激突
文太と真堂丸
〜 激突 〜
ゴオォオォオー
ゴオォオォ
ゴオォオォオー
滝の下では
「真堂丸、礼を言う二人の命を救ってもらった、私は気がついたら無我夢中で飛び込んでいた」
「さすがに死を覚悟した、だが滝から落ちる時、お前は私達二人を助けてくれた、身体をはって、大丈夫なのか?」
「問題ない」
道来は薄れゆく記憶のなか、気づいていた、真堂丸が自分たちをかばい岩場に何度も身体を打ちつけていたことを。
「それより、太一は?」
「なんとか大丈夫だ」
意識を取り戻した、太一は泣きじゃくりながら
「兄貴 兄貴達 ありがとう もうだめかと思いやした、そしたら目の前に兄貴たちの姿が、一人地獄までの道のりを覚悟してた俺は、助かった救われた気になりました、どれだけあの瞬間安心して嬉しかったか もう本当にダメかと思いやした」
道来は顔をぐしゃぐしゃにして喜んで泣いた
「良かった 良かったなぁ 太一」
それを見て真堂丸はうっすら微笑む
と同時に瞬間、真堂丸の顔は強張り
「しまった 文太」
道来と太一もその言葉に表情を青ざめる
皆は、すぐさま文太のもとにかけだした。
ザッ ザザッ
滝の上に着いてみると
先ほどの場所には、なにもなかった
闘いのあとだけが残り
そこには
なにもなかった
「ぶ ん た」
一枚の紙が クナイによって木に張り付けられているのを真堂丸は発見した。
"この男は我々がさらった、救いたくば我々の本拠地で待つ"
「なんてこった」道来は驚き声をあげる
「すぐに助けにいきやしょう、場所はわかってる、奴らの本拠地ったら有名、すぐ近くです」
「そうだな、行くぞ」道来もすぐさま構える。
「さあ、真の兄貴」
「あにき?」
「潮時だ」
「真堂丸?」
「潮時?」
「どう言う意味で?」
「もともと、お前らも、文太も偶然知り合っただけの存在、たまたま出会い、ここまで来て会っただけの関係と言っているんだ」
「はっ?兄貴なにを言ってるんですか?」
道来は真堂丸をジッと見つめた
「起こったことだ、奴もそれなりの覚悟を決めここにいた」
「どういうことで?」
「ほっておけばいい」
太一は真堂丸の胸ぐらに掴みかかった
「兄貴 兄貴 しっかりしてくださいよ、どうしちゃったんですか? 文太の兄貴は真の兄貴の大切な友達なんじゃないんですか? どうして?」
道来は黙って見ている。
「真の兄貴 見損ないましたよ、あんたは強いけど、文太の兄貴の気持ちをしらねえ、あの人がどういう思いでいつもあんたの傍にいたか、あんたをどれだけ大事にしてたか分からないから、そんなことが言えるんすよ」
太一は掴んでいた胸ぐらをはなした。
そして、力が抜けてしまい地面に膝をつく。
真堂丸は一人歩き始めた
「兄貴本当に行かねえんですね?」
「ああ、 ここで別れだ、じゃあな」
太一は下を向き
「達者で」
そして、地面を全力で殴った。
道来は何も言わずジッと見つめていた。
そして、真堂丸の後ろ姿はとうとう二人から、見えなくなってしまった。
「道来さん、俺達はどうしたら?」
道来は黙って立っている。
ただ。じっと前を見つめ立っていた。
場面は変わり、文太は大帝国の本拠地
牢獄の中
「ああ、強い男だった。見てよこの左腕、あいつを溝にはめる為に木を斬った時、あの時間をつくった代償がこれ」
左腕は真っ赤に膨らんでいる
「腕が折られてる、どうりでクナイがうまく投げられないわけだ」秀峰は半ば上機嫌で仲間に話かけている。
で、「秀峰こいつをさらってきてどうするんだ?意味ねぇぞ」
「雷獣、こいつが捕まればあいつは助けにくるでしょう、その時を狙って真堂丸は消すことにする」
「お前の言った通り、確かにあれは厄介極まりない、まともにやりあい、闘って殺そうとは、今や思えない。あの域の実力者なら、骸さんあたりは喜ぶだろうが」
「だから、なにを勘違いしてやがる秀峰」
「なにがだ?」
「真堂丸という男を俺は昔から知っているんだ。あいつはひとりの人間の命を救う為に、動くような奴じゃない。獣同然の男、仲間などいない、だから厄介なんだ。面倒だが、じきじきに仕留めに行くしかないだろうな」
「ということで、この作戦は、なんも意味ねぇよ」
秀峰は少し驚いている。
どういうことだ?私の闘ったあの男は仲間を守り闘っているように見えたが。
「秀峰、準備しろ 真堂丸を探し出し、仕留めに行くぞ」
文太は牢の中、座っていた。
真堂丸、頼むから助けに来ないで。
それは、文太の願いであった。
自分の為に、彼を危険な目に合わせたくない、彼の願いだった。
「しかし、雷獣、あいつは私の見た限りここに来ると思うが」
「あははは、あの天下の真堂丸が、こんなどこの馬の骨か分からない小僧を助けにだと あはははは 笑わせやがる」
一人の兵隊に秀峰は質問する
「おい、今この城に幹部は何人いる」
「お二人様を除いて一人おられます」
「誰だ?」
「女狐様です」
「女狐さんがいるのか ふふっ ふふっ可哀想な真堂丸君」
「三人もいれば充分だ、もしもの場合、手伝いも想定に、しかし女狐さんが手伝ってくれるかは分からないところだな」
「くっくっく、秀峰お前、最初は一人でやると飛び出したくせに偉く態度が違うな」
「笑いたきゃ笑え、あいつと闘ってしまったからな わたしは面倒ごとはこうむるのさ」
「まっ、分からなくはねぇよ」
「奴が来るこたぁないけどな」
「このガキは暫くしたら殺しとけよ」
先程の森の中
太一は立ち上がった
「道来さん、望みが薄いのはわかってる、ですが俺は文太の兄貴を見捨てるこたぁできねぇ、道来さんにゃわるいが一人でも行くつもりだ」
「真の兄貴にはもう頼れねぇ、あの人は結局最初から仲間意識なんてものはなかったんですよ」
道来は口を開いた「太一、あいつは文太を助けに行ったさ」
「なっ、何ですって?」
「あいつは、知ってたのさ、三人で助けにいけば、また誰かが狙われ、危ない目にあう、あいつもあれくらいの腕を持つ相手に守りながら闘うのは厳しいんだよ」
「目のあたりにしただろう、敵の強さを」
「でっ、でも真の兄貴は潮時って」
「仲間意識を持たない奴が、お前を助けに命がけであの激流に身を投げるか」
そっ、そうだ 俺は兄貴の気持ちも読めず、なんて馬鹿なことを。
「道来さん じゃあ、俺たちはここで祈って待つだけですか?」
「あいつは、俺たちを助ける為にかなりの負荷でをおってるはずだ」
「何ですって?」
「命を助けてもらって、黙ってここで待てるか?太一」
太一は首を横に振った。
「命をかけろ太一 行くぞ」
太一は微笑み、表情は一変する。
気合いをいれ、返事に命を添えた。
「はいっ」
文太のいる敵の城内
「しかし、貴様も運のない奴だな、見捨てられるだけの為に奴と一緒に過ごしてきて 」雷獣は笑い牢の中の文太に話かける。
「真堂丸は必ず助けに来ます」
「フハハ 笑わせるな。何故お前みたいな小童を助けに来るんだ、俺はな、あいつの事はよく知ってるのさ、奴と俺は同じ村で育った」
「えっ?」文太はその言葉に驚く
「奴と俺は、昔の馴染みってやつなんだよ」
雷獣は座りこみ、話はじめた
「だからお前よりも、俺のが奴を知ってる」
文太は黙って雷獣を見つめている。
なにかを聞きたそうに。
ジッと相手の目を見つめた。
雷獣は目を大きく見開き文太を睨み
「物好きな野郎だな、あいつに興味があるのか?見捨てられ、尚もまだ」
その時だった
「雷獣様、城内に恐ろしく強い男が侵入しました、今行方を見失い追っています」
雷獣はそれを聞くや否、黙って立ち上がり文太を見つめた
"馬鹿な 本当に来やがった こいつを助けに"
真堂丸は一人屋根の上 身を隠しながら、肩を抑え休んでいた 「けっ、思ったより傷が深いな、文太どこだ」
ブウウヴ~~ッ ブウウウヴ~ッ
城内はただならぬ敵の侵入に騒がしさをましている。
ある兵隊は、この状況下を目の当たりにしてつぶやいた。
「この城に侵入だと?気は確かか相手はあの大帝国だぞ、しかも一人で?そんな奴がこの世に居たのか 何者なんだ」
文太のいる牢
「お前の言う通りだ、奴は本当にお前を助けに来た。これがどういうことになったか分かるか?大帝国を敵にまわしたと言うことだ、もうお前らはこの国じゃ生きていけないと言うことだ」
「あの野郎、なにをしてやがるんだ」
雷獣は吐き捨てるようにつぶやき、空を見上げた。
そして再び文太を意味深に見つめ
「人間ってのはわからねぇもんだな」
「かーっ、やだやだ俺も死ぬ気でやらなきゃならねぇか、まあ、奴がここに到達したらだけどな」
秀峰はとある部屋の前に立っている
それは黒く塗られた、真っ黒な不気味な襖の前
「女狐さん ちょっと 厄介な事になりましてね 力を貸して欲しい」
襖の中には 四人の裸の女
その中心に狐の面を被った、長い黒髪の女。
女たちは裸体を絡ませあい情事の真っ最中であった。
「秀峰だね、貴様、私の邪魔をするならお前とて殺してやるよ、侵入者 如き自分でやりなぁ あたしにゃ興味がないね」
「恐ろしく強いとしても」
「そういうのは骸の好物じゃないかい、だがここに侵入ねぇ、何者だい?」
「真堂丸」
「聞いたことある名だねぇ、興味ないわ」
ドゴオォーン
城内は凄まじい音を立て、慌ただしさは激しさを増していた。
「ここにも、来るかもしれないですよ、そしたら、あなたの大切なこの部屋も傷つくかも」
「そんなことしたら、そいつは生かしちゃいない 部屋を出な」
秀峰は部屋を出た
「おやまぁ、女狐さんに全部かたをつけてもらえれば楽でしたが、私がやらなきゃならないようですね、仕方ない」秀峰は音のするほうを見つめ刀を握った。
「さて、決着ですかね」
真堂丸は片っ端から部屋を覗いては、全力で走っていた
「文太どこだ」
今まさに大帝国という強大な敵との闘いの幕があがってしまったのだ。 もう引き返すことは出来ない、後戻りは出来ない
それは
大帝国の城、入り口付近
全身を白に包んだ、不気味な一つの影が城に向かって近づいていた。
「こりゃあ 不届きものがいるらしいな」
それは更に状況を悪化させるであろう、白い刃の一人であった。
そいつは、煙を上げる城を見つめ、不気味に笑っていた。




