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文太と真堂丸   作者: だかずお


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恐怖の支配




文太と真堂丸



〜 恐怖の支配 〜


ガタッ ゴト ガタン ゴトッ 馬車は走る。

納言の城を出て、すでに二日たっていた。


「いやーしかし、良いものもらったよなぁ」しんべえは生まれて初めて乗る、見たこともなかった馬車に上機嫌だ。


「何より歩かなくていいのが楽だ、いやーたまらん」終始ご機嫌なしんべえ。


「しかし、もらった地図によるともうすぐですぜ」一之助が地図を広げて言った。


「気を引き締めなきゃいけないですね、相当無法地帯と化してるらしいですから」文太も気を引き締め始めた。


「おいっ、だからよ、辞めようぜそんなとこ行くのは」


その時だった。

馬車が突然道の途中で止まる。


「何事でしょうか?あっしが見て来ます」

一之助が外に出て目にしたのは一人の若い女性だった。


「どうしたでごんすか?」


「旅のかたですか?」


「そうでごんす」


「この先は地獄岳という場所だとご存知で先を行かれますか?」


「ええ、まあ」


「悪いことはいいません、死にたくなければ、引き返したほうがいい」


「まあ、あっし達は向こう側に用があるんで、行きますよ」


「そうですか、それならどうか気をつけて」

よく見ると、その女性は手に花を持っていた。


「んっ?」

そこには大量に置かれた花


「これは?」


「この場所に入って戻らなくなった、者たちに捧げた花です、沢山の人が戻らないのです」女性は頭を下げ、その場を後にした。


馬車に戻る一之助

「さて、ここから地獄岳らしいですが、みなさん準備はいいですか?」


「はいっ」


しんべえはここで降りようとしたが、ここまで来てこいつらの持つお宝を盗めないのは癪にさわると思いついて行くことにした。

まっ、まあ真堂丸もいる事だろうし、万が一の事があっても大丈夫だろうよ、しんべえは自分に言い聞かせる様言った。


馬車は進んだ、悪路をひたすら進む、今目の前には薄暗く、不気味に横に広い山道が広がっている。


窓があいていたのだが、しんべえが

「おいっ、こんな気味悪い場所の景色みたかねえよ、しめろ」


「しかし、なんか気のせいか空気が違いますね、なんか嫌な感じがします」と文太


「だろっ、何だか気味悪い帰ろうぜ」


「まあ、そう無法地帯と言っても、行ってみないことには分からんでごんすよ」


真堂丸はずっと目を閉じて座っていた。


「おいっ、あの野郎ずっと寝てるんじゃないのか?あいつが寝てる間に襲われたら俺たちいっかんのおしまいだぞ」


文太は笑った

「まあ、大丈夫ですよ」


「おいっ、止まれ」


ビクッ「ひぃぃっさっそくなんか来た」


「あっしが行って来ますから、外に出ないでください」

一之助は一人外に出て行った。


「おいっ、あの野郎逃げたんじゃないのか?」

あははは、しんべえの発言に苦笑いする文太


しばらくして、馬車の扉は開き一之助が戻って来た。


「先に進みましょう」


何があったのか気になった、しんべえは外を覗いた。

「ひょえー」

しんべえはおどろき声をあげる。

外には五人の山賊のような男達が倒れていたのだ。

こっ、こいつも強いんだな。

はっはは、何だ怖がることなかったんじゃねえか。


「峰打ちですから心配なく」一之助は馬車の中に座った。


「しかし、これが町に続く道とは思えませんね、誰一人歩いてない…

さすがに、入ってすぐに山賊が襲って来るくらいですから、確かに危ない道ですね」文太は窓の外を見ている。


その時だった、木の上に不気味に立つ人影がじっと馬車が走るのを見ていた。

「ここを通ろうとする野郎がいたとはな、すぐに知らせなければ」


この地獄岳と言う場所、実は少し前までは普通に人々は行き来をし安全な道であった。

しかし、ある時この場所に大同と言う

身体のとてもデカイ男が何人かの子分と共にやってきた、そこからどうやら人の通れない危険な無法地帯の道と噂がたつようになったというのだ。


「馬車がこの道を抜けようとしてる、大同さんにしらせなきゃ」

大同と呼ばれる男は木の影で座っていた。


「大同さん最近ここも誰も通らなくなりましたね」


「ああ、まさに計画通りだ、ここを誰かに通られて、せっかく流れた噂を消すわけにゃいかねえ」


「それにしても大同さん向こうから、乱の野郎がものすごい速さでやってくるぜ」


「大同さん、馬車がこっちに来やがる」


「なんだとぉ」


その頃、馬車はまた止められている、三人の山賊が馬車の前に立ちはだかっていたのだ。


「おいっ、ここを通れると思うなよ」


「やれやれ、まったく」一之助が立ち上がる


大同達は集まり話あっていた。

「どこのどいつだ?」


「まさか、大帝国の奴らか?」


「さあ、だが躊躇なく来やがる、それに入り口で山賊がやられていた」


「ただの雑魚じゃないようだな」


「こりゃあ、俺の出番ですかね、大同さん」乱が武器を手にとった。


「どちらにしろ、町に着くにはここを通らなきゃいけねえ、俺たちはここで奴らをくいとめようじゃないか」


「はいっ」


しかし、一体何処のどいつだ?

この場所を通ろうとするなんて。

大同の視界に馬車がこちらに向かってくるのがしっかりととらえられた。

大同が合図する

それを見た大同の子分達は馬車の前に一斉に飛び出した。


「おいっ、貴様らここから先は」


「やれやれ」一之助が立ち上がろうとした時だった。


「先生?」


真堂丸は立ち上がった。

「俺が行こう」


一之助は席につき

「任せます」


「なんだ、この細いガキは」


「死にてぇのか?」


「身ぐるみ置いてけば命まではとらないでやろう、だがこの森で暮らしてもらう、もと来た道には帰さねぇ」


「どちらも、断ると言ったら」

真堂丸は取り囲む者たちを見つめた。


その時だった。

「やっ、やめろ、お前たち。まっまさかあんたは? 真堂丸殿では」

大同はあまりの驚きに開いた口が塞がらなかった。


「?」


やはり、俺はこの男を知っている脚は震えていた。

間違いないこいつは、あの真堂丸だ。


「しっ、失礼しました」

突然大同は頭を下げ

「私は大同って言うもんです、真堂丸殿の事は戦場で目にしてから一度たりとも忘れた事はございません」


「大同さん なに言ってやがんだ、こいつがあの真堂丸のわけねぇだろ」


「ばかやろーお前は黙ってろ乱」


「舐めた真似を本当に失礼しました、この道をお通り下さい、ただし内密に」


「どうやら、訳があるようだな」


「ええっ、ですがひとつだけお聞きになりてぇことがあります」


「町にどんなご用で?まっまさか町に危害を加えるとかですか?」


真堂丸は応えた。

「殿に話がある」


「殿に? そいつは嬉しいがそりゃあ無理に近い」


だが何かの可能性にかけたくある大同は真堂丸を真剣な顔で見つめた。

「俺に案内をさせていただけないか?頼みます」


「よしっ、馬車に乗れ」


「はいっ、ありがとうございます」


「おいっ、乱この場所はお前に任せた、俺はこの方を殿のもとに連れていく」


「正気ですか?」


「ああ、行って来る」


「なんだ、あの強い大同さんが妙にペコペコしやがって、何だか気に食わねぇ」乱は舌打ちした。


「うわぁっ、なんだよこいつは」

しんべえは突然馬車に乗り込んできた巨大な男に驚いた。


「どうも、初めまして、私は大同ってもんです、この道を殿の命令により通れなくさせてたものです」


「えっ?殿の命令?」


「そうです」


「どういうことですか?」


「殿は恐れておられる」


「恐れてる?一体何を?」


「人間がひっくり返っても勝てない本物の化け物をですよ」


しんべえは息をのんだ。

「なんだよ?」


「今はまず、いきさつを話させてください、殿は今恐怖にとらわれ頭が少しおかしくなり始めているのです」大同は一瞬うつむいた。


「殿は部屋に閉じこもり、町に通じるあらゆる道を通れないようにするよう命じました」


「それで、あの道を通るものをいなくする為にあんな事を」一之助は言った。


「じゃあ、通ろうとした人達はどうなったんですか?」


「心配はいらん、あの場所で私たちの手伝いをしてもらっている、殿の命令が下がるまで噂が変わるおそれがある以上帰すわけにはいかんが」


「みなさんも、町に行っても部外者なので入れないでしょう、だけど安心してください、私がなんとか説得しますから」


「しかし、殿にどのようなご用で?」


僕は事情を話した。


「まさか、驚いた。大帝国に歯向かう者たちがいるとは、だがそれは諦めたほうがいい、あんたらはどんな化け物達を相手にしているのかをわかっちゃいない、この国はもうじきに終わる、奴らは必ず国をおさめるだろう」


僕は黙っていた。


「でも、ここ辺りは大帝国の支配を受けていないと」


大同は鼻で笑った。

「ふっ、支配する必要などないんですよ、奴らが直接町に来て支配する必要すらない」


「?」


「町に来ていただければ分かること、ふっ、地獄岳が恐ろしい場所…本当の地獄はここじゃない」


「おいっ、気味悪いぜ、今なら帰れる帰ろう」

しんべえは今まで感じた事もない様な嫌な予感を感じていた。


そんな中

地獄岳を抜け 遂に僕らは町に着く。

その町の人間には覇気はなく、まるで死人。

僕はかつて似たような場所を見た事を思い出した。

そう、あれは妖魔師が支配していた村の光景に似ていた。


「一体この町の人間は何を恐れてんだ? なんの支配もされてないんだろう?」しんべえが恐る恐る言った。


大同は遠くにかすかに見える城を指差す。

「あの城が見えるだろう、あれだけで充分恐怖できるのだよ、奴はその為にこうして色んな町から見えるよう大きな城を構えた」


「一体誰の城なんですか?」文太が問う。


「あの城は大帝国の幹部、女狐の住まう城だ」


「女狐」

しんべえはその名前に震えあがった「女狐って、あの女狐か?」


「ああそうだ」


「まじかよ、大帝国の幹部だったのか奴はとっくに死んだと昔聞いていたが」しんべえは叫ぶように言った。


「生きている」


しんべえは自分の生きる現実を耳で聴き座りこんだ。

「勘弁してくれよ、そんな地域に来ちまったのかよ」


「真堂丸殿、もしあんた達がこの地域の人間を味方にしたいなら、あいつを討ち取る以外に道はない」


「だが、やめておくんだ、奴は本当の化け物だ」


それを聞いていた、一之助が口にした。


「あんたは先生を分かっていない、いいか、あっし達を町に入れてくれ、次はそこから考える」


僕らは、一旦大同さんの部下になりすまし村に入ることになった。


町の入り口には警備の者がいた。

こわばる、しんべえ。

僕らは一歩一歩近づいて行く。


「大同さんお疲れ様です」


「おう」


「その者たちは?」


「あの道を通ろうとした者たちでなかなか使える人材だったので特別に連れて来た」


「そうですか」

ジロり 警備の者はじっと僕らの顔を覗き込む様に見つめた。


「通してもらうぞ」


「はいっ」


なんとか無事に町に。

「ふぅーっ、冷汗がでたぜ」としんべえ。


「おいっ、待て」

別の警備の男の声が後ろから


ビクッ

「何ですか?」


「大同、殿の前で女狐の名前は絶対に禁句だぞ、分かってるな?」


「はい」


僕らは町を歩き、大同さんの家に着いた。

「ここを使ってください、でどうするんです?殿は女狐の名前すら聞けない状態みたいです」


大同は窓を開け空を見て話始めた。

「殿は本当に優しいお方だった、だがある時豹変した、それはとある町に出かけ帰ってからだった。

殿の一行は塞ぎこみ、何かをおそれていて誰一人口を開こうとしない、俺は何があったのか殿の付き添いに問いただした」


「付き添いがやっとの事で口にしたのは、めっ 女狐を見た」

ただそれだけだった。

それを口にした直後、彼は自害した。


「おいっ、はやく町を出よう、馬鹿野郎、女狐に殺されるぞ はやくしろ」しんべえは取り乱していた。

「本当の怪物なんだよ、分かったろ、名前を聞くだけで人が発狂するくらい恐ろしい奴なんだよ」


大同は突然真剣な顔をした。


「真堂丸殿 本気かい?さっきあんたが口にした言葉は?」


「大帝国と闘うということは、女狐とも闘うってことになるのだぞ」その瞬間には敬語は消え、なにかに懇願するような感じで質問してる様にも感じられた。


「ああ」

静かに口を開いたのは真堂丸だった。


その言葉を聞いた大同の頬には涙が流れていた。

「すっ、すまぬ」

堪えられぬ思いが咳を切るように溢れ出す

静かな一刻後

大同は再び口を開いた。


「私にも手伝わせてくれ、殿をあんなにした女狐の支配から殿を救いたい」


文太は大同の本気の思いと気持ちに触れた様な気がし、手をだした。

「よろしくお願いします」

大同の表情には本当はずっとこの時を待っていた、そんな想いが滲み出ていたのだ。


その夜の事

大同さんは明日、真堂丸を連れて行きたい場所があるとのこと。

それと大同さんの情報によると、翌日ここからすぐ近くの町に女狐の家来達が町を歩く大名行列の様なものがあるというのだ。

敵の情報収集の為、僕と一之助さんがその町に向かう事に。


「いいか、決して手を出してはいけない、あくまで情報収集」

大同は言った。


おっ、俺はどうしよう?

しんべえは心の中 考えていた。

女狐の家来が来る行列など死んでも行きたくねぇ、やはり真堂丸の近くにいるのが安全。

金を探す良い機会でもあるから、部屋に閉じこもってるのもいいな。

しんべえはニヤリ笑った。


「明日は気をつけろ、深追いはするな」真堂丸は文太と一之助に言った。


「はいっ」


「分かったでごんす」



翌朝

「じゃあ、二人共くれぐれも気をつけてください、さすがに女狐は来ないだろうが、もしかしたら、妹君がくるやもしれぬ」


妹君?

文太は少し気になった。


「まあ、気をつけるでごんす」


「そうだ、二人共これを通行証みたいな物だ、これでこの町の行き来が出来る、もしそれでもこの町に入れない時は俺の知り合いと言ってくれ」


「分かりました」


「さて、こちらもいきますか真堂丸殿」


「ああ」

大同はしんべえを見た。


「おっ、俺はここに残るぜ」


皆が部屋を出た後、隣の家だか外からのちょっとした物音だった。


ドスン


しーん


チーン


キョロキョロ辺りを見回し、しんべえはすぐに部屋を飛び出した。

「ひっ、一人にしないでくれ~」

真堂丸達の後を走って追って行く。


大同は背中に鉄の大きなこん棒の様な形の武器を背負っていた。


「それがお前の武器か」


「そうでございます」


走って二人を追っかけていた、しんべえは町外れの山の中に入る二人の姿をとらえた。

「待ってくれー」

木々を通り抜け、しんべえの目の前に視界が広がる。

だが、次の瞬間見たその光景に驚いた。


「おいっ?何なんだよ」

それは大同が大きな武器を手に持ち、真堂丸に向けて立っていたのだ。


「おいっ、嘘だろ?敵だったのか?」


直後、大同は真堂丸に襲いかかったのであった。




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