表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文太と真堂丸   作者: だかずお
43/159

嵐の前の静けさ



文太と真堂丸



〜 嵐の前の静けさ 〜


その場にいる誰もが驚いていた。

まさかの発言、発想すら浮かばなかったこと、あの化け物達 二人を倒す?だと。


納言は今しがた聞いた信じがたい言葉に驚きを隠せない表情を浮かべ真堂丸を見つめた。

しかし真堂丸の目はハッタリを言ってる様なものではなく納言を真っ直ぐに見ていたのだった。

それを見て、そこに立つ者が何処の何者かも知らなかったにも関わらず一同から自然とこんな言葉が出た。


「頼む」


しんべえは金に目がくらんでいて、すっかり男の正体を忘れていた。

こいつは、そうだ この野郎は、あの真堂丸だったんだ 心の中叫んでいた。


「馬鹿な、あの二人を倒す何てそんなことが」

殿は全く信じられない様だったが、

その男が嘘をついて言ってる様にも見えないのが分かった。

藁にもすがりたかったこの今の状況

その言葉を唯一の希望にした。


「お前一体何者なんだ?」

清正はそんなことを口に出来る男の正体が気になり問う


「真堂丸と言う」


そこに居る誰もがその名を聞き更に驚いた。

「まっ、まさかあの・・・」


「本物か」殿は目をまん丸にし

「そんな男が目の前に居るとは思いもよらなかった」と驚く

納言は言葉を失っていた。

今見ている感じているそれは絶望の中、確かに見た希望であったのだ。

僕はいつも、焦って見えなくなる

いるんだ、真堂丸

そうだ、ここには君がいる。



そんな中

城の近くの丘の上

「暗妙坊主、仕事はいつ決行するんですか?」

烏天狗の子供は言った。


「気が向いた時だ」


「父上が帰って来る」


「何?」


「納言を消すと言ってた」


暗妙坊主の顔には異常な程の血管が浮かび上がった


「俺の仕事を邪魔しようものなら奴も消すぞ」


「わっ、分かってる父上には伝える」

天狗は焦りすぐにその場を離れた。


「血が疼く、あの野郎なかなか感が良い」

暗妙坊主の目はイッていた。


「ふぅー危なかった、あと三秒でもあそこに居ようものなら、斬られてた、確かにあれに関わるのは命がけだ」



とある場所

「もう一日もあれば到着になります」


恐ろしいほどの巨体。

青黒い肌

それは面などではない

人々が天狗と語り継ぐ出で立ち、そのままの天狗の姿

鼻は長く、人間離れしたその風貌は見る者を驚かせた。

生きた人間達を椅子にして座っている

そいつこそ、白い刃と恐れられる幹部の一人 烏天狗であった。

それは、予想よりもはやい帰還。


「息子達は元気かのぅ ああ 我が城が恋しい 何より早く人を斬りたい」

不気味な大きな瞳はぎょろりと動いた。



翌朝

朝、はやくから静かに雨が降っている


僕らは、姫の護衛の為 城に泊まり過ごしていた。

しんべえは帰ろうとしたのだが、この町に居る以上いつ暗妙坊主や烏天狗がこの機に町を襲ってくるか分からず、一人でいるより真堂丸の近くに居るほうが安全と考えここにとどまっていた。


「まさか、あなたが真堂丸とはな正直驚いた、だが本当に勝てるか?暗妙坊主あいつは只者じゃなかった、それに烏天狗やつらは常識をはるかにこえる怪物達 簡単に倒せるものなら、光真組がすでにやっていた」

清正が言った。


真堂丸は黙って刀を磨いている


「だが、礼を言う 私も姫も諦めかけていたのだから、今こうして諦めずにすんでいるのは、あなたがたのおかげだ、それに、隊長もじきに戻るはず、そうすれば、もしかしたら」


城の外にはピクリとも動かず神経をとがらす男がいた。

それは、来たる暗妙坊主の命を狙う一之助


それに姉の敵討ちをしようと試みるあの弟も刀を持ち城の近くをうろうろしていた

「許さない、あいつだけは」


その時、城の周りが慌ただしくなり始めそれを察知した一之助はすぐさま、そちらに向かった。

そこには何人かの男達、一人の男が目に入った、それは羽織りに一の文字が刻まれた光真組の隊長の姿。あいつは確かに強そうだ。


城内と町は隊長の帰還に嬉しがり、人々は隊長に祈るように姫の護衛と無事を願った。

それは姫がいかに愛され慕われているかを物語るようだった。

その人々の何かを祈る様子に隊長はすぐ様、異変を察知し

城の入り口に突き刺された大量の赤い風車を目にした。


「暗妙坊主・・」


城に入り

「姫ただいま戻りました」


「誠 報告は聞いた、本当の話か?」


「姫 今はそれより、入り口のあれは?」


「答えよ、私の受けた報告は本当なのだな?」


隊長は静かに頷き

「どうしようも、ありませんでした」


姫は目を閉じ動かず立ち尽くしていた。

「あの人が・・・」


「姫、今は落ち込む暇などありませぬ、姫の命を守らなければなりません暗妙坊主 厄介なのがこの期に、きっと天狗の仕業ですね」


「状況を更に悪化させる報せがあるのですが、じきに烏天狗もこちらの方に着くと思われます。光真組全てをかけて立ち向かう時かと」


「今回は命を覚悟していて下さい、この二人はそれほど強大です」


「ふっ、命など毎日覚悟しているわ」


「あっ、どうもこんにちは」

文太はそこにたまたま通りかかった。


「姫こやつは?」


「文太じゃ、私を守ってくれている、彼らは大帝国と向き合う者達じゃ」


僕はその男の人の視線を見て驚いた、

何て鋭い目つき この人きっと強い そんな感じが僕にも分かった。


「文太、彼は(せい)光真組一番隊長だ」


突然廊下から叫び声が

「隊長、烏天狗も今、戻った模様です」


隊長が、すぐ廊下に向かいとびだした時だった。

ふと隊長の足が止まる 目の前には真堂丸が立っていた。

真堂丸と隊長はしばらくの間、目を合わせ


真堂丸が口をひらく

「お前が隊長だな?」


「ああ、貴様は何者だ?」


「俺がこれから烏天狗を討ちに行く、それまでここを任せた」


真堂丸は歩き始め

その言葉に誰もが驚いた


「真堂丸 いっ、今行くの?」


納言「正気か?お前一人で奴の城に・・・・」


その男と出会ってほんの数秒、誠はつぶやくように言った

「あなたにお任せする、こちらも任せて下さい」


誠はすぐに分かった、この男が只者でないことが、烏天狗を討てるかは分からないが、今は彼以外にもう頼める者がいない事を瞬時に悟ったのだ。


「僕も行きます」すぐに文太も真堂丸を追っかけた。


「文太、お前には俺とこっちの城の状態を繋ぐ橋役をやってもらう」


「分かりました」


何処かに歩き出す二人を見たしんべえは、まっ、まさかあいつら逃げるんだな。


「俺も一緒に行く」


「しんべえさん」


「ありがとう、しんべえさん」


「ありがとう?」ははあっ、まだ演技を?そうだな、城の奴等に見られてる手前まだ嘘をついてるのか。


「あっ、ああ」


外は不気味な程、真っ暗な空

雨も次第に強くなっていた。


ザーッ ザーッ


真堂丸は突然足を止め


それはすぐ後ろからの声

「先生 行くんですか?」


「ああ」


ザーッ ザザーッ


「ご無事で」


ザザーッ


「お前もな」


「それから、文太さんありがとう」


「一之助さん約束です、必ずまた会いましょう」


ザーッ


一之助は頷き

僕らはそれを見届け歩き出した。


「あの、野郎本当に暗妙坊主とやるのかよ?殺されるぜ」しんべえは言った。


「止めないのかよ?」


「心配ですか?」


「別にそんなんじゃねえやい」


この時、真堂丸と僕は彼を止めなかった、何故か分からないが復讐にとらわれていた彼の瞳が少し変わっていた事に気付いたからかもしれない。

一之助さんもどうかご無事で。


ザーッ ザザーッ


天狗の子供は浮かれて上機嫌であった

「父上が帰ってきた、もう無敵だ」


「父 父 父 父 父 父 父~~」


「ねぇ、僕らも暗妙坊主の仕事見に行かない、もちろんこの事は父上には内緒 言ったら叱られるよ」


「父上に内緒で手柄たてたいしね」


「それに父上と行って暗妙坊主に鉢合わせたらまずいよ」


「僕ら三人で行こうよ 見にさ」


「くすくす、クスクス」


「何かが始まりそう楽しみ」


その言葉の通り

このよどんだ空気が物語っているように僕らの開戦は近かったのだ。

激戦は幕をきって落とされる事となる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ