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文太と真堂丸   作者: だかずお


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始まりと終わり



文太と真堂丸



〜 始まりと終わり 〜



ゴゴゴゴゴォォォ


不気味で不穏な空気が城を包んでいる


暗妙坊主は怒っていた。

目の前に立つこいつの目つき気にいらねぇ。

即斬り殺す。

そう思った直後すぐに飛び出し 斬りかかりにはいる

刀を振りかざした直後、暗妙坊主は驚きを隠せなかった。

なんだこいつは?

それは、一切手加減なしの本気の斬り込みだった。

しかし、どういうことだろう、目の前のこいつはそれを躱した。

その時、自身でも闘い中に味わった人生でたった二度だけの恐怖感が暗妙坊主を包んだのだ。

こいつは、蝿王蛇と闘った時に感じた、自身の敗北を瞬時に俺に思いださせやがった。

暗妙坊主は男の近くにいる事にすぐさま危険を感じ間合いをとる。


疑いもなく悟ってしまった、俺はこいつに殺されると。

「フハハハハハ」


暗妙坊主は笑いだし

「貴様何者だ?」


「真堂丸」


「お前があの真堂丸か」

暗妙坊主の目ん玉は突然グルグル回り始めた。


「うわぁぁぁ」殿はあまりの不気味さに叫び目を背けた。

真堂丸は一瞬も暗妙坊主から意識を離さず、刀を向け構えている

その時、左右違う方向に回っていた目が止まり、暗妙坊主は突然目を閉じてしまった。


俺はこいつに勝てないだろう、逃げるか?

全力でなら逃げ切ることは可能かもしれない。

それか・・・・・

後者の賭けは恐ろしいものだった。

暗妙坊主は決断した、後者を選ぶ事を。


自身の首を差し出す代わり、あいつの片腕を斬る。

さすがのあいつも、俺を相手に無傷じゃすまない、あいつを殺す事は出来ないにしても、命を捨て片腕くらいなら斬りおとせるだろう。

あいつは生涯俺を忘れない、片腕を切り落とされた敵として。

「フハハハハハ、俺の首をやろう真堂丸、だがお前も無傷じゃすまないぜ」


一之助は何か嫌な感じがした

「暗妙坊主、死ぬ気の捨て身だ」


「先生、もしかしたらあいつを逃がしたほうがいいかもしれない、命をかける捨て身 なにか嫌な予感がする」


「ふっふっふ、良いだろう真堂丸 選択肢をやろう、俺を斬り腕を失うという代価を払うか、それとも俺を逃がすか、その代わり約束しよう、もう納言は狙わない」


「どうする?悪い話じゃねえだろう」

真堂丸は視界にはいる一之助、姉を殺された弟の姿を意識した。

真堂丸は生まれて初めて闘う理由をこんな風に考えた。

俺がこいつを逃がしたら、また次なる一之助やあの弟みたいな思いをする人間が生まれる。

それに一之助はどうなる?

また暗妙坊主を追い続けるのか?


真堂丸は決断した。

「こいっ」


ギロリ

「ああ、こちらは構わねぇぜ、命はくれてやる、変わりに腕をもらう」

お互い見合ったまま動かない


「真堂丸」文太は祈った。

祈る事しか自分には出来ない、本気で心より祈った身体全身は震えていた。

納言や光真組の隊長、町の人間達も息をのむ。


次で決着がつく

真堂丸があの決断時、覚悟を決めるまでに要した時間は代価を払う事ではなく、まったく別の物だった。


人を斬る事に罪悪感を感じはじめていた真堂丸は出来れば人間を斬り殺す事はさけていたのだ。

しかし今は、命を捨て腕をとりにくる事を決めた暗妙坊主を前にそれは、難しい事でもあった。


真堂丸は息をゆっくり吐き

暗妙坊主をしっかりと見つめた。

「最後に言っておきたい事はあるか?」

真堂丸の言葉だった。


「んっ?噂にきいてたより、甘っちょろい男の様だな、見て分かるぜ斬るのにためらいが見えるな」


「まぁどうでもいい、生きて後悔するんだな、あの時、やらなければ腕を失わずにすんだとな」暗妙坊主は飛び出した。


「真堂丸」 「先生」

一同は固唾を呑み見守った。


その直後、初めて暗妙坊主は自身の読みが全く甘かったことを知る事になる。

腕、腕だと 愚かだった。

ああ…おれにこいつの腕など斬り落とす事は不可能。


こいつは、恐ろしい…とんでもなく強い


こいつが真堂丸か。


ああ


ああ


本望かもしれねぇな


こいつに斬られるのは


だが、俺も甘くねぇ 俺は暗妙坊主だ。


スパァン


「うわああっ」

真っ先に悲鳴をあげたのは、姉を殺された、あの弟だった。


暗妙坊主は真っ二つに斬れ

そこに真堂丸は立っていた。

その場からは勝利の歓声などはあがらず、ただ人々は震え、驚いていた。

人間が真っ二つに・・・

さっきまで、語り動く暗妙坊主はそこにもういなかった。


真堂丸は黙って立っていた。

町人は叫ぶ者、座り込む者、唖然とする者様々だった。


静かに言葉を口にした。

「こうなることを本当に望んだか?」

それは一之助に向けての言葉だった。


一之助は涙した。

「あっしは、もう善人だろうが、悪人だろうが正直人がこんな風になるのを見たくないでごんす、だけど先生本当にありがとうございました、このご恩は一生忘れません」


目の前の光景は確かに凄まじいものだった。

僕は直視することが出来なかった。

人間が殺し合う、なんて悲しく酷たらしい、そして虚しいことなんだろう。

争い、それは殺すほうも、殺されるほうも、まわりの家族や人間も結局は痛い、それはまるで胸が・・叫び悲鳴をあげているようだ。

僕はそう強く心に感じた。

そして、同時に出来ることなら大帝国とも闘いなどはしたくない、そんな思いで胸がいっぱいになった。


真堂丸は一之助の返事を聴いて刀をしまった。

あの弟は父親に抱きかかえられ泣いていた。


「真堂丸!?」

僕は叫んだ


ズバッ 左肩から血が吹き出した。

「大丈夫だ、暗妙坊主 たいした使い手だな」


こうして、様々な傷を負いながらも一同はこの危機を何とか乗り切ったのであった。



翌朝

みんなは城の広間に集まっていた。

「文太、一之助 それに真堂丸 本当に何と礼を言ったら言いか、命を救われた、まだ夢を見ているようじゃ」

納言は微笑む


「しかし、まだ信じられん あの烏天狗と暗妙坊主を二人一晩に討ち取るとは、平門は未だに驚きを隠せないでいた。


それと昨夜 光真組の隊員達は、相手の兵を打ち倒し戻ってきていたのだ。

「この闘い、我々の完全勝利であります、これもお三方のおかげであります」と隊員達は口を揃えて言った。


「姫を救ってくれて心から礼を言う」と誠


清正も頭を下げた。


「ひとつ聞きたいことがあります、白い刃集結の情報を知り 大帝国の城に偵察に行っていたって話を昨夜聞いたんですが本当ですか?」文太の表情は険しかった。


「ああ、本当だ」


「一山さんの話は?」


一瞬静まりかえる広間


誠はゆっくり頷いた。

「文太、一山先生の事を知っておるのか?」納言は驚く


「はい」


「誠よ、皆にも何があったか詳しく教えてくれ」


「分かりました、これからあの日に何が起こったのか一部始終を話します」


「そう、我々は白い刃集結の情報を聞き烏天狗を追い奴等の城へいったのです」


そう、あれはその一日に起こった出来事。


ゴーーーッ


「あっあれが、大帝国の城」


「しかし、何だか少し破壊されてるようですね」

隊員達はヒソヒソ声で喋る。


あえては言わなかったが文太はその話を聴きそれは、まさしく真堂丸が自分を救いに行った時につくられた城の傷であろうと思った。


「ここから、先この人数での侵入は困難 私が一人行く、なにかあったら真っ先に逃げろ これは隊長命令だいいな」


「はいっ」


大きな門は突然開く

その時、誠の視線に映る一人の姿


「あれは一山様」


「まっ、まさか一体何で一人こんなところに?まさか幹部が全員集結した理由がここに・・・」


驚くことに城の警備はいっさいなかった、まるで城全体が一山を招きいれようとしていたかの様、おかげで侵入はたやすかった。


私は一山様を追い、大きな広い間壁の裏に着いた。

驚くことにそこまで誰一人の兵とも遭遇する事はなかった。


突然

「儂をつけてる その感じ 誠ではないか?」


一山様は私に気がついておられた。

「驚きです、よく誰かまで分かりましたね」


「そりゃあ、私が教えさせてもらった可愛い生徒、気配で分かるよ」一山は微笑んだ。


次の瞬間険しい表情で

「いいか気配を完全に消し、そして何があっても必ず出てくるな、分かったな?」

その鋭い視線と気迫のこもる表情に私は息を飲むしかなかった。

「分かりました」


薄暗い大広間の真ん中に一人の人間の気配

そいつこそ、大帝国 の大頭

鬼道千閣だったのです。


「よお、一山久しぶりだなぁ?」


「ほっほ、久しぶりじゃのう」


「どうやら、影武者でもなく本物のようじゃな」


「貴様程の男に見分けがつかないわけなかろう、まあ確かに私の影武者は七人程いる、無論皆私と同じようにする為、片腕は斬り落とさせてもらっている、国中のそっくりな奴を見つけてなぁ」


「なんと、酷い」


「どうだ?私の提案のってくれるか?幹部の一人になることを?」


「ひとつ聞きたい、大帝国は今真堂丸君を追ってるらしいな?」


「ああ、あいつはこの城に乗り込み、ちょっと暴れすぎた」


「わしが幹部になると言ったら、止めてくれるかな?」


「んっ?知り合いか?そいつは、出来ない相談だな奴は私の顔に泥を塗った、この私に楯突いたからなぁ」


「鬼道よ、もうやめないかこんな事、人間を恐怖や力で支配して一体なにを得られるというんじゃ?今こそ」


「黙れ、私に意見する為に来たのか?」


一山は一筋の涙を流した

「今ならまだ戻って来れる友よ、残りの余生を共に笑って生きようじゃないかあの頃のように」


「次言ったら 殺す」


「もう、本当に駄目なのか?もう止まらないのか?」

一山は覚悟を決めた。

仕方ない、今ここで儂が奴を止めるしかない。


「殺気を見せたな友よ、私が一人でここにいると思うか?」


「ふっ、馬鹿を言うな 後ろの襖の奥から只ならぬ殺気を感じてるわ、しかしまさかこんなに幹部を集結させていたとはな、たいした、歓迎じゃ」


襖が開いたそこに立つのは全身を白で包んだ 十の影


「これは、圧巻 幹部十すべて集まるのは初なのだ友よ」


一山は確信した、いくら奴等が強いといえども、この距離がある 自分は殺されても、せめて鬼道の首くらいはとれる 出来ることなら二、三人でも幹部を倒しておきたい。

後は若い世代に任せるしかないのぅ。

真堂丸君すまんの、後は任せるやもしれぬ。

ここで、一人でも多く倒す。

まずは鬼道その首もらう。

凄まじい一撃だった。

壁の小さな隙間から見ていた私は完全に一山様の槍が鬼道を捉えたと。


だが、その直後に目にした光景はおおよそ信じ難い、また信じたくない光景でした。


キィン

「ばっ、ばかな」一山は信じられなかった。

こやつ、まさかあそこからここまでの距離をこの一瞬で。

そして私の槍を完全にみきっている

こいつぁ・・・・


「よぉ、一山さん あんたと一度やりたかったんだよ」


「ふっふっふ、骸とは奴の事だ一山、想像以上だったかな」鬼道は笑った。


襖の奥では

「あの野郎、強い奴だけには興味を示しやがる、こないだの一件私は許しちゃあないんだよ」女狐は睨み殺すような瞳を浮かべ不気味に笑っている。


「一山の命に興味もない、だがあの骸って野郎 とんでもない奴だな」それは蠅王蛇と呼ばれる幹部だった。

そいつは、薄ら笑いを浮かべた。


白い刃の一人雷獣は黙って見つめていた。


フゥーこりゃあ まいったのう 想像以上の手練れじゃな。


一山はポケットから即座に煙幕弾を放ち辺りは煙に包まれた。


「あーあー見えないが、ワシの葉を振ればたちまち視界はすぐ戻る」それは烏天狗。

葉を振りかざし煙は一瞬でなくなった。


「あれぇ、逃がしましたか」秀峰は何もせず見ていた。

そう実は秀峰は雷獣を見張っていたのだ。

一山は真堂丸の仲間

あの時の雷獣の行動、もしかしたらこいつもあいつらの仲間かも知れない。


「哀れよのう、一山 逃がさんぞ」

鬼道は立ち上がった。


「鬼道様、壁の後ろに一匹ネズミがいたようですが始末しますか?」


「ただの雑魚構わん放っておけ ソウファよ」


「御意」


キィン キィン キィン

外から刀のぶつかり合う音が

それは骸と一山の刀と槍が重なり合う音だった。


「あんなもんで俺から逃げられるとでも?それとも後ろにいた奴を逃がす為かな?」


「ふっ、ばれておったか」


キィン キィン


「それまでだ」

鬼道が降りてきた。

後ろにはすべての幹部が揃っている。


「お前は愚かだ、権力、金、名声すべてのものをくれてやるというのにどうして私の誘いを断わる?」


「ふっ、笑わすのぅ 儂はそんなものに変えられない己自身の心を選んだまでじゃ」


離れたところにいた誠は悔いていた。

自分のせいだ。

自分がここに居なければ一山様は逃げられたかもしれない、

私を逃がす為にすべてをあちらに引きつけてくれた。

誠は悔いた、自分が足を引っ張ってしまった。


「ほぉ、こころ? 私にもあるがお前とは正反対の答えをだしたがな」


一山の回りは幹部で取り囲まれた。


「しかし、私の腕をやられたまま、貴様を死なすのは少々気が納得せぬな。まるで、この私が敗北者のようだ」


「一騎打といこうかね」


回りは全身白い十もの影に囲まれ

その真ん中では遂に一山と鬼道の闘いが始まろうとしていた。


「一山様、あなたは勝っても負けても殺される、くそぅ、何とかならないのか」誠は歯をくいしばった。


「さあ、決着をつけようかね」


「いいだろう」一山は槍を構えた。


冷たい嫌な空気が流れる


「いくぞ」

決闘は静かに幕をあげた。


ゴゴゴオオオオオーーッ




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