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文太と真堂丸   作者: だかずお


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塞がり


ゴオオオオオオオオオーッ


「しぶとい奴だねぇ」


シュン

先程まで立っていた場所から真堂丸の姿は突然消える。

女狐は一瞬、あまりの速度に驚いた。

妾が見失っただと?


キィン

見事に刀を防いだが、それは女狐が思った以上に速く自身の首元に到達していた真堂丸の刀だった。


「今度はこっちからだ」

真堂丸の猛攻が始まった。

「あっ、あの野郎生きてやがったのか、おどかしやがって」

しんべえは自分が女狐に殺されずにすんだことにホッとし息を吐き出す。


「うおおおおおおおっ」


キィン キィン キィン キィン キィン

キィン キィン キン キィン キン

女狐は刀を防ぎながらこんな事を思う。

一瞬でも動きを見失えば妾とて即座に真っ二つに斬られるだろう。


こいつは・・・・

キィン キィン キィン キィン

女狐の表情からは余裕の笑みは消えていた。


「小賢しい」


ボオッ 口から炎が吐き出される。

しかし、それらも躱され真堂丸の猛攻は止まらない。

「うおおおおおおおっ」


キィン キィン キィン キィン キィン

キィン キィン キィン キィン キィン

しんべえはあまりの速度に二人が何をしてるのかさえよくとらえられないでいるのだが、音だけが空間に、激しく響き渡るのをしっかりと聴いていた。


ちっ、この速度は厄介じゃな。

女狐は尾っぽを静かに地面につけ、真堂丸の隙を伺っていた。


キィン キィン

今だ。

女狐の尾っぽが真堂丸の背後から身体に巻きつく


「また、これを忘れたな」女狐が笑う。


「いや、そうでもない」


ズバッ

尾っぽは斬られ


「グゲゲゲゲゲゲゲーッ」

女狐があげた事もない叫び声をあげた。


「貴様、ゆるさんぞ」

女狐の指の爪は腕に力を入れることにより、刃のように前に突き出される、鋭く刃物の様な爪。


「刀勝負はやめだ、肉体という我が最高の武器を使わせてもらうぞ」女狐は刀を捨て、素手で真堂丸に襲いかかった。


キィン キィン キィン キィン

まるで女狐の両手は鋭い鋭利な刃物

「まっ、まじかよ手で刀とやり合ってやがる」しんべえが叫ぶ。

女狐はこの時、心底驚いていた。

もう何年も前のことが頭をよぎる

「女狐様、最近良く聞く噂がありましゅうて」一人の手下の言葉だった。


「なんじゃ?」


「真堂丸と言うえらく強い男がいるようで」


「くっく、妾がいつか遊んでやろうかね」


「まあ、女狐様には遠く及ばんでしょうが」

自身は歯牙(しが)にもかけることはなかった。

だが何と言うことだ、この真堂丸と言う人間、妾をここまで苦しめている。

軽く圧勝のはずだった、だが現状、妾は全力を出さざるを得ない、そして何だこいつの目は・・・・・底が知れない。


妾が恐怖だと?


キィン キィン キィン


妾が恐怖だと?


ちっ、こいつの自分が負けるなどとも微塵に思っていない目が気に食わぬ。妾に本気で勝てると信じてるのか?

女狐は突然立ち止まった。


「褒めてつかわす、貴様が厄介な敵であることを素直に認めようぞ だが、これはどうかな?」

女狐の目はつり上がり、口元は耳まで裂けた。



その頃、城の外では

「さすがに、女狐の妹 強いでごんす」


「だが、三対一、こちらに分がある」

三人は傷だらけになっていたが、妹君のほうが追い込まれていた。

文太は乱に応急処置をほどこしている

「乱さん、しっかりして下さい」


「あっ、 ああ」

手は力強く握りかえされていた。

まだ意識はある。


「貴様、元郎 裏切りおって」


「心からお前らの仲間になったつもりはない」


キィン


「くそがああああっ」

妹君は口から炎を吐き 三人を包んだ

「焼けしね」


ゴオオオオオオオー


炎が三人を完全に囲んでしまう。


「みなさん」文太が叫ぶ


「うおおおっ」

炎の中から三人が勢いよく飛び出した


ブオオッ

だが、出た隙こそを妹君は狙っていたのだ


ズバッ


ズバッ


ズバッ

妹君が三人に太刀をくらわせ血が辺りに飛び散った。

「このまま終わらせる」

再び物凄い速度で斬りかかる


キィン キィン キィン


「そう、何度もくらうか」

刀を捌き立つ三人の姿、皆、致命傷はさけていた。

大同は巨大な武器を振りかざし

ドゴオオオーン

地面に振りかざされ砂埃が舞う


「甘いわ、貴様の首もらった」

大同の首めがけて刀を振りかざす妹君の姿


キィン

一之助の刀がそれを防ぐ


「おのれ」


ズバッ

その時、妹君は自身の身体を刀が貫いたのを知る

それは元郎の刀だった。


「フハハハ 笑わせる 貴様ら姉上に殺されるがいい ふっ フハハハ フハハ」妹君は地面に崩れ落ちた。

「絶望と共に生きよ」

ドサッ

そして、もう二度と動くことはなかった。

勝利?

文太は妹君が倒れるさまを見て、悲しげな表情を浮かべていた。

争いはどちら側も傷つく。

これが勝利と言うものなら到底喜べるものではなかった。

自分達は何て悲しいことをしているんだ。

それは皆、同じ気持ちであった。

戦…………


元郎はすぐに乱のもとにかけよる

「大丈夫か?」


「へっ、生命力の強さは元郎さんゆずり です」


「何とか致命傷は避けてあるみたいです」文太が言った。


「ふぅー良かった」


真堂丸こっちは全員無事だよ。真堂丸、しんべえさん どうか無事で、文太は城の方角を見つめていた。



城の中

ゴオオオオオオオー

燃え盛る炎

ザッ シュッ キィン

何度も刀を交えあわせ女狐はこんな事を思った。

恐怖を味方につけてる妾こそ最強のはずじゃ

しかし、こいつのこの力 どこから出てくる?

二人は見合ったまま再び動かなくなる。

睨み合う二人

すると突然

「妾は強い男が好きじゃ 妾の夫になるか?」女狐の瞳は真剣だった。


「そしたら、お前は殺戮をやめるのか?」

真堂丸の言葉。


「ふっ、やめてもいいやもしれぬ」


一瞬の沈黙が辺りをつつむ

「このまま、人を傷つけず 大帝国から身を引け そうしたらここでのく」


「フハハハハ 馬鹿な男じゃな 本当に馬鹿な男じゃ」


「決着をつけようぞ」


真堂丸は悲しい表情を浮かべた。

しんべえにはこのやりとりの意図が良く分からなかった。

殺しあいをしてる敵同士だろ?

ただ、あいつのあの悲しげな表情が何故か心にいつまでも残る。

そしてこの時だけは一瞬女狐が残酷な怪物には見えなかったという。


女狐が先に動き出し真堂丸に襲いかかる


キィン

女狐の指が真堂丸の刀を掴み、そのまま真堂丸ごと後ろの壁に押し込んだ

ドゴオオオオン


「あきらめろ」

刀を掴んだ逆の腕で、真堂丸を凄まじい速度で殴りまくる 何発 何十? 何百? しんべえの目からは皆目、見当もつかなかった。


ドゴツ ボゴッ グギッ

嫌な音が辺りに鳴り響く


その時だった


ズバッ

真堂丸の刀をおさまえていた女狐の腕を真堂丸が力で押しこみ斬り落としたのだ

しんべえは叫ぶ。

勝者は真堂丸だ、片腕の差はでかい。


すぐに凄まじい音が辺りに響き出す

ゴオオオオオオオオー

何と自身の右腕が斬り落とされた直後、自分の腕もろとも真堂丸を焼き払ったのだ。

「あわわわわわわわ」

しんべえの脚はガタガタ震えている、あの野郎 わざと右腕を斬らせたんだ。

勝つ為に。

わざとだったんだ・・・


しんべえはこの時知った

命をかける戦

当たり前のことだが、はなっから、腕のなくなることなど何とも思っていない覚悟が双方にあるのを今更ながら知った。

何の躊躇もないわけだ。

俺には絶対に出来ない、いかれてやがる どっちもおかしいぜ・・・


ゴオオオォォー

炎の中を見て女狐が喋り出す

「骨すら残らないと思ったが」


「あと一瞬、遅かったらな」


「降参しろ、そして二度と人を傷つけないと誓え」


「どこまでも甘い男じゃ、妾を甘くみるな」

女狐は自身の切れた右腕の先に刀を突き刺し


両腕に炎を吐いた、両腕は燃えている。

あわわわわわわ

しんべえは再び腰を抜かし震え出す。


「決着だ」


キィン

女狐の刀と腕に触れる度、灼熱の炎が真堂丸の身体を焼きつける


「うおおおおおおおおお」


「妾こそ、最強じゃ」


ガシュ キィン ズシユッ

薄れゆく意識の中

女狐は思った。

何故だ、何故妾をまえにして、これほどの攻撃をくらったにもかかわらず、こいつは倒れない?

妾は恐怖を力の源に生きてきた、それこそ最強ではないのか?

こんな人一人殺すのをためらうような男のどこからこんな力が?

こいつのこの力の源は妾とは全く違う。

なんだ?こいつのこの力はどこから出てくる?

源泉はなんじゃ?

何故仲間や人間の為に戦うような奴が、こんなに強いのだ?


妾は女狐じゃぞ


その時だった

ズクシュ


女狐の左腕が真堂丸の肩を貫いた


ボオッ

しんべえの顔は歪み直後に思う

「駄目か」


だが、舌打ちしたのは女狐のほう


ズバッ


女狐の左腕は飛んだ

真堂丸は倒れ込み

自身に突き刺さった燃えさかる腕を引き抜く


「ぐはっ」

そして、すぐさま立ち上がる


「良いだろう、認めよう妾の負けじゃ、もう炎すら出やしない」


「だが、真堂丸とやら そんなことで良いのか?」


「?」


「会ったろう? あいつに」


「誰だ?」


「骸だよ」


「あいつは、貴様を狙っているぞ、そんな優しさなどという甘さで奴に勝てるのか? 無理じゃろうな 、妾が言うんじゃ、クックック奴こそ本当の化け物ぞ 」

女狐に炎が燃え移り 身体は燃えている


「フハハハ 大帝国に刃向かった人間の行く末を見れないことだけは心残りだな、どちらにしろ貴様が相手にしてるのは強大すぎる敵

どこに向かおうと行き着くとこは地獄フハハハハハハハ」

女狐は燃え上がる炎にのまれていった。


しんべえはかん高く響く笑い声のあまりの不気味さに耳を塞いだ。

そして、震えた これ以上こいつらに関わっちゃいけない、こいつらは本当にとんでもないものと闘っているんだ。

ちきしょう、なんだよ 震えて 歯までガタガタとまらねぇじゃねえか。

こいつはあの女狐を本当にやりやがった、もう絶対に大帝国がこの先あいつを……


燃えさかる炎の中

「違う時代に生まれたら今度は仲良く出来ると願う」真堂丸は女狐に向かって囁いた。


「行くぞ、しんべえ こっから出るんだ」


「おっ、おう 」震える脚に力をいれ、なんとか立ち上がった。

こいつ、本当に本当にあの女狐をやっつけちまった しんべえは心の底から驚いていた。

その時思い出す「あっ、宝」

しまった己は馬鹿だ、戦いに見惚れて宝を忘れていた。

そんな燃えちまう、俺の宝が全て燃えちまう。


「おいっ、あっちに宝があるみたいだぞ」しんべえは真堂丸に言った。


「馬鹿野郎、命なくしてそんなものが何の役に立つ 急げ」

くっそ ここまできた 俺の努力が・・・

二人は全力で走り城を抜けた。

外に出るとしんべえは思った。

まるで地獄から生還したような気分

死は遠ざかり再び生が舞い戻ったようなそんな気分

俺は生きてるんだ……


「やったぜ、また空が見えた」

頭上には空が広がっていたのだ。


「ふぅー」

真堂丸は座り込み


その時だった。

ジャッ

何と女狐の兵に回りを囲まれていたのだ。

兵は五十はいる

「ちっ、身体が思うように動かねぇ」


「まっ、まじかよ 嘘だろ」しんべえは膝を地面につけた、せっかくあの女狐との戦に勝利したってのによ、ここまでか・・・・



その頃 文太達の所


「大同、乱をよろしく頼む 僕は真堂丸さんの所に向かう」


「あっしも」


「僕も」

丁度、向かおうとした時だった、三人の目つきは一瞬で変わった。


「どうしたんですか?皆さんそんな顔して」


「えっ?」

僕は腰をついてしまった。


物凄い殺気

目の前には全身を白で包んだ存在がこちらに向かって歩いてくる


「嘘」


「おやまぁ、気になって来てみたらまさか、女狐さんの妹がねぇ、女狐さんまでやられてる何てことはまさかないですよね」

聞き覚えのある声だった。

こいつは、あいつだ。


大帝国の幹部 秀峰

そんなっ、こんな時に、みんなの身体はもう限界に違いない。

「あなたは、あの時の? 私も運が良い。ここで、殺させていただきましょうかね」


ザッ

目の前に立った三人の背中


「文太さん逃げるんだ」元郎が言う


「さあ」と大同


「おやおや、雑魚が三人揃って死にますよ」


「やってみなきゃ分からんでごんす、急いで文太さん」と一之助


そんなっ、出来ない 僕にはみんなをおいてなんて。


「文太さん、目的を忘れるな、あんたが死んだら この先国はどうなる?あっし達はここであなたを守り死ぬのは本望です」


ちきしょう、涙がこぼれた。

彼らは死ぬつもりだ。

僕を助ける為に・・・・

僕は助けてもらってばかりだ

自分がここにいても、彼らの気持ちを無駄にしてしまうだけ。


「絶対に死なないでくださいよ」


僕は全力でこの場から離れます


三人は優しく微笑む

「先生は必ず、勝つでごんす 信じて待ってれば必ず来ます」


涙が止まらない

「一之助さん達のことも信じて待っています」


一之助が頷く


その時だった。

僕は後ろを振り向き再び座りこんでしまった。

その文太の様子を見て大同も即座に後ろを振り返る


「なんだとっ・・・・・」


すぐ、僕らの後ろ

なんと、もう一人全身を白で包んだ、大帝国の幹部が立っていたのだ。


先に続く未来への道は完全に塞がった。

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