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文太と真堂丸   作者: だかずお


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無謀な願い




ズゴオォン ズゴオォン ズゴオォオオオオンッ


島中に力強い足音が鳴り響いている


ズウゥンッ ズウゥンッ


「ったく、何だってんだよ、まじおっかねぇじゃねえか」しんべえはこのとてつもない巨大な音を、鬼神がたててると考えゾッとした。


「本物の怪物でごんすね」一之介の額からは汗が流れる。


「この音の主とやり合うんだょなぁ」太一も驚きを隠せない


「皆、気を引き締めろ」道来の声が心に響く


鬼神の足音に島中の存在は震えあがる、それは人間のみならず、動物達も怖れおののいていた。

鬼神はののや、尚の住む家に向かって、笑いながら歩いている


同時刻、青鬼の脳裏に呼び起こされているのは過去の記憶

青鬼の昔からの夢、それは人間と仲良く共存して生きることだった。


だが、その夢はことごとく打ち砕かれてきた。

鬼神率いる鬼達は人間の目からすれば恐怖の対象でしかなく、

鬼ヶ島では、自分が歩けば皆、人間は怯え震えるような目でこちらを見つめてきた。

青鬼は常に自分は加害者であるような気にとらわれることになる、無論自身は人間を傷つけた事など一度もなかった。

人間は常に自分の前では、出会った瞬間勝手に被害者になっているのだ。


一体俺が何をしたんだ?


どうして俺を恐怖する?


俺は一体どうすればいい?


常にこのような考えが自身にまとわりつく


「あのよ、俺よぉ見た目こんなだけど、おめぇらと仲良くなりてぇんだよ」


「うっうわあああああーっ」

島の人間は恐怖におののく、命をこい泣きくずれる者も沢山いた。

島じゃ。鬼神さんの影響もある、まぁ当然の反応かも知れん。

きっと鬼ヶ島の外では違うに決まってる、青鬼は島の外に出る機会をつくり、人間の友を作ることを夢みた。


きっと分かり合える人間はいるんだ


俺友達が欲しいんだ


人間と仲良くなりてぇ

「おっ、俺見た目はこんなだけどよ、人間と友達になりてぇんだ、力仕事は得意だから何でも言ってくれよ」


「化け物だーっ、殺せー、我々を喰いに来たぞー」


恐怖に覆われた人間の反応は常に同じだった。

人間にとって自分達とは姿形が違う彼は化け物でしかなく、その者がどんな性格かなど、関係ないのだ。

恐怖というもので心を閉ざしている人間と、それ以上の関係の進展はなかった。

たまに話を聞いてくれる者もいた、だが彼らは決まって青鬼の力を利用しようとするような者ばかりだった。


「ふっふっふ、あの化け物さえ上手いこと言って味方につければ、この争いは我々の勝利だ」


「殿、あの者に、お前は私の親友だと言ってたのは?」


「馬鹿者、誰があんな化け物」


「あはは、ごもっともです」


青鬼は壁の裏 泣いた。

自分の生きる場所はここにはねぇ、人間と共存するなど無理な話だったのかもしれない、青鬼は夢を諦めた。

ひっそり、鬼ヶ島に身を潜め一生暮らそう。

俺は人間を怖がらせるだけの人間にとっては恐怖の対象でしかない。

その年、青鬼は島に帰ることになる

だが、島で奇跡が起こったのだ。


島に戻ると、どこからか泣き声が

「んっ?」

目にしたのは小さな子供

道端で転んでいた

すぐさま、起き上がらせ、擦りむいた膝を優しく叩いてあげた。


「痛いのーとんでけぇー、ほらっもう痛くねえべよ」

青鬼は子の顔を見れなかった、何故なら自分の顔を見たらまた泣きだしてしまうだろう、恐怖して逃げ出してしまうだろうと恐れたからだ。


だがどういうことだ


その子供はニッコリ「青い鬼さんっありがとう」


青鬼はぽろぽろ涙を流し泣いていた。

そして心はなんとも言えない幸福な気持ちになった。


すると後ろから人の声が

「しまった」青鬼は逃げようとする


「あなた、優しいのね、妹をありがとうございました」

なんと、後ろの子も自分を恐怖せずに更には感謝の言葉まで述べてくれたのである。


「さっ、行こっ」


「うん」


「さよなら、青い鬼さん」


青鬼の瞳からボロボロ溢れ出る涙は止まることはなかった。

「うおおっーおおおっ」


心を開いてくれる人間もいる

自分と向き合ってくれる人間も必ずいるんだ

そのことに初めて気づいた瞬間だった。


それが青鬼と のの、尚との出会い


頼むっ、この処刑が彼女達でない事を祈る

「今行くぞっ、のの、尚」


ポツッ ポツッ ポッ ポツッ


「雨でごんすかね?」

一之介は洞窟の中から空を見上げた。


「だいぶ、曇って来ましたね」


その時だった「大丈夫ですかっ?」

女性の声?


「さっき、島に上陸した方達ですよね?」


洞窟の奥からその声を聞き、道来が出て行く

「さっき崖上にいた者か?」


「えっ?」女はその言葉に驚きを隠せなかった。

私に気付いていたの?


一之介は思った、さすが道来殿気づいてたでごんすか。


はっ、とする のの。

「にっ、逃げて下さい、この雄叫びは処刑の合図なんです、きっとあなた達に気づいて鬼神様が怒ってるんです、このままだと、取り返しのつかないことに」


「あれっ、でも僕らは鬼神にはまだ見つかってないと思いますが?」と文太


「えっ?」この処刑は彼らじゃなかった?

良かった。


だが一瞬嫌な胸騒ぎが自身によぎる。

それなら?


「あのぅ、良かったらこの島の現状を聞かせてもらえないでしょうか?それに一体この音は?」


「良いですけど、みなさんは何故ここへ?」


青鬼はのの の家の前に着き、現実を直視した。


家の周りには数匹の鬼


その中心には鬼神


青鬼は戦慄する。

本当か?この家の者を処刑するつもりなんだな。

心の中、青鬼は叫んだ。

足は震えていた。


「よぉ、青鬼 これから尚を処刑する」


その言葉に心臓が刃物で貫かれた気がした

「きっ、鬼神さんっ、よく考えてみてくれこの者達はあんたに尽くしてきた、生かしとけば必ず役に立つ、殺す必要なんかねぇ」


「ふーーーーんっ」


「そうだな」


青鬼はその言葉に安堵し



良かった



「そうだな、殺す」



ゾクッ



「だっだめだ鬼神さんっ」


「青鬼よぉ、お前いつから俺に意見出来るようになった?」鬼神のあまりに恐ろしい視線が青鬼を睨みつける


その時、中から尚が出てきた


「なおっ」叫ぶ青鬼


「んっ?何だ貴様随分、尚と仲良しみたいじゃねえか?」


「鬼神様、処刑は私で良いんですね、さあ行きましょう」尚は世話になった青鬼に迷惑をかけまいと話をそらすように言った。


「やけに、聞き分けが良いな、あのババアと一緒だな、何の因果か繰り返してるみたいで笑えるぜ」


「のの には指一本触れさせない」


「は?」


「次何か言ったらどうなるか分かってるな青鬼?」


「さて、尚ついてこい」


尚は鬼神について歩きはじめる。


その時

「待て、その娘は殺させない」

そう叫んでいたのは青鬼だった。


立ち止まる鬼神


「今 なんと 言った ?」


「その娘は殺させない」


その言葉に尚の瞳から涙がこぼれた。


青鬼さんっいけない、殺されてしまう



その頃、洞窟内



ピカッ ゴロゴロゴロ



外では雷が鳴り始め

「なるほど、そういう状況でしたか」

ののに島の現実、現状を話してもらっていた。


しかし、この時 のの には嫌な予感があった。

まだ彼らの話を何も聞いていなかったが、突然こう切り出す

「あのぅ、皆さんが島を出るまで少し安全な場所にかくまらせてもらいます、またすぐにここに来ます、待ってて下さい」


ののはそう言い洞窟をあとにした。



ピカッ ゴロゴロゴロ


「これからどうします?」


「鬼神のところに行く」真堂丸が立ち上がる


びっくりするしんべえ

「おっ、おいっ準備もなしにいきなりかよ」

ったく、こいつはどんだけ肝が座ってやがるんだ、相手はあの鬼神だぞっ。


「では俺も行こう」道来も立ち上がる


おっ、おーいまじですかぁ~


「後はここに残りあの娘と青鬼と合流しておいてくれ」


「あっしも行きましょうか?」


「真の兄貴俺も」と太一も


「お前達にはこっちを任せる 頼んだぞ」


「了解」 「承知したでごんす」



ゴロゴロ ゴロゴロ



青鬼は泣いていた



「おおおおおおおおおおおおおおおーっ」俺は無力だ



身体中血まみれ、立ち上がれなかった。


鬼神は青鬼をわざと生かした、この後、尚の死に絶望させる為に。


尚は行ってしまった、守れなかった


「青鬼さんっ」


ののか?


「一体何が?大丈夫、なにっ これっ?凄い傷」

ののは青鬼の身体を見て驚く


青鬼は「すまんっ、尚が連れて行かれた」


「えっ?」

すべてが真っ暗になった気がした。


「まっ、まさかお姉ちゃん」


青鬼は焦った、ののまで死なす訳にはいかない

「のの、分かってるな、行っちゃダメだ、お前の姉さんの願い忘れるな、お前だけでも生きるんだ」


「なに言ってるの青鬼さんっ?尚姉が死んだら私に生きる意味なんてないっ」

ののは走っていた。


「だめだっ、のの 行っちゃいけない、お前まで」身体はうごかない


おおおおおおおおおおおおおおおーっ


自分には何も出来ないのか?


なんだ俺は?


なんだっ

青鬼は泣きながら、自分の頭を地面に叩きつけ



くそっ くそっ くそっーーーーーーっ



ゴロゴロ ゴロゴロ


ののも殺されるだろう

俺のはじめて出来た人間の友達

いや、家族まるで子供だった。

今ならまだ、ののは止められるかも、必死に立ち上がろうとする青鬼

たっ頼む。

足がガクガク震えながらもようやく立ち上がれそうに

だが、今の足では自身の巨体を支えることはできなかった。


ズドンッ

だめだ、俺には

再び地面に倒れた。


「うおおおおおおおおおお~っ」


その時、二つの影が視界に入る


「はでにやられたな」


「お前達」


「鬼神はどこにいる?」

その小さな華奢の身体の人間は言った。


「笑わせるな、お前が行ってなにをする?」


青鬼は知っていた、先ほど対峙した時分かっていた。

この者はただの雑魚ではない。

だが、所詮鬼神さんの相手にはならない。


「鬼神さんに会ったら殺されるぞ、はやく島を去りやがれ、人間がぁ、俺が喰っちまうぞ」

青鬼は牙をむき出しに、だせる限りの声を出し二人を威嚇し地面に顔をつけた。


「尚、のの」

俺が諦めたら二人は死ぬ、再び立ち上がろうとする青鬼が顔をあげ驚く


二人の男は先程の声にも驚かず、真剣な顔で青鬼を見つめジッと立っているのだ。


青鬼は男達の顔を見て地面の土を握りしめた


しばし沈黙が辺りをつつむ




「なあ?」



二人は青鬼を見つめている



「力かしてくれねぇかな……」


鬼は悲痛な表情を浮かべ叫んだ

生まれて初めて人間に頼み事などした……俺が……人間に……


「のの と言う娘を鬼神さんから助けてやって欲しい、たっ頼む」青鬼は顔中、涙で濡らし頭を地面につけていた。


無論分かっている この質問の無謀さを、勿論知っている返事のないことも

ただ、そうすることしか出来なかった

このとんでもない頼み事に返事すらないと分かっていた、尚と、のの以外自分とまともに会話する人間がいない事も知っていた。

本気で頼んだわけじゃない、何もない空に言葉が勝手に発されたような物だった



のはずだった



するとすぐに自身の耳に声が響く


「場所を言え」


生まれて初めて人間にした頼み、そんな事絶対に了承出来るはずのない頼み。


その二人の人間は了承していたのだ。


自分の無謀な願いを躊躇なく引き受けた。


「任せておけ、娘は助ける」先程対峙した男が言う


青鬼は再び泣いていた


叶えられるはずのない願い、この者達の気持ちと返事が嬉しかった。


「ありがとう」



その頃のの は鬼神の所に着く

「鬼神様、尚姉をおかえし下さい、私はどうなっても構いませんから」


鬼達は笑いはじめ


鬼神はののを睨んだ


凄まじく力強い視線


ののは恐怖で固まる

「ああ、ちゃんと返してやろう」


「そこの広場にいるからよぉ」


ののは走る「尚姉今行く」



文太達の洞窟の近く、鬼族の幹部の黄鬼が何やら怪しい匂いを嗅ぎ分け近づいていた、「なんだどこからか嗅いだ事のない人間の匂いがする」


ゴロゴロゴローッ


「俺の嗅覚は確かだ」ギロリッ


「間違いねぇ、島の人間じゃねえ奴らが近くにいやがる」


その頃、真堂丸達は全力で走っている


「さほど遠くない、あの辺りだ」道来が言う


「ああ」


「真堂丸」


「なんだ?」


「鬼神とやるつもりか?」


「話によってはな」


伝説の怪物鬼神あの女狐を越える化け物

一体どれほどのものか?


私はお前を信ずる


真堂丸は頷く


二人の視界には鬼達が見えていた。


「行くぞ」


「ああ」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオーッ


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