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文太と真堂丸   作者: だかずお
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只ならぬ男




文太と真堂丸




〜 只ならぬ男 〜


四人は無事に娘の居る村に戻ってきた。

村人は誰もが、信じられない、本当にこんな日が来るとは、と顔を見合わせ抱き合いはじめた。

そこには涙を流しながら頭を下げている娘の姿があった。


「みんなどうする?休んでから私たちの本来の目的地に向かうか?」道来が皆に聞く。


「僕は大丈夫ですけど」


「自分も」


「真堂丸はさすがに疲れてるんじゃない?」


「構わん」

真堂丸は、もう今すぐにでも、この村を離れようとしていた。

皆に敬われ、感謝される、この雰囲気がどうやら苦手のようだ。

休んでからでも良かったのだが、皆はこの村をすぐにたつことにした。


「なんとお礼を言ったらいいのやら」


真堂丸は返事もせず、そそくさと歩き始める。


「もとはと言えば、俺が助けると言い出したこと、礼など要らん、と言っても俺はなにもしてねぇけどな、感謝するならあの人にするんだな」太一が言った。


そして、みんなは本来の目的の依頼主のいるもとに向かい始めた。


その時

後ろから叫ぶ声が

それはあの娘だった


「本当にありがとうございました、私自身が出せなかった答えをみなさんが教えてくれました、私生きます、この救われた命、大切にこれから生きていきます」

娘は涙を流しながらハッキリとそう口にした。


それを聞き文太、太一、道来は顔を見合わせて微笑んだ。

彼女の言葉が嬉しかった。

僕はその時

ほんの少しだけ、斜め後ろからの視界からだったけど、真堂丸の口元が笑ってた様なそんな気がした。


文太は振り返って彼女を見る、彼女は苦しみ、絶望を味わったぶん、生に対しての希望を見出し、強く、光輝いていた様にも見えた。

僕はその美しい姿も、また生涯忘れることはないだろう。

頭に残ったのは、妖魔師の見開き続ける目と、光輝き今を懸命に歩こうとする輝く姿

対照的な光景だったが、それらは強烈に僕の心に残っている。

とにかく彼女は立派に生きていく、その姿を見てなんだかホッと安心した。

僕の心はとても和やかな気持ちになる。


「しかし、なんだか、簡単な依頼を受けにきただけのはずが、まさかこんなことになるなんて、俺が軽はずみに助けるなんて言ったばかりに、みなさんすいません、特に真の兄貴には頭があがりません」


「でも、おかげであの村は救われたんです 僕は嬉しいです」


「ううっ、文太の兄貴」


しかし、まさか 剛大と妖魔師までやっちまうとは、つくづくおそろしい奴だ。

道来は真堂丸の強さはやはり半端なものじゃないと、今一度確信した。


「しかし、すごい闘いだった、あんなの生まれてはじめてみやしたよ」

太一は興奮気味に語っている。


僕らはその後もひたすら山道を歩き続け

「後三時間も歩けば着くだろう」道来は辺りを見渡し告げる。


そんな時だった

突然、前を歩いてた真堂丸の足が急に止まったのだ


「真堂丸どうしたの?」

前を見ると、背丈は真堂丸くらい、体格も同じくらい どことなく真堂丸に似ている空気を放つ男を目にしたのだ。

僕は何故か直感的にこの人が只者でないということを感じた。


「すいません、空草村どっちだか分かりますか?」その男は尋ねてきた


「それならあっちだ」と太一


「あっ、ありがとうございます、あのひとつお願いがあるんですけど水一口くれません?」男は僕の目を見て言った。

僕は彼の目を見て驚く、なんて底知れぬ瞳 何処か似ている真堂丸に


「あっ 別にいいですよ」


「どうも」

僕が手渡そうとすると あれ筒がない

男はすでに筒を手に取り飲んでいた いつの間に?

この動作にて、道来までもがこの男が只者でないことを見抜いたようだ。


「どうも、ありがとう」

男はニッコリ笑った。彼が手を出したとき手の甲に刀傷があるのを僕はハッキリ目にした。


その時だった

「貴様何者だ?」

それは前を向いたまま振り返らずに質問する真堂丸の意外な問いだった。


「刀の道に生きてる 男です、お兄さんずば抜けて強いね、その域にいる男じゃあ、いつか闘うことになりますね」

男はニッコリ笑い、歩いて去って行った。


「まったくこれだから素人は困る、まさか真の兄貴の実力を本気で分かってたらあんなの口が裂けても言えないっすよ、めでたい野郎だ、さあ行きましょう」

太一は鼻で笑い歩きつづけた。


いや違う、あのひとは確かに強いのだ

真堂丸の言動、反応がそれを如実に物語っていた。


「道来さん」僕は振り返る


「あいつは強い、只者じゃない一体何者なんだ」


「真堂丸ハッキリ言え あいつは強いな。お前勝てるか?」


「さあな」

それは相手をたててる訳でもなく、質問を軽く受け流したようにも見えなかった、もしそれが本気の答えだったなら、そんな奴がこの世にいるのか?僕は信じられなかった。

また信じたくない気持ちもあった。


場面は変わり、先ほどの男は山路を嬉しそうに歩いていた。

「信じられない、あんな奴がいるんだな これだから刀の道はやめられない、ワクワクするな、あいつと闘ったら」

男は空を見上げていた。


僕らが依頼主の村に着こうとする時

前から三人組の男が

「この道は通せないんだがな、もし通ると言うなら、あり金、全部置いてきな」

僕は少し慌てていた。

「嫌だと言ったら」道来が笑う


「貴様なめてるのか、おいっ、こいつを斬れ」


「はいっ」

二人の男が刀を抜く


「死ねぇっ」

しかし、次の瞬間地面に倒れこんだのはその二人だった。

すごい、やっぱりこの道来さんも強い

残った男は声をあげ、慌てて逃げて行った。


「どうやら、あいつらが俺達の行こうとしてる所から頼まれてる退治して欲しいって奴らですね」


「そうみたいだな」


「ちょろい奴らっすよ、さっきのお詫びとして、真の兄貴や文太の兄貴は村で休んでくだせぇ、ここは俺達でけりつけますよ」


「そんなぁ」だが、僕はその言葉にちょっと安心した。


そこからすぐに依頼を受けた村に着く

休む場所もかしてくれて、今日は僕らは休むことに。

ああ、布団で休める さすがに歩きっぱなしだったから嬉しい。

更に湯まで浸かれるみたい。

ああ、生きてて良かったと、そんなことを考え笑ってしまった。

大きな湯浴みがあるそうなので四人は旅の疲れを癒すべくそこに浸かりに行くことに。


今はしばし部屋で休息中


「なんだか楽しみですね文太の兄貴」

もう子供なんだから太一さんは、なんて僕も大はしゃぎだ。

もうこの依頼は軽く片付くという安心感は良かった。

部屋でくつろいでいると、


「やあーーっ」

刀を持った子供がなにやら叫んでいるようだ 窓から見えた光景。


「行ってみよう」太一さんの言葉に僕もつづく。


「情けない村人達め、自分の村を守るのにどうしてよそ者に任せるんだ、山賊達なんか俺が倒す」


「なんだあいつは?」

太一は面白がって見ている


「お前らだろ?依頼されてここに来たのは、お前らなんか必要ない、山賊くらいこの一彦が簡単に倒す、よそ者の助けなんか要らないんだよ」


そして太一を見て手招きした

「来いよ、お前らなんか必要ないこと見せてやる」


すると太一は刀を握り向かって行く。


「ちょっと太一さん」


「大丈夫、見ててくだせぇ」


「おいっ、ガキ勝負してやるよ」


「やってやる、親の仇は自分でとるんだ」


僕が慌てふためく中、二人の決闘は始まろうとしていた。




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