大きな試練
私、のの と名付けられまして この世に生をうけました。
それが始まりだったのです。
私の母、父 、姉 いや村全体は絶対的強者の鬼の奴隷でした、それはそれは古くから、私の両親の親の親の代からもずっと、私たちの家系はどうしてもこの輪廻とでも言うかのようなこの巡り合わせから抜け出る事は不可能だったのです。
私たちの村の人間には自由などありません
もちろん意思すらも、持つものはたちまち奪われてしまう
逆らう事も出来ません
もちろんそれは殺され死ぬのが怖いからではありません。
むしろ、この現実から逃げられるのなら、そちらのほうが楽にすら感じてしまいます、自ら命を絶つならばまだ楽であります。
それでも………
逃げない理由はここに愛する者達がいるからです。
鬼の一族をとり仕切る 鬼神様 あの方は絶対です。
人間が逆らい力で勝つなどはまず不可能でありましょう。
以前、我々の村を救おうとある集団が立ち上がりました。
彼らは大砲を持ち、鬼神様に撃ち込んだのです、その時 鬼神様は何事もなかったように、その大砲を片手で粉々にしてしまいました。
そして全員即皆殺し。
この時、私たち村の人間は深く絶望の果てに沈んだのです。
彼ら鬼族の寿命は長く、千年を超すとも言われております。
私、のの の家系は少し特別らしく代々、鬼神様直属に仕えているのです。
これは今から三年前の出来事
「ぐわっはっはっは、たまらんな人間と言うあわれな生き物は」鬼神は大きな岩で形づくられた椅子に座り、笑っていた。
「鬼神様、今思い返してもおかしゅうございます、あの町の人間どもの死にゆく表情」
「ところで、赤鬼よ、少し気になる事があるんだが調べてくれ」
「はいっ」
ののは川辺にいた、川の中、日の光に照らされ自由に泳ぐ魚が羨ましかった。
「魚さんは良いね、自由に何処にでも行けて」
ズドンッ 後ろから鬼の足音
「魚さん逃げて、ここにいちゃだめ」
ズドンッ
振り返るのの
それは全身青い鬼
「あっ、青鬼さんっ」
「やあっ、のの」
青鬼は特別だった、鬼の中で唯一優しく、のの が大好きな鬼だった。
「どうしたの?こんなとこに来て、鬼神様に見られたら大変よ」
「のの、落ちついて 聞くんだ」
深刻な青鬼の表情に即座に心臓が破裂しそうな程、脈うちはじめたのを今も忘れない。
「お前の、母と父が殺される、お前は家から出ちゃいけない」
「えっ?」
頭が真っ白になった、訳が分からなくなった
気づいたら、のの は走りだしていた。
「お母さん、お父さん」
家に着くと、数匹の鬼に連れられ、のの の母と父は家屋の前を歩いている。
「お母さん、お父さん」
「のの、家に入ってなさい」父は叫んだ。
母は涙を流し「のの、何があっても生きるんだよ」
「やっ、やだあっ、お母さんが死ぬなら私も一緒に死ぬ」
私は家から出てきた姉に、家の中に押し込まれるようにして、家の中につれていかれた。
「どうして?お姉ちゃん?お母さん達殺されちゃうんだよ」
「そんなの分かってる」
「私、お母さんとお父さんまでいなくなるなら、もうこの世に未練なんてないっ、もう死んだっていい」
ののは叫んだ。
「それならもう、自ら命を絶つ」
私はこの時の姉の姿と言葉を今も忘れない。
唇を噛み締め、涙を流しながら姉は下にうつむき言った。
「私はそれでも生きたい」
姉は生きたい
生きたいんだ
こんなセ界でも愛する私の姉は…
私は膝を床につき、抵抗するのをやめた。
わたしは自身の思いを捨て
この時から姉の願いは私の願いになった。
姉さんを生かしてやりたい
私が死んだら姉さんは一人ぼっち。
両親が殺された理由は鬼神様に大砲を撃ち込んだ集団が知り合いだったとして、鬼族の抵抗因子をうんだとして責任を取らされたと言う事だった。
だが、実は母と父は彼らを止めていたのだ
「鬼神に勝てるわけなどない、我々は良いからかかわってはいけない」
理不尽なのは私も知っていた、だけど鬼神様は絶対、逆らう事は許されない
私には姉がいる
姉の希望が生きることなら、私も姉と共に生きることを決意する。
そして時は代り現在
その頃、文太と真堂丸達を乗せた馬車は走っていた。
「今の機に倒しておきたい幹部?」文太が道来に聞き返す
「そいつの名は鬼神」
しんべえはそれを聴き震えあがった
「きっ、鬼神だとーー、おいっ、まさか嘘だろう?」
「おいっ、まじかよ・・・大帝国ってのはあんな奴まで幹部にいるのかよ」しんべえの手は震えていた。
道来は続ける、「こないだの町で、私は鬼の腕を斬り落とした、鬼神は今、大帝国の幹部になる事で、鬼道とある約束を交わしている、それは人間を殺すのを今はおさえると言う約束だ」
「鬼道としても、鬼神達に好き勝手に村や町を破壊され支配する場所が減るのを嫌がった為の約束とも言われている、だがな、鬼神は仲間意識が強い、こないだの鬼が鬼神に報告しに行くと言った」
「まさか?」と文太
「ああ、報復の為、大量の人間が殺される事になるかもしれない」
しんべえは心の中、思っていた。
まっ、まじかよ 鬼族とやり合うのか?うっうそだろ
、 あの鬼神だぞっ
「分かった鬼神を止めよう」
真堂丸が言った。
おっおっおーい、鬼神を止めようだとまったく信じられねぇ。
そんな言葉を普通に口にする
だがしんべえは軽くほくそ笑んだ。
まあょ、今ならあながち嘘じゃねえって信じれる
お前は真堂丸だ。
何度も目の前で真堂丸の闘いを見てきたしんべえの信頼も変わりつつあった。
「まずは、兄貴達の傷を癒さなきゃな」と太一
「菊一という人のもとに今から行こうと思ってる」
「それって、まさか、与野菊一でごんすか?」
「ああ」
「与野菊一?」
「誰です?」と文太
「昔、一山さんと共に旅をしていたと言われている医術を知り尽くしたと言われる伝説の名医でごんす」一之助は彼の名を知っていた。
「修行中、死にかけた道来さんを一山先生の元を訪れてた菊一さんが救ったんだ、菊一さんの調合する薬はすごいんだぜ」と太一
僕らは今、菊一さんと言う方の元に向かっている。
場面は変わる
ザッ ザッ
「見晴らしの良い所に来た、旅を続けて 国を歩いて分かっちゃった」
「いない」
「自分より刀を扱える、強い奴」
ああ
その場所からは全てが一望できた。
下方に見える地上の風景が遥か下に感じられた
事実男はその例えがおかしくない域にいたのだ。
「唯一あの真堂丸って人なら、少し相手になるかもな」
ふーっ
男は軽いため息をつく
一山って言うあの爺さんも、僕には遥か及ばなかった。
その男の手には傷があった。
「ふぁーっ」男はあくびをして言う
「それ以上、近づかないほうが良いよ」
背後の者は立ち止まる。
「一斎殿で間違いないですね?」
影から姿をあらわしたのは、全身白ずくめの姿
そう大帝国の幹部であった。
「あなたにお話が」
「?」
再び馬車の中
真堂丸はいつかの一山の言葉を思い出していた。
「手に傷のある青年が儂をたずねに来た」
「わしから言わせれば刀の神と言っても申し分ない、その領域の男じゃ、お主とそやつは既に儂の上をいっている」
「やり合うのは避けられんかもしれない、だがな、その時は命はかけるな」
「死ぬぞ」
自身も初めての事だった、一瞬道ですれ違った時のあの衝撃 今も覚えている
そいつは人の姿をして歩き刀を持っていた、まるで神の化身のようだった。
こいつはとんでもなく強い 一瞬で全身いや、五感をこえた、何かが叫んでいた。
その刀使いを、あの瞬間 真堂丸は確かに見つけていたのだ。
真堂丸は自身の刀の柄に触れ
そして空を見て
嬉しそうに笑った
対決はもはや必須である事に疑問の余地はなかった
目の前にそびえ立つ 雲を突き抜ける山々
その上を見下ろす 空
すべてが自身の越えるべきものに見えた感じがしていた。




