船出
文太と真堂丸
〜 船出 〜
門の中にいる護衛の侍達は恐ろしさのあまり、動けないでいた。
「まっ、まさか真正面から来るなんて、どれ程自信があるんだ」
「とりあえずやるしかない」
長身の殺し屋 座黒は平然とした表情で、どんどん近づいて来ている
「さて歯向かうなら皆殺しでも、良いんだぜ」
その時、座黒は突然足を止めた。
なんだ、この嫌な感じは 、突然足が震え始めた この異様な殺気 。
なんだ?どいつの殺気だ?
前方を見た座黒は驚いた、あっ あいつは真堂丸、何故あいつがここにまさか?
「貴様、真堂丸だな」
その場にいる、誰もがその名を聞き驚きを隠せなかった。
一之助も一瞬信じられず、この男があの真堂丸だったのか。
なるほど、どうりで強いわけだ。
あっしはどうやらとんでもない男と一緒にいたらしいな。
外で話をきいていた、しんべえはあまりの驚きに、道に座り込んでしまった。
「あっ、あいつが しっ、真堂丸だと」
今この状況、座黒が出来る唯一の行動は全力で逃げ切ることだけだった。
「あいつは俺の手にはおえない」
突然背をひるがえし全力で走りはじめた座黒
「一之助、お前はここにいろ 俺が追う」
「はっ、はい」正体を知った一之助は、今だ興奮と驚きさめやらぬ状態でいた。
座黒は後ろを確認しながら、全力で逃げ、蛾馬の居る藁葺き屋根の家に辿り着く。
「どうやら、逃げきれたようだ」
中に入り、すぐさま蛾馬に事情の報告を始める。
「どうやら、大変なことになったぜ、真堂丸があの屋敷にいやがるんだ、なんとか逃げきったがこれからどうする?奴はものすごい殺気だった」
蛾馬は笑っている
「何が可笑しいんでぇ」
「逃げ切れただと?笑わせるな」
「なにっ?」
「それじゃあ、後ろにいやがるのは、誰だよ」
座黒はあまりの恐ろしさに後ろを振り向くことが出来なかった。
「おっ、おい蛾馬 たっ 助けてくれ」
「ふざけるな、俺の頼まれた依頼をしくじりやがって」
「てっ、てめえ」
「話中に悪いが、誰に頼まれたんだ?それを教えれば、命まではとらないでやるよ」
「笑わせるな、あんたの噂はよく聞く。だが、所詮、噂だ 実際は闘って見なければ分からないだろう、やろうぜ」
突然、蛾馬は自身の持つ鎖鎌を振りかざした。
ものすごい、速さで鎖の先につく鎌はまるで生き物の様に自由自在に動いている。
「すっ、すげえ これが鎖鎌の蛾馬だ いける、これなら」座黒は手応えを感じた。
真堂丸が躱しても、すぐに鎖鎌は向きを変え追いかける
ザンッ ザンッ 辺りにある木に鎌をぶつける様に避けてもその木を綺麗に真っ二つにしてしまうほどの凄まじい威力。
「さすがの真堂丸も避けるのが精一杯か?」
蛾馬は真堂丸に向かって叫んだ。
その時、鎖の部分が真堂丸の刀に絡みつく
「これでお前の刀は封じたぜ」
「嬉しいか?」
「なにっ?」
蛾馬と座黒は驚いた。
何故なら、突然、真堂丸が自分の刀を手放し捨てたからだ。
「馬鹿な」
「貴様、馬鹿にしてるのか?俺はこんな機会を無駄にはしないぜ、丸腰あいてだが遠慮なく殺させてもらう、死ね」
鎌を振りかざし真堂丸に斬りかかった蛾馬。
だが鎌は真堂丸の首もとで止まり、地面に倒れこんだのは蛾馬のほうだった。
座黒は驚いた「何が起こったんだ?」
真堂丸が握っていたのは己の刀の鞘だった。
「悪いな、間を詰める手間を省かせてもらった」
鞘でみぞおちを打たれた蛾馬は倒れピクリとも動かなかった。
「分かった言う、依頼主を言う、だから命だけは」
真堂丸は座黒を気絶させ、二人を屋敷に連れて行った。
「奴は雇い主の名を吐いた、後は自分達でなんとか出来るだろう」
「おお、さすがだ ありがとう あんたが真堂丸だったとはな強いわけだ」
屋敷の主人はようやく安堵の顔を浮かべた。
「俺の名は誰にも言わず、黙っといてもらおう」
「分かった、誰にも言わない」
「これで、依頼を解決した」
「分かった、好きな額を言ってくれ、明日には準備して払う」
「文太、お前に任せる」
僕は自分の希望する額を伝えた。
主人はキョトンとしている
「なんだっ?たったそれだけか」
「今は少し旅の資金が欲しいだけなので」
「そう言えば、この先の港から船が出てるみたいですな」一之助が言った。
「どうせなら、船に乗って違う地域に旅だつなんてのはどうでやんすか?」
「分かりました、では その三人の船代もお願いします」
「分かった」主人は想像してた額よりはるかに安くつき、胸を撫で下ろし、ほっとしていた。
屋敷の外では、しんべえが
「あいつら、依頼解決したみたいだな、こりゃあとんでもない大金を手にしたはずだ」
翌日の朝
「この町を出たほうがいいかもな」真堂丸の言葉だった。
「確かに、何処でこの騒ぎを聞きつけ、大帝国の人間が来るか分かりませんからね」
「しかし、その話 今だに信じられんでごんす、まさか大帝国の城に乗り込んだなんて、だったら一刻も早くこの町から離れたほうがいい、すぐにでも蛾馬が倒された噂は広まり、それを奴等は嗅ぎつけるはずでごんす」
「じゃあ、決まりですね すぐに船に乗り、ここを離れましょう」
この時の僕らの判断がもし少しでも遅れていたら・・
僕らがすぐに動いたことは幸いした。
僕らが船に乗り込んだ一時間程の回米の町には、全身を白で包んだ男が町に兵を連れて到着した。
そう、それは大帝国の白い刃と恐れられる幹部の一人
町は異常な程の緊張状態に陥っていた。
その男は蛾馬達が捕らえられている場所を見つけ出し そこで尋問を始めている。
「お前等が闘ったのは真堂丸で間違いないんだな?」
座黒は目の前にあの大帝国の幹部が立っていることの恐怖で全身震えていた。
彼らは知っていた、全身を白で包んだ幹部連中は化け物級の強さで悪魔の様な連中だと言うことを。
とてつもない、迫力と威圧感に襲われ、精神がまともに機能しないのだ。
こっ、これが 大帝国の幹部
「あっ、はっ はい 間違いないです」
「奴は何処にいる?」
全身を白で包む男は蛾馬の目を覗き込んだ。
蛾馬はまだ震えてこそいなかったが、
目を覗き込まれたときに、目の前に立つ男がどれ程の怪物かを察知してしまった。
そうなると身体は正直だった。
すぐにガクガク全身の震えが始まった。
俺が目を覗かれただけで、こんな事に、ばっ 馬鹿な。
「あいつは強かったか?」
「はっ、はい 、じっ、自分とは次元の違う、つっ強さでした」
言葉は自然に敬語となる。
「そうか」その言葉を聴き、全身白ずくめの男は満足気な笑みを浮かべた。
「だっ、だが、俺達は大帝国の為に奴を捕えようとしたんです、だから命だけは」座黒は叫んだ
「はあ?」
一瞬にして座黒の首は飛んだ
「お前等、俺達が奴を探してるのを知ってたのか?」
「そっ、そうだ手配書を見て あっ、たっ頼む命だけは」蛾馬は祈る様に声をあげた
「知っていて、俺たちに報告をせず 闘い、負けて逃がしたのか・・・実力の差を見ても分からん 阿呆だなお前」
蛾馬の首は地面に転がった。
「くそが、俺とあいつの勝負を先延ばしにさせやがって、待ちきれないんだよ、疼いてな」
それは、真堂丸を探す大帝国の幹部、骸の姿であった。
「傷は癒えたか?兄弟くっくっ」
更に僕らを激震させる情報を僕らは翌日知ることになる。
それは、その日のうちに起こった出来事だった。
僕らの味方につくと言ってくれた。
優しい殿様 佐奈久 源流
彼の城は、骸率いる 兵に襲われ落とされていた。
城のてっぺんには 佐奈久 源流の首が飾りとして吊るされていたと云う。
人々は大帝国に刃向かえばどうなるかを知らず知らず精神的、肉体的にも植え込まれていった。
今や恐怖が人々と国を支配しつつあったのだ。
絶対的な力と恐怖が、人間をがんじがらめに縛りあげる。
その頃、真堂丸は船の上、曇った黒い空を見上げていた。
「この船、南に向かってるそうですよ」
「うえーっ 船酔いしたでごんす」
「大丈夫ですか?一之助さん」
船の中、ある一人の男の影があった。
「あいつら、たんまり金持ってるにちがいねえ、ぜーんぶとってやる」
そう、それは、しんべえの姿であった。
彼はしっかりとついてきていたのだ。
船は新たな地に向かって進んで行く。




