつー、利用するみたいな言い方はしないんじゃないか?」

『わかりきってる嘘はつかない主義です』

日向先輩にはっきり告げるとリコ先輩は不思議そうに尋ねた。

「それはいい心がけね。

 ………さて、途中までしか読めなかったけれど、貴女、テレポート持ってるじゃない。どうして使わないの?」

リコ先輩、めっちゃストレートに来たな。巫覡について悟られなかっただけ上出来かな。

…………てか、読むの早いな、この人。アナライズしてたの15秒もないはずなのに。

『私の志望はESPなんです。

 テレポートとテレパスのデュオでは、絶対に監理局に回されてしまいますから。そこに行くくらいなら退学を選びます』

そういうと皆はぎょっとしてこちらを見た。管理局なんて絶対に嫌だ。書類捌くだけなんて絶対に気が滅入る。

え?隠してたことについて?

法律上、超能力の一つ目には報告義務があるが、それ以上の場合は任意だ。

………してもしなくてもいいんだったら、しないって。今の時代は情報社会だ。下手に自分の手の内晒しちゃうなんて愚の骨頂。ま、女って秘密がある方がいいらしいしww


『まあ、ぶっちゃけた話。本選で剣技見せれたらオッケーもらえないかなぁって、思い始めまして』

「確かに、貴女の体力値からして、強化なしでも十分いけるわね」

テレポートで桜時雨を取り出してみせる。家から取り寄せただけだけどさ。

皆は私が本気だと分かったのか、ちょっと慌てた。ヘマなんてしないもん。

でも、みっちゃんとテッちゃんだけはむっとしていた。まあ、原因は私なんだけど。(たぶん)

「あかりん、俺らに黙ってたってことは信頼ならなかったってこと?」

ほらやっぱり、そういってくると思った。私だって、二人のことは大切な友人だと思って、信頼を置いている。もし私が襲われたことを知らせれば、巻き込んでしまうのではないかと思ってたんだ。だからこそ、何も言わなかったんだよね。

『違うよ。私の両親は"漆黒の帳"に殺された。

 私がそこそこ希少な力を持ってるとバレたらどうなるか、想像付かない?』

そう言えば、皆は沈黙した。

“漆黒の帳”は過激派超能力者至上主義者の集団だ。希少な能力者がいればその周辺の人間を殺して、洗脳して手駒にすると云う噂もある位だからね。…………仕方ないじゃんか。

ポケットにいたシオくんが、私の肩に登り頬をなめた。………心配要らないのに。私には叔父夫婦と幼馴染みの兄さん、今やシオくんたちやテッちゃんたちもいるからさ。

『ま、今は関係ないし、気にしないでいいですよ。立ち直ってますし。

 それ、私にはテッちゃんやみっちゃんっていう味方もいることですし?

 ………それより今は目先の目標ですよ、リコ先輩』

目に浮かぶ光に陰りがない事に気づいたリコ先輩は小さく息をのんだ。

私は、守られるだけの“姫巫女”じゃないもん。一人でも戦う術は、両親たちに習ったのだから。


「………そうね。

 さ、切り替えるわよ。とりあえず、今言えることだけ伝えるわ」

そう言ってパッと切り替えができるリコ先輩、マジイケメン。みっちゃんたち、こんな先輩がいるとは羨ましい。まあ、こうして一緒に話が聞けるだけでもかなり有難いんだけどね。

「とりあえず、今年もポイント制で、一点でも時間まで持っていればいいわ。それで予選は終了よ」

え、そんな簡単な。………いや、裏を読めってことかな。

始めに配るポイントが少ない、もしくは見つけにくいところに隠していると言うことだ。虹竜が単純な予選にしてくるはずがないし。

………ま、この情報では考えられるのはこれだけか。

「能力に制限はないけどな。これだけしか言えねーわ」

『それだけで十分ですよ。いくつか予想もたちましたし』

これをもとにいくらか作戦も練れるもん。みっちゃんたちにはハヤッと吃驚されたけど。これでも、三千人いる学年のトップ50だ。

「月見の頭の良さまじで学年底辺じゃねーのか……」

失礼な。河村くんの言っているのは、悪意ある噂だ。能力的に弱いから成績落ちてるのに、能力だけじゃなく頭も悪いって流れてる。

分かってくれているのは、みっちゃんたちだけだ。ため息をついた私をリコ先輩は嬉しそうに見た。

「あら、謀略が得意なの?あと、呼び方はあかりちゃんでいいかしら?」

『はい。私もリコ先輩と呼んでますし。策を練るの、かなり楽しいですよね』

満面の笑みでそうそう、と相槌を打つリコ先輩、

なんかフレンドリーになったわ。優しい先輩がいてくれるなんて嬉しいけど急変されるとビックリだ。

「ほんと、あかりちゃん、うちのチームに欲しいわね。黒羽くん。何が何でも口説いてちょうだい。SKYが彼女を取るのよ!」

え?SKY?

………ま、まさかテッちゃんとみっちゃん、ユウくんにシンくん、タツくんやリコ先輩、日向先輩って…!!

『Reign、だったの?』

Reignとは、まあ平たく言えば、学園の生徒会のことだ。人数の詳しい話は聞かないけど、かなりいるって噂だ。初等部や中等部、大学部も含んでるしね。Reignは7チームで構成されており、虹に纏わる名で呼ばれるらしいし。

「あ?言ってなかったのか、黒羽?」

「はい。知られるつもりもありませんでした」

火ノ宮くんに即答したテッちゃんとそれに頷くみっちゃん。言うつもりもなかったのか。酷くない?人のこと言えないけどさ。

「そんなモノを伝えなくても、あかりさんは僕たちを見つめて下さいますから」

そう言って優しい微笑をたたえていた。なんかほっこりする。それと共に罪悪感が募る。こんな大切な友人と、互いに隠し事をしていたのか

《あかり様、よろしかったですね。黒羽殿は貴女を大切な友と認めていらっしゃるようです》

《お嬢、泣いてるのか?目が潤んでんぞ》

え、嘘。あ、ヤバイ。自覚した途端に涙が出てきた。反射的にそっぽを向く。

「あーあ。黒羽くんが泣かせたわね。

あかりちゃん、今日はもう帰りなさい。午後ゼミについては私がどうにかしとくから。

黒羽くん。泣かせたんだからしっかり送りなさいよ」

楽しそうにウィンクをしたリコ先輩はテッちゃんの背中をドンと押した。テッちゃんはよろめいてたけど、すぐに立ち直って私に手を差し出した。帰ろうってことかな?

「送ります。話があるのでテレポートはなしですよ?」

どこかテッちゃんは嬉しそうだった。

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