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ログ。  作者: 前野グレ。
1/1

プロローグ:

*この作品には残虐性を伴う表現が含まれます。あらかじめご了承下さい。*

真っ暗だ。

ここはどこだろう。

部屋の中が暗すぎて全く何も見えない。

後頭部がズキズキと痛む。

首元はカッターシャツが何かで濡れてべっとりしているようだ。

オレは首元を右手でぬぐった。

部屋が暗くてよく見えないが、液体は水の様にサラサラしておらず、指でこすると次第にすべりが悪くなる。

どうやらこの液体は血液のようだ。

いつまでたっても引くことのない、じぐじぐと痛む後頭部に首もとの血液…どうやらオレは何かで殴打されて気を失ったらしい。


この部屋で意識を戻してどれぐらい経っただろうか?

次第に目が慣れてきたのか、部屋の様子がうっすらと見えてくる。

じぐじぐ、ずきずきと痛む後頭部をおさえて何とか上半身を起き上がらせる。

そして何とか少しだけ動く首と眼球を駆使して何とか自分の置かれているこの状況を理解するための材料を探し始める。


この真っ暗な部屋は窓が無い。

明かりも無い。

だからこんなにも真っ暗なのか?

携帯電話の時計は14時を指している。

世間一般的には「昼の2時」を指す時間だ。

それなのにこの部屋は真っ暗だ。

まるで外の世界と遮断するかの様に。

オレはほかに何か無いのか部屋を見回してみた。

あと、この部屋の中にあるのはパイプフレームでできた薄いマットを敷いたベッド。

しかし、ベッドは手を当てただけでギシギシと不愉快な音を立てる。

パイプのフレームは触るとたまに指が引っ掛かる。

錆びているのか?

お世辞にも良いベッドとは言えない。

さて、部屋の広さは5畳ぐらいだろうか?

天井は…とても低い。

178cmのオレが立ったら頭がつくかつかないかぐらいの高さじゃないのか?

ベッドに占領された部屋…というよりはベッド以外に置くものが必要ないといった感じだ。


そういえば部屋と呼ぶのに必要不可欠なものが無い。

そう、ドアだ。

四面、床、天井、どこを見てもドアらしきものは無い。

では、いったいオレはどうやってここに入ったのだろう?

あれ?もしかして、オレ、閉じ込められたのか?

なぜ?何のために?誰が?


オレは急に怖くなって自分の持ち物を確かめるようにジャケットの内ポケット、ズボンのポケットをさぐった。

しめた、携帯を持っている。

しかし電波状況が悪いのか圏外だ。

wifi対応のノートパソコンもある。しかしこっちも完全に圏外だ。

オレは携帯を持ちながら何とか電波の届く場所は無いかと部屋中を歩き回った。

すると、ベッドの頭の方向を背にして半歩ぐらいの地面すれすれのところにかろうじて

電波が1本だけ立つ場所を見つけた。

携帯画面の中で頼りなげに短く立った一本の電波が今のオレにとっては命綱だ。

電波が落ちないようにそろっと座り、横たわり、寝そべるようにしてその場に身を置いた。

傍から見たら相当滑稽な格好をしているだろう。

だが、オレは今そんなことにかまっている余裕は無い。

必死に電波が切れないように角度を気をつけながら数字キーを押していく。

電話をかけるためだ。

誰かに電話をかけてGPS頼りに助けに来てもらえばいい。

オレは携帯電話の中の電話帳を開いた。


・・・。

おかしい、おそらく自分の携帯だろうに電話帳の名前に一人も心当たりが無い。

この携帯に入っている電話帳は一体誰達なんだ?

誰に連絡してどうやって助けを求めたらいい?


その時、オレはある話しを思い出した。

富士の樹海に面白半分で入ったら迷って出られなくなってしまったので、

2ちゃんねるのオカルト掲示板に、救助を求めるスレッドを立てて、オカルト版の住人に

助けてもらったという与太話だった。

友人はもともとオカルト好きで、2ちゃんねるでは固定ハンドルを持つどっぶりな住人だった。

そして、会うたび会うたび、オカルト版の住人はみんな優しい、団結力がある。と

やや興奮気味にオレにいつも話してくるのだ。

オレはいつも毎度の事だと思って「へえ~」ぐらいにしか思っていなかった。

しかし、オレには今、電波が1本しか立たない携帯電話とwifiもつながらない、

この場には役立たずなノートパソコンしかない。

内心バカバカしいと思いつつも、出来ることは一つだけだった。

オレは携帯のインターネットブラウザを立ち上げ、2ちゃんねるにアクセスした。

オカルト版に行き、藁をもつかむ思いでスレッドを立てた。


「謎の部屋に閉じ込められている。助けてくれ」


スレッドを立てたと同時にレスが入ってくる。


2 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/08(火) 01:31:19.55 ID:*********

2ゲト。


3 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/08(火) 01:31:19.55 ID:*********

釣り乙。


4 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/08(火) 01:32:20.51 ID:*********

釣り乙。


5 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/08(火) 01:32:50.11 ID:*********

マジならトリップつけろ。話しはそれからだ。



6 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/08(火) 01:33:11.21 ID:*********

とりあえず話しだけ聞いてやる。


クソ…なんでこいつら上から目線なんだ。

しかし今はこれしか方法が無い。


7 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/08(火) 01:33:33.00 ID:*********

>1です。暗い部屋に閉じ込められている。脱出したいんだけど方法が分からない。どうしたら信じてもらえる?


オレは祈るような気持ちで書き込んだ。


8 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/08(火) 01:34:02.34 ID:*********

IDのメモを持ってここのレンタルサーバーに画像うpすれ。

Http://www.*******


どうやらオレの書き込んでいる2ちゃんねるのIDのメモを書いて持って写真を撮れということらしい。

しかし困った。ここには紙も鉛筆も何も無い。

何か無いかと辺りを見回して目に入るのはベッドのみ。


「そうだ…」


良い事を思いついた。

このベッドのシーツを紙代わりに、

後頭部から流れている自分の血をペンの代わりに書けばいい。

常人から見れば酷く滑稽だろう。

だが、今のオレにはこれしか方法が無かった。

今自分とつながっているのはこの、いつ切れるともわからないわずかな電波を頼りに2chを見ている住人だけ。

信じてもらうには、おかしな奴だと思われようと、とにかくできる限りの範囲で行動に移す他無かった。


そう考えながらオレは即行動に移した。

ベッドからシーツを剥ぎ取り、自分の首すじから血液をぬぐい取りながら人差し指で文字を書いていく。

IDを書き終わり、それを携帯カメラで写真を撮り、指定されたレンタルサーバーへ画像をアップした。


それをするやいなやスレッドの住人たちが騒ぎ始める。


「本物キターーーーーー(・∀・)!!!!!」

「マジ祭りの悪寒」

「血文字ってマジかよwwwww」

「誰かVIPにリンク貼れ!!」

「2ch探偵団出動wwww」


先ほどまでの閑散とした反応とうって変わって急にスレッド内が賑わしくなった。

オレが最初に立てたスレッドはわずか1時間で1000レスを越えて消費してしまい、オカルト版住人の手によって2スレッド目が立てられた。


オレが藁をもすがる気持ちで即興で立てたスレッドはいつの間にか既に2スレッド目に突入していた。

どうやらオカルト版の住人の誰かがVIP版にもスレッドを立てたらしく、VIPPERたちが流れ込み、1スレッド1時間程度で消費されるモンスタースレッドになっていた。



オレはオカルト版の住人に言われるがまま右往左往しながらこなしていった。



携帯の位置情報。

これをスレッドの住人の要望でレスをした。

東京都新宿区。

今のオレには携帯の示す位置情報をそのままスレッドに書き込むことしか出来ない。



そのときだった。

固定ハンドル名「テロ」と名乗るものが現れる。


723 名前:テロ:2011/11/08(火) 02:45.15 ID:*********

お前の居る場所が分かった。今から指示を出すからその様に脱出しろ。


固定ハンドル「テロ」と名乗る人物がスレッドに現れてからスレッドは一気にレス数が加速する。

「やっべーー!!!ネ申降臨!!!!」

「ネ申キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」

あっという間に2スレ目を消費してしまった。



固定ハンドル「テロ」と名乗る者はオレに向けていくつも指示を出してくる。





33 名前:テロ:2011/11/08(火) 02:59.11 ID:*********

部屋の天井に通気口が無いか?至急確認しろ。



オレはテロと名乗る人物の指示通りに部屋の天井を携帯のバックライトで照らしながらくまなく調べた。

そして通気口らしき30cm四方の正方形の鉄格子を見つける。


テロと名乗る人物に言うとおり通気口があった事をレスする。

とたんにスレッド内は盛り上がり、尋常じゃない程のレス数で埋め尽くされ、またもあっという間にスレッドが消費される。

有志によって素早く次スレが立てられる。



ばかばかしいと思うかもしれないが、今のオレには自分の右手に握られた携帯と、

2ちゃんねるのスレッド伝いに流れてくる固定ハンドル「テロ」と名乗る人物にすがるしかなかった。


661 名前:テロ:2011/11/08(火) 02:51.25 ID:*********

通気口の作りは脆い。右の取っ手から簡単に外れるはずだ。やってみろ。



オレは「テロ」と名乗る人物の言うとおり右の取っ手に手をかけ、思いっきり押したり引いたりした。

通気口の鉄格子は拍子抜けするほど簡単に取れてしまった。


オレはベッドを足台代わりにして通気口の中に身を投じる。



決してきれいな状態では無い。

心なしかカビ臭く、ホコリが溜まっているのか衣服が見る見る間に汚れていく。

しかし今のオレにはそれにかまっている余裕は無い。

自分の服がどれだけ汚れようとここから脱出したい。


その一心で這いながら通気口の出口を目指す。


そうだ、「テロ」さんにお礼を言わなければ。

そう思って携帯をポケットから取り出すが、圏外。おまけに電池は残り30%という極地になっていた。


まずい、早くこの通気口を這って何とかどこかに出なければ。

そして謎の密室から無事脱出できた事をスレッドの住人たちに報告しなければ。


気持ちは焦るばかりだった。



そして、ついに通気口の向こう側に灯りが見えてくる。

「助かった!!!!」

心なしか這うスピードも上がる。

オレは目の前に見える光を目指して無我夢中に這った。

そしてようやく出口と思われる場所に到着する。

鉄格子を右足で思い切り蹴飛ばすと、そのまま勢い良く足から狭苦しい通気口から身体を飛び立たせる。



しかし、それと同時にまぶしい光を幾度となく浴びせられる。

キャンプの夜間用ライトだろうか?

まぶしくて目をあけていられない。

今まで真っ暗闇に身を置いていたためか目がなれず、いきなり向けられたライトの光に目が耐えられずに思わず腕で顔全体を覆う。





それがいけなかった。

オレは再び後頭部を殴打され、右肩に注射のようなものを刺される感覚を受ける。


血管の中に冷たい液体が注がれていくのをやけにリアルに感じながらオレは徐々に気を失って行った。


>1

すなわち、スレ主行方不明のまま、短時間で13スレッドを消費した異常な一夜の出来事。



その後、>1の捜索を試みる者、

固定ハンドル「テロ」の身元を割り出そうとする者、

考査サイトを立ち上げる者。

様々現れるが結局>1の消息は不明のまま。

その後スレッドから「テロ」と名乗る固定ハンドル名も消える。



これは後に「2011オカルト版事件」としてオカルト版を越えて2ちゃんねる内で「伝説のスレッド」として語り継がれる事になる。


この、2ちゃんねる2011オカルト版事件の真相が明らかにされるのは、まだまだずっと先のこと。




結構長編になると思いますが、週一回ぐらいのペースでまったり書いていきますので、お暇つぶしにぜひお付き合い下さい。

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