川にいる
ずいぶん昔の話だ。
俺が小学生の頃だから、もう20年は経つ。
当時俺は家が田舎にあって、今いるようなコンクリートジャングルは、存在すら知らない。そんな感じの頃だった。
いい時代だったよ。
山や田んぼや畑と言った、自然の中で、今はいない友人たちと一緒に遊んでいたんだ。
ある時、淵が沼と言われている場所を通りかかった時、沼の方から、おーい、おーーい。って声が聞こえてきたんだ。
最初は空耳だろうと思ったんだが、その沼を通る度に、その声が聞こえる。
一番親しかったやつと一緒にその沼の前を通ってみたんだが、その声は俺にだけ聞こえていたんだ。
なんか不気味になって、俺はその沼の前を通らなくなったんだよ。
でもな、なんか気になるじゃん。だから俺はその沼に向かって聞いてみたんだ。どうしたんですかってな。
したら、一瞬黙って、沼が泡立ってきたんだ。
中から出てきたのは、大河童だったんだ。ほら、頭に皿がついている妖怪さ。
でも、不思議と怖くは無かったんだな。
子供だったからって言うよりかは、別にそこまで怖い存在じゃ無いって言う感じだな。
その河童は、眠っている間にここまで時間が経ってしまったと言って、仲間をどこにいるかを知らないかって聞いてくるんだ。
でもそんなこと、俺は知らなかったんだ。
そう言うとな、大河童はさみしそうな顔をして、そうかって言ったんだ。
それから俺にあることを教えてくれたんだ。
もうすぐ大水がきて、この村は全滅するだろう。でも今なら逃げることができる。そんな感じの話だ。
俺はすぐに家に帰って、親にそのことを話したんだ。ちょうどそこにいた、村の長老が、俺の話を聞いて慌てふためき、すぐに村の集会所で、緊急の寄り合いを開いて、俺が話したことそのままを言ったんだ。
それから高台へ移動することを決めると、村の周りにある山を切り開いて、 そこに家財道具を押し込め、家を作った。いや、街を作ったんだ。
それから1週間後に、台風がきた。
史上最強の台風で、猛烈で超大型な台風が、これまで住んでいたところを全て水で満たしてしまったんだ。
あの河童はどこに行ったのかは知らないけど、あの人がいなければ、きっと俺たちは死んでただろうな。
さて、俺の話はこれだけだ。
次の話を仕入れるまで、静かに待っとけよ。