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文太と真堂丸   作者: だかずお
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決着と迷い



文太と真堂丸



〜 決着と迷い 〜



試合は始まった


「はっ 速い」太一は想像以上に素早い空の突きに驚いていた、なんて速さ、ただの雑魚じゃない、これが、かの一山の弟子の実力。

しかし、道来は見事に躱わしている

必死に見守る太一の拳には自然と力が入り、手は力強く握りしめられていた。

見守る側の気持ちをいまや 文太も理解している、太一の気持ちが痛いほど伝わってくる。

それに文太にとっても、道来は大切な仲間

文太も太一と同じ気持ちで試合を見守っていた。


「ただの雑魚じゃないようだな、俺の突きをかわすか」


「ならこれは、どうだ 」

空の構えは変わり、間髪いれずに前に槍を突きだした


「道来さん」太一が叫ぶ


空の動きと同時に

「しゃあぁぁぁぁぁ」

雄叫びをあげ道来は前に出ていた

刀と槍はぶつかり合い、二人の身体は後ろに吹き飛んだ。

やっぱり道来さんは強い

真堂丸や、狼泊達があまりにも強くて分からなかった、でもこの人も尋常じゃない

勝手に声がでてしまった

「負けるな道来さん」

真堂丸も二人の闘いをじっと見つめている


二人はすぐさま相手の動きを警戒しつつ立ち上がった

「お前強いな」空は笑みを浮かべ道来に言った


「お前もな」


「次は俺の最高の技でいく、お前も本気でこい」


「ああ、そのつもりだ 行くぞ」


道場は静まりかえり、今や、そこにいる全ての者がその試合を見つめていた。

「あの空さんと互角にやりあってるなんて、何者なんだあの男は」稽古をしている者達もざわつき始めていた。


「うぉぉぉぉぉぉおおおお」

先ほどの倍はあるであろう加速


道来は静かに呼吸をととのえる。

負けたくない 負けられない

道来の真剣な思いだった


道来の心にしっかりと届いていた

2つの声


ずっと弟のように可愛がり面倒を見てきた太一の声

まだ日は浅いが優しく自分たちの事を心からの仲間と信じてくれてる 文太の声

それに

自分が一生をかけても越えられないと尊敬、憧れ、畏敬の念の様なものを感じる 男が見つめている

道来は負けられなかった

今までやってきた俺の刀人生 すべてをかける


刀と槍はぶつかり合い凄まじい音が、静まり返る道場に響き渡った


力の勝負


「道来さん」文太と太一が同時に叫ぶ


互角に思われた勝負に決着はついた

一方の武器ははじかれ

相手の攻撃は一方の身体に叩きこまれた。そして 直後に 身体を 地面に落とし倒れ込んだ


場内は静まりかえったまま


そう決着はついたのだ


「お前には敬意を払うぜ」


地面に倒れこんだのは道来であった。


すぐさま、太一がかけよる

「道来さん、しっかり」


静かに見守っていた 一山が声をあげる

「すぐさま、手当てするんじゃ 命にかかわるぞ」


「道来さん、しっかり」瞳に涙を浮かべた太一が必死に叫んでる


「たっ、太一か 俺は負けたのか、また無様なところを見せた すまんな」


「なに言ってるんですか、最高の試合でした 感動してこんなに涙なんか俺流しちゃってるんですから」


文太も太一と同様、涙を流していた。

二人の表情を目にした道来は微笑み、真堂丸を見る


「こんな無様な姿、お前にまた見られたな」


真堂丸は道来を黙って見つめ なにも言わなかった


意識を失った道来は、太一と門下生達により すぐに別の部屋に運ばれて行く。


「勝負は俺の勝ち、だがな俺が本当に闘いたいのはあんただよ」空は真堂丸を指さす


「あんた、強いだろ」


その時だった


「自惚れるな」

一山の一喝が道場に響き渡る


「せっ、先生?」


「空よ己の力量を見誤るでない、命をかけた勝負ごとの世界に生きるなら しっかり相手の力量を嗅ぎ分けなきゃいかん」


「どういうことですか?」


「そこに立つ男は、今のお前が相手に出来る男じゃないということだ」


「青年 私も六十年以上 この道を追求して生きて来た者 お主ほどの男を見ると、やはりこの年になってもゾクゾクしてしまうものだ」


その言葉を聞いて空も驚きを隠せなかった、先生がゾクゾクするほどの相手?


一山はつづけた

「私が予測するに 十 勝負をすれば、お主は八 私に勝つだろう」


場内では一山の強さを疑わない門下生達が再びざわめきを隠せないでいる

「馬鹿な先生何を言っておられるんですか」


それらの声を無視して一山は続けた

「しかし、二、私が勝つだろう」


「何故か分かっているだろう」


「本来ならお主は十私に勝つ それ程の腕前」


「しかし、今のお主の顔には迷いが見えるのじゃ それが刀を鈍らせている、その歯車は、一瞬一瞬が命のやりとりの世界に生きる者にとって致命的なものになる、お主が一番分かっているはずじゃ」


一山はそう言い 手を叩く

「今日の稽古は終いじゃ、ご飯にしよう、お主らも食べて行きなさい」


僕はその場に立ち尽くし動けないでいた。

真堂丸に迷い?


全く気がつかなかった、正直に感じた、この人は凄い、会ったばかりの真堂丸をここまで見抜くなんて。

そして、その言葉がぼくを心配にさせたのも事実だった。

真堂丸は目をつむり座っている


僕に何が出来る?

何をしてやれる?

僕はじっと真堂丸の背中を見つめた


そんな様子を感じ取ったからか?

一山は僕らに再び声をかける

「お主達の仲間も今は怪我でしばらくは安静が必要じゃ、良ければ治るまでここにいなさい」そして優しく微笑んだ。


僕は一山さんなら、真堂丸のこともなにか手助け出来るんじゃないかと言う思いもあり、すぐさま頼むように返事をした 「お願いします」

こうして、僕らの道場での生活は始まったのだ。



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