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夏の墓標。
「美味しかった。」
少女の言葉に私は微笑む。
「誰かと食べる食卓が、こんなに美味しいなんて…。」
私は言葉を続けることができなかった。
ランプの灯りに照らされた瞳。
ただ黙って、私を見つめていた。
…私は何故か、この少女には全てを知ってもらいたいと思った。
思いつくまま、途切れ途切れに思い出を話す。
少女は、ただ黙って頷いてくれた。
夜も更けた頃。
私は少女へベッドを勧め、ソファに横になる。
目を閉じる。
様々な思い出が浮かんでは消える。
いつのまにか眠りに落ちたようだ。
深く、深く、底のない深い闇の中へ。
むせかえるような緑に囲まれて、少女は立っていた。
新しい墓標の前。
紫色の花を供え、少女は静かに目を閉じる。
「私の名はエリナ。長い旅の途中。」
少女の頬に流れる一雫。
「また、旅を続けるわ。」
柔らかい風が少女の言葉を包み込む。
「さようなら。あなたには奥さんと息子さんがいるものね。」
歩き始めた少女の影を、夏の日差しが地面に映し出していた。




