4.龍狼の噺
で、手にブレスをつけてランくん達と共に歩いていくと、気づいたら神社に戻っていた。いつの間に?神様がすることだから突っ込まないけどさ………。
神社から出るとランくんは私の手を握り(気付いたら白くんと同じサイズになっていた。turbの今けんみたいな?)、テイ○ズの青いお犬様みたいになったシオくんは忠犬のように後ろについている。
道すがら、変なこと考えないように晩御飯について考えることにした。
あ、二人は晩御飯とかいるのかな?食べる気はしないんだけどなぁ。
家に着くと二人は不思議そうにしていた。何でさ。
「いえ、あかり様の性格からして暖かな家庭で育たれていたものだと、」
家族がいない子にしては明るいから、そう思われても仕方ない。
『まあ、うちの両親は"漆黒の帳"っていう組織になぜか殺されて、お兄ちゃんはまだ行方不明。叔父さん夫婦が育ててくれなかったらぐれてたかも』
二人は何か言葉を探していたが「必要ないよ」と伝えて家に入る。
まだ、家族全員がいなくなったわけじゃない。お兄ちゃんはどこかで生きているのだ。
叔父夫婦だって、従兄だって、私の事愛してくれてるんだし、一人じゃない。………だからこそ、私を家族の思い出のこもった家で過ごす許可をくれた優しい二人には私の決心を伝えてないのだ。
二人が、ESPに入りたがっていることを知ったら、全力で止めてくるに違いない。私に何かあったら父さんたちに申し訳がないからと言って。二人には心配をかけたくない。そう思って何も伝えてない。でも改めて全て話すべきかもしれないとも思う。決心つかないけど。
晩御飯を食べ終えて、二人にも緑茶を出す。(シオくんは家に入るなり人形になってた)二人の力について話してくれるらしい。一応巫覡についても教えてくれるんだってさ。
「で、だ。何について知りたい?」
『二人の能力と巫覡の力の使い方、かな』
「ま、そうだろうな。
まず、お嬢は五行相克って知ってるか?」
私はコクリと頷く。
五行相克っていうのは中国の思想だ。木火土金水の五つによって万物はできており、図では星形に配置がなされ、例えば、水は火に弱い、水は金からできる、なんて考えることだ。(詳しくはググってほしい)
「俺ら魔狼は、土属性、セイたち清龍は水属性な。
詳しくは明日にでも見せるわ。見せた方が分かりやすいだろうし、セイのあの空間行くか。
勿論、犬だの蛇だのの卷属から情報だって集めることもできる。
他には…………そうだな。セイは、昔暇だからつって安倍晴明に陰陽術習ってたしな。つか、お嬢、護身程度に習っとけよ」
「準備しておきますよ、どちらとも」
「俺が言うのもなんだが、セイは厳しいから。ま、頑張れや」
スパルタとかやだなぁ。陰陽術のレクチャーは少し気になるんだけどそれは置いといて、纏めるとランくんは水を操れて、陰陽術も使え、シオくんは土を操るらしい。どんな力かはまだ分かんないけどさ。
てか、安倍晴明と弟子とか、二人はどんだけ昔から生きてるのかな?
まあ、今さらだけどさ、二人してマジでいくつだよ!
「私達は神という概念から生まれたので年など関係ありませんよ」
さらっと心を読まないでよ!!
『あ、そう。すごい年寄りなんだね。で、巫覡の力って?』
年齢の件は流すことに、力は後日見せて貰うこととして、巫祇の力について聞いときたい。
自分で動けるように、前に進んでいく力を身に付けるために。
「あかり様のお力についてですか?
そう、ですね。……何か心当たりはありますか?」
うーん。心当たり、ね。
あるとしたら、プレコグ(未来予知)みたいな予知夢を見ることかな。まあ、能力認定受けてるテレパスとかもだと思う。
神の声を受け、それを人に伝えるのが巫女、つまりは巫覡の仕事だ。
「お考えの通りですよ。
付け加えるなら、前に申しました通り我々の力を利用されたり、呼び出すことも可能です。
他には、………我々の主のような神に呼び出されたり、祝福を下さったりと、色々あります」
後者はともかく、神に御呼びだしされたくないかな、なんか、難題を出されそうだし。期待に応えられないのも祟られそうだ。
全力は尽くすけどさぁー。
「こんなもんだな。で、お嬢。俺らはこれからどうして欲しい?お嬢の頼みは何でも叶えるぜ」
そう言ってウィンクをしたシオくんの横で、慈愛に満ちた表情でランくんは頷く。…………二人なら言ってもいいかな。
私の頼みは一つだけ。
”私を一人にしないで。”
ただ、それだけだ。
「それだけ、ですか?」
『うん。それだけ。
…………もう、周りの人が一度に皆いなくなるのは嫌だから。
二人だけでも絶対に私を置いていかないで』
「了解だ、お嬢。俺らはお前を一人にはしねぇよ。お前が動かなくなるその時まで、お嬢の傍にいる」
「あかり様が黄泉路に向かわれるその時まで、我々をお傍に御置き下さい」
そう言う二人は手のかかる末っ子をみるかのような、暖かい眼差しを向けた。
………柄にもなく涙を流した私を見ておろおろしてたけど。