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文太と真堂丸   作者: だかずお
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支配された町



文太と真堂丸



~ 支配された町 ~


空が何だか不気味な色で地上を覆っている様な嫌な感じがしていた。

僕らは今、大同さんの家に居る。


「僕の名前は元郎と言います、大同とは幼なじみで殿の護衛を一緒にしていました」


「それにしても、あなた達の話をさっき聴いていたので失礼ですが、あなたがあの真堂丸で本当に間違いないのですか?」


「ああ」


「驚きました、まさか本当に本物の真堂丸だとは、で先ほどの話はどこまで本当なんですか?」


「女狐と話をする、それでも分かり合えなかったら仕方がない」


「ばっ、馬鹿かお前は、話なんか通じる訳がねぇだろ」しんべえは半ば呆れ顔で声をあげた。


元郎は続ける

「もし駄目なら?」


「その時は止むを得ない」

元郎は心底信じられないでいた、この男本気なのか?

本気であの女狐に勝てると思っているのか?

真堂丸それ程の男なのか?


ガラッ扉が突然開く


ビクッ

しんべえと文太の身体は驚き一瞬震える。


「殿は死んだ」悲痛な表情を浮かべて立つのは大同だった。


「しかし、どうして?」一之助が問う


「恐怖でおかしくなっていたらしい自害した」


「まっ、まじかよ」

しんべえはその話を聞いて、見たこともない女狐を想像しては心底震えあがった。

ほんの少し関わっただけで恐怖で人の精神を崩壊させちまうほど恐ろしい存在


「おいっ元郎、お前突然俺たちの元から去り、この三年間何処で何してやがった?」大同は少し苛立っている様に見えた。


「女狐に仕えていた」


皆はその言葉に驚き

「きっ、貴様 殿を裏切り、まさか女狐に仕えていたとは」大同は元郎に掴みかかる。


「ただ、仕えていた訳ではない こうしてこのような機を待っていたのだ」


「てめぇ、予測していたのか?」


「ああ、女狐がこの地に来たと知ってから誰よりも先にな」


「どうして、俺に何も言わなかった?」


「お前は感情を出しすぎる、やるなら一人でやらなければ、いつかバレると思っていた」


「くそっ、一人そんな事をしていたのか」


「悪かったとは思っている、何も告げず一人黙っていなくなった事は、だがあの時こうなることは見えていた、自分は自身の愛するこの地を守りたかったんだ、ところで乱は元気か?」


「ああ、あいつは今もお前に憧れ、お前の話ばかりしている、今は俺の下で動いてもらっている」


「そうか」


「それより、お前の息子はどうしてる?」

この時、僕には一瞬、元郎さんが黙り込んだようにも見えたのだが。


「ああ、元気だ」


「しかし、本気で女狐を討つと考えているのなら、あなた達は女狐の姿すら拝めず死ぬ事になる」


「えっ?」

僕らはその言葉に驚いた。


「一体どういう事ですか?」


「奴の城は、とても複雑で入り組んでいて侵入者を殺すための罠に満ちている、何も知らない者が侵入し、無事に女狐の居る場所に辿りつくなどまず不可能」


「じゃあ、どうすりゃいいんだ」

大同が声を荒げ叫ぶ


「そこで、僕が役に立つ」


「何っ?」


「城の道はこの三年でほぼ頭に入っている、女狐の居る場所まで案内出来るんだ」


「すごいでごんす」


「真堂丸」文太は真堂丸を見つめる


「ああ」僕達に見えてきたのは希望の光


「国中の財宝が置かれる部屋の前、女狐の部屋はある」

その元郎がふと口にしたその言葉をしんべえは聞き逃さなかった。

ざっ、財宝?国中の?

まっ、まじか、ここでこいつらについて行ったら、もしかして、その財宝は俺のものになるかも。

しんべえはにんまり笑った。

「よっ、よし行こう」


「どうしたんでごんす?あれほどあり得ない様な事を抜かしていて?」


「いっ、いいんだよ ちょっと考えを変えたんだ」


「だが、一つだけ言っておく、かりに女狐の居場所に辿りつけたとしても結局は女狐に勝たなければ意味のない事実は何も変わらないぞ、

気配を消して寝てる間に討てる様な相手ではないからな」大同が言う。


「覚悟が決まってるなら、いつ出発しますか?」元郎は皆の顔を伺い見、言った。

今日は休み、明日の朝向かう事で、僕らの意見は一致する。


翌朝、大同の元で働いていた、乱も合流することになる

「驚いた、信じられない、まさか元郎さん一体今まで何処でどうしてたんですか?」暫くぶりの再開に驚きを隠せないが嬉しそうに喜ぶ乱


「乱、久しぶりだな、すまぬ色々な訳は向かう途中話そう」


「分かりました」

乱の瞳は再会の感動でうるんでいた。

「しかし、大同さん正気ですか?女狐を討つなんて」


「ああ、乱 やめるなら今のうちだぞ」


「いや、俺も行きます、大同さん、それに元郎さんが行くのなら」


「分かった」「では、皆さん行きましょう」大同が真堂丸達に頭を下げ言った。

それを見ていた、乱は気に食わなかった、なんで大同さんほどの人がこいつらにこんなふうな態度をしてるんだ。

ちっ、気に食わねぇ。

大同達の持つ馬車と合わせ、二台の車で向かうことに。


「これから、女狐の城の方に南下します、だが……」元郎はそこで言葉を止めた


「だが何です?」と文太


「この先は・・・地獄を見ると思った方がいい、本当にやめるのなら今しかない……」

しんべえはその発言にゾッとした。

やめようか?

だが、考えてもみろ、ここでこいつらと別れ、一人町に帰って一体俺に何が待つ?

せいぜい一生こきつかわれて、働いて、ぎりぎりの暮らしを送るだけ。

だが、今こいつらについてけば、こいつらの宝を盗み、更には女狐の財宝までいただけるかもしれない。

ええぃ、迷うな 俺には大金を得るしかないんだ。

それに、あの烏天狗よりも強い真堂丸もいる、それに一之助、更には大同、こいつらだって強いはずだ。

よっぽどの事がない限り簡単には負けやしない、これは俺にとって千載一遇の機会なんだ。


僕らは僕らの馬車、大同さん達は自分たちの車に乗り込む

「久しぶりの再会みたいですし、募る話もあるでしょうから」

馬車に揺られ道を進む


「それにしても、女狐の妹君も強いんですかね?」


「あっしは良く分からないでごんす」


「だが、先生、女狐は気をつけたほうがいい、只者ではないでごんす」


「ああ、知ってる」


「えっ?」


「俺は奴と一度闘った」


「なんとっ」

あの化け物のような女を見て恐れず立ち向かっていたのか。

一之助は驚いた。さすが、さすが先生だ。


「それで、どうなったでごんすか?」


「それって、まさか僕を助けに来てくれた時?」


「ああ、あの時あいつは全然本気ではなかった」真堂丸は外を見つめた。


「しかし相手を知っていたなら良かった、後は元郎殿の道案内に頼り進むだけでごんすね」

そう言う一之助はいまだにあの女狐の恐ろしい瞳を忘れられずに、微かに手は震えていた。


馬車はその後も走り続け、僕と一之助さんが昨日来た町に着いた時、僕らは言葉を失うことになる。


「・・・・・」


「そっ、そんな」


ガタガタガタガタ

「まっまじかよ」しんべえは嗚咽した。


「これが、女狐に支配された町の行く末です」


地面から、ありとあらゆる人間の部位がまるで生け花のように咲いているようだった。


「全員殺され埋められたのか・・」

乱も初めて見る光景に背筋が凍りついていた。


「信じられない、あれだけいた町の人間が全員・・・」


辺りには人間の手や首、脚、胴体が咲き誇っているかの様にはえていた……


真堂丸は馬車に乗り込む

「行くぞ」


「文太さん思いつめるな、あっし達にはあの時、どうしようもなかった、助けに行った所で二つ死体が増えただけの話、今は次の犠牲をくいとめる事、それに専念しましょう」

僕は涙を堪え頷いた。


それから、二時間くらいたち、僕らはとある町に辿り着く

「今日はここで休みましょう」

外から元郎の声が聞こえ僕らは馬車を止める。

そこは、女狐に支配された町の一つ

人間はまるで屍の様に動き

表情もなく、まるで生気を奪われた人形のようであった。

「こっ、これが人間?」乱がその町を目にした後、思わず口にした。

ここの人間達は自分たちの町以上に生気がない、なんだこいつらは、まるで生きながら死んでいる屍のようだ。


この時。大同は少し心配になっていた。

乱にとってこいつは少々荷の重過ぎる任務やもしれぬ。

そんな事を思った直後だった。

突如、狐の面をかぶった兵が二人こちらに向かって来た

「貴様ら武器を持ってるな、置け」


刀は真堂丸に向けられた。

その時だった、二人の兵は大同によって即座に倒されたのだ。

「さて、進みましょう」

余裕の表情を浮かべ大同は言った。


ちっ、見ろ、やはりあの真堂丸とか言う男、何も出来やしなかった。

本当の実力は大同さんの足元にも及ばねぇ。

くそっ、何であんな奴等に俺達がヘコヘコしてやがる。

「おいっ、お前の腰につけてる刀はただの飾りか?」乱が罵るように真堂丸に叫び言った。


「小僧、先生に何か文句があるでごんすか?」睨む一之助


「まぁまぁ、一之助さん」


「けっ、大同さんこいつら本当に役に立つんですか?」


「乱、今は黙って任務をこなせ」


「けっ、はいはい」


「きっ、貴様らー体何様のつもりじゃ」


「んっ?」


それは町の人間達の叫び声

「女狐様の部下を傷つけ、この町がどうなるか分かってるのか?」


「貴様らのせいで、わしらは皆殺しにされるのだ」


「待て待て、主らを助けに来たんじゃ」大同が叫ぶ


「何が助けにじゃ、わたしらはそんなの望んではいない、こいつらを殺して女狐様に差し出せば我々は助かるかも知れん」

大同は鉄で出来た大きなこん棒の様な形の武器を振りかざした。


「ひいいいいぃぃっ」


「ったく、支配されたと箱の中に住む住人達が自分で恐怖をこさえて怯える、こんな構図じゃあ助けたって洒落にならんな」


乱はムシャクシャしていた。

「こんな奴等 助ける価値があるのか?結局こいつらは何もしようとしない、ただ怯えて被害者面を浮かべてるだけだ」


その時

「みなさん、落ちついて話をきいてください、みなさんは助かりますから怯えずにきいてください」文太だった。


「なにを言うか、何が助かるだデタラメを言うな、殺せ、こいつらを殺せ女狐様に首を差し出せ」


「けっ、気に食わねぇこいつら町の人間も」乱は刀を抜こうとした。


それを元郎が刀をおさえる

「落ちつけ、乱取り乱すな、あの女狐を知っての事こうなるのも無理はない」


「いいか、町の人達よ、この事は黙っていろ、今はまだ誰にも知られていない、我々は女狐の部下をやっているものだ。これは内輪もめだから、あなた達に被害はない」元郎が叫ぶ


それを聞き町の人間達は何も見なかった表情を浮かべ家に戻っていった。


「今のは?」


「もちろん嘘だ、ああでも言わなきゃおさまらないだろう」


「じゃあ、もしこの事がばれたら?」


「町の人間は殺されるだろう」


「そんなっ」


「とりあえず、この町にいる女狐の兵を全員倒すしか手がないな、報告されると厄介だ」


「その必要はない」


「んっ?」


目の前には狐の面をかぶった、兵が三十程立っていた。

それは、先ほどの町の人間の報告により来ていたのだ。


「どうか、私が報告したから私の命だけは」


「良いだろう、貴様だけは助けてやる、だが家族は駄目だ」


「私の命が助かるならそれでいい」


「あはははははは」

狐の面をかぶる兵隊は笑った。


「我々の教育が行き届いてる良い子だ。そうだ、他人の命などゴミ同然、例え家族であろうとも」


それを見て

「真堂丸殿、あなたは女狐との戦いの為、休んでいてください、乱、元郎やるぞ」


「はいっ」 「ああ」


シュン キィン キィン ドンッ


「すっ、すげえ、三人とも強え」

しんべえは三人の強さに驚いた。

次から次へと兵は倒れていく。


「きっ、貴様ら我々に逆らってどうなるか」


ドスン


「これで全員か?」


「ああ、これで我々はお終いだ、貴様らっ、なんてことを逆らってはいけないものに逆らいおって」

町の人間は叫びだした。



シャリン


シャン


シャン


「なに、なんなのお前ら?」


狐の面の上から紫色の長い毛をつけ

着物を着る人間が目の前にいた。

先ほどの兵隊達とは少し格好が違う。


「妹君から私ジャガラ君師と命名されてこの町を見ていたのに私の立場ない、許せないねぇ、これ皆殺し」


ギロッ


鋭い目つきが僕らをとらえる。


「全員死んだと思いなさいよ」

そいつは刀をゆっくりゆっくりと抜きはじめたのだった。


「まずは君 死になさい」


そいつは僕には全く見えない速度で突然、僕らに牙を向いたのだった。


「さようなら、あなた」



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