真堂丸 対 剛大
文太と真堂丸
〜 真堂丸 対 剛大 〜
辺りは地響きを鳴らし唸りはじめている
剛大が真堂丸に向かって次から次へと大木を投げはじめたからだ。
その勢いは止まらない
「やべぇ、やべえ ですよ 文太の兄貴、さがっていましょう、ここにいちゃ危険だ」
砂埃が舞い、今は何が起きているか全く見えない
ドゴオオオーン ズゴオオーーンッ
「真堂丸」文太は心配になり声をあげた
「ちっ、なんて怪力だ」道来は剛大の人間離れした怪力に驚き、これ以上近くにいたら、三人の身が危険な事を感じ、文太や太一に、ここから離れる様、叫ぶ。
その場をなかなか離れようとしない文太を、二人で引っ張りその場を離れた。
「真の兄貴は無事か?」
「こんだけ投げりゃ、あいつも死んだな」剛大は余裕の笑みを浮かべ笑っている。
その時だった。剛大の足元から物凄い速度で、一つの影が飛びかかった。
「ちっ」
真堂丸だった
剛大を斬ろうとした瞬間
キィン
真堂丸の刀は妖魔師によってふせがれた
「油断するな、こいつは雑魚じゃねえ」
「助かったぜ ひいぃいぃやあー」
剛大は空高く飛び そのまま真堂丸を身体全体で踏み潰そうとする
それを寝転びながら交わす真堂丸
地面はひび割れ もりあがる
ドゴオオォォォーーン!!!!
「なんて闘いだ 俺なんかじゃあ手も足もでねえ」太一は目の前で繰り広げられてる、浮世離れした闘いに息を飲んだ。
「貴様強いな 何者だ?」
そう口にした妖魔師は目の前に立つ男の顔を見ては、何やらハッとした顔を浮かべた。
「貴様は・・・」
「あいつが何者か知ってるのか?」
「強えはずだぜ、あいつを俺は知ってる」
「どこの誰だ?」
「真堂丸」
「なんだって?」
「俺は駆け出しの頃、一度だけ戦場であいつの姿をみた、身がすくんだぜ、こんな奴がいるのかって、今でも顔は忘れねえ」
「あいつがそうなのか?」
「間違いない」
「ちっ、厄介なことになったな」
「だが剛大焦るな、今の俺なら奴に勝てる、更に今は二人もいる、ゾクゾクするぜこんな闘い」妖魔師は声をあげ笑いはじめた。
「先輩、今日貴様を殺させて貰うぜ」
「おい剛大時間を稼げ、俺が奴に術をかける」
「あの術か、いいぜ」
「まあ、まずは小手調べといくか」
妖魔師が背中から取り出した杖
それには不気味な目のような模様がたくさん描かれていた。
そしてなにやらブツブツとつぶやきはじめる
それと、同時に剛大は恐ろしいほどのデカイ声をあげ真堂丸に突進した。
普通の人間なら、この声で戦意は失せ立ち尽くしてしまうほどの大きな声。
文太達は鼓膜が破れてしまうのをおそれ、すぐに耳を塞いだ。
「剛大は確かに力はあるが、あいつの速度じゃあ真堂丸は捉えられない」
道来は真堂丸の勝ちを確信してるようだった。
「だが、やつらは必ず何かしてくるはずだ。妖魔師 あいつは奇妙な妖術のようなものを使うときいている」
僕の心臓は高まり不安でいっぱいになった。
その時だった 真堂丸の様子がおかしい
今にも剛大の突進が直撃してしまう状況にもかかわらず、一向に動く気配がないのだ。
「真の兄貴が動かねえ、なにか策があるのか?」
「いや、違う」道来は叫んだ
「えっ?」
「あいつの妖術だ」
なんと真堂丸は動けないようなのだ
「そんな、バカな 」太一は叫んだ
「真堂丸」気づいたら文太も叫んでいた
剛大の突進に直撃した真堂丸の身体は、まるで人間が巨人に投げ飛ばされたかの如く、身体は軽々と宙をまい、木々をなぎ倒し吹き飛んでいった。
「嘘だろ、真の兄貴が・・・あれじゃあ死んじまったよ 死んじまったよ」
太一はあまりの衝撃に混乱した。
「嘘だ 嘘だよ・・・」
僕は目にした光景を受け入れないことしか出来なかった
「案外あっけなかったな」剛大は笑いこちらを睨む
「あいつらも、殺しとくか」
剛大がこちらに近づいてくる
文太は真堂丸が死んでしまったんだと言う悲しみで、その場を動く気力すら、わかなかった。
「駄目だ 文太逃げろ」道来は声をあげ叫ぶ
すぐさま刀を抜こうとしたが動けないのだ
「まっ、まさか?」
後ろで不気味な笑みを浮かべる妖魔師
「文太の兄貴」太一も同じだった
「くっそおおお」二人は叫んだ
「真堂丸」文太は、真堂丸が飛ばされたほうを見つめ逃げる気力もない
「お前、人の心配してる場合かよ」
「まあ、いいや 首を引きちぎってやるよ」
剛大は文太の首を掴もうと手を伸ばした
「頼むやめてくれ 文太の兄貴逃げてくれ」
「文太逃げろ」
二人の声はしっかりと耳に届いたが身体が反応しない。
少し嬉しかった、二人があんなに僕を心配してくれてる、冷静にそんなことを考えてる自分がいた。
ああ、真堂丸と一緒なら それもいいか、そんなことが心に浮かぶ。
「じゃあな」剛大の大きな手が文太の頭にのびる
その瞬間だった 剛大の身体が真っ二つに斬れたのは
驚いたのは妖魔師
「なんだと」
「さすがに、馬鹿力だな」
吹き飛ばされた木々の方から声がした。
「貴様、俺の術にかかってなかったのか?」
「ギリギリ解いたのさ」
「その瞬間、同時に、斬られた本人すら気づかぬ見事な刀さばきで奴を叩き斬ったのか 」
妖魔師は歯を食いしばった。
「真堂丸」
「兄貴ー」
道来はホッと胸をなでおろした。
「さてケリをつけるぞ」
真堂丸は刀を妖魔師に向ける
「ハッハッハッハッハ さすがと言ったところか だが、俺を剛大ごときと一緒にされては困る」
白装束を脱いだ 妖魔師の身体には、全身不気味な目の刺青が彫ってあった。
先程までは装束で見えなかったが、よく見ると顔の至るところにも目が彫ってある。
それは異様で不気味な姿
「貴様を殺し、我こそ最強をしらしめてやる」
二人は向き合った。
「真堂丸、気をつけろ、あいつの良い噂はきかないぞ」道来は叫んだ
無事に終わってください。
僕には祈ることしかできなかった。
ただただ何かに祈った
歯車はこの時すでにズレていたのだろうか?
僕達はこの闘いの最中
恐ろしい光景を目にすることになることを、まだ誰も知らないでいた。
誰しもが心のどこかで真堂丸の確実な勝利をどこか 信じていたのだ。
そう祈ってる僕ですらも、心の何処かでは真堂丸の強さ勝利を確信していたのだった。
負けるはずがない、どこかで そんな気持ちが 僕をおおっていた。
忘れていたのだ 命をかけた闘いに絶対などなかったことを・・・
そう、これから見えるその光景は、僕達の油断が見せた絶望の光景だったのだ。
つづく




