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先読みスキルを手に入れた俺は、最初ですべてを解決しちゃいます  作者: シュガー
ルナ編

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第四話 最悪な未来

翌日

俺は女の子を、自室とは別室のベッドに寝かせていた。

目が覚めるまでの間、俺は通常通り店の営業をしていた。

相当疲れていたのだろう、夕方の閉店時間ごろにようやく起きた。

ベッドから起き上がった少女は、ここはどこ、とでも言いたげにきょろきょろとしている。

「ようやく起きたかい。ここは俺の店兼住居の客室だよ」

俺の声に驚いたのか、少女は警戒する。

「ごめん、驚かせる気はなかったんだ。ただあのまま放ってはおけなくてね。お腹すいただろ、これを食べるといい」

そう言って俺は少女に食事を渡す。

最初は受け取らなかったが、やはりお腹がすいていたのか渋々といった様子で受け取った。

一口食べると、すごい勢いで食べていく。

「それを食べたら湯船に入るといい。お湯はもうはってあるよ。さっぱりしたら少し休んでから話をしようか」

俺は湯船の場所を教えた後、部屋を出た。

もしかしたら逃げられる可能性も考えたが、今の様子だと逃げることはないだろう。

そう思い、残っていた閉店作業を開始した。



休んだ少女と顔を合わせる。

昨日までの薄汚れた体は、お湯の力で綺麗になったし、表情は若干だが和らいだ。

「さて、休んだことだし、話をさせてもらうね。」

そう言うと少女の顔が幾分かこわばる。

「…ご家族や頼れる人は」

少女は悲しい顔で首を横に振る。

「そうか…」

ということは天涯孤独の身。

予想が正しければ彼女の生い立ちはともかく、少し前までは辛い経験をしたはずだ。

でなければ、あんなぼろぼろの服でいたりしない。長い間洗濯もされていないような服だった。

考えられることは大方予想がつく。彼女がおそらく抱えているであろう秘密も関係しているはずだ。

頼れる者がいるならその人を探し引き渡す予定だったが…

俺は少しの間をおいて、切り出した。

「…ここで住み込みで働かないか」

沈黙が支配する。少女はまさかそんなことを言われるとは思っていなかったようで困惑の表情を浮かべる。

俺はそれ以上は言わなかった。少女から何か言うまで待っていた。

「どうして…」

少女が重い口を開いた。

「ちょうど給仕を探していたんだ。こんなかわいい子がいると店が華やぐからね」

少し茶化しが入ってしまったが、新しい従業員が欲しいのは本当だった。

それにこの世界では年齢による就業の制限はない。

少女よりも低い年齢で働いている子も珍しくはない。

「…わかっているんでしょ。私のこと」

彼女の言わんとしていることはわかっていた。

「…なんのことかわからないな。安心しろ給仕をするなら君はもう家族だ。どんな奴からも守ってやる。まぁ君の力なら大概の危機は払いのけるだろうけど」

そうおそらく彼女は混血種と呼ばれる人間と魔族のハーフだ。

この世界には魔族がいる。漫画に出てくるイメージと大差なく、様々な形態を持つ魔族だが、人間形態も存在する。

弱い魔族なら角や羽が見えるらしいが、力が強い個体だと完全に人間に擬態できる。

ちなみに見破る方法自体は存在し、教会にある強めの聖水をかけると苦しむらしいのだが、これが気軽に買える値段ではない。

稀に、悪魔が人間に恋をし、子をなすことがある。

その子が混血種だ。

混血種はかなりの希少種で見た目は完全に人間で、教会の聖水をかけても全く意味がない。

見た目上特徴があるわけではなく、見た目の判別は不可能だ。

ただ、普通の人間と違うのが悪魔の力を一部受け継いでしまうようだ。

おそらく昨日見たこの少女の怪力は受け継いだ力の一部だろう。

すごいことだが、混血種には様々な弊害がある。

まず、法律では守られない。混血種は魔族の血を引いているということで法律が適用されない。

普段は人間として過ごすことはできるが、ひとたび混血種とわかってしまえば法律が適用されないことをいい事に様々な犯罪に巻き込まれる。

空き巣や強盗などを仕掛けられ被害が出ても憲兵、前の世界で言う警察は一切動いてくれない。

かといって、自衛して相手を怪我でもさせようものなら指名手配され、軽犯罪レベルでも極刑レベルの刑罰を与えられる。

また、それを利用して奴隷商が混血種を捕まえようとする。希少種ということで富豪にかなりの大金で買ってもらえるらしい。

受け継いだ力を使って難を逃れる者が多いようだが。

最近は一瞬で拘束して気絶、その後電撃拷問器具に早変わりのアイテムが奴隷商の中で流通しているようで、捕獲はしやすくなったらしい。

彼女を取り巻く環境は危うい。

このまま1人でいさせてはいけないと俺の心がそう叫んでいる。

せめて、もう少し大人になるまでは俺が見ていようと…。

何かを言いたげな、でも迷っているようなそんな表情を少女は浮かべている。

「…いろいろご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」

そう言って頭を下げた。

「頭を上げて、こちらよろしくね。じゃ明日から早速教えていくね」

「はい!」

「それとごめん。名前をまだ聞いてなかったね」

「…ルナです」

「よろしくルナ。俺はルークだ」

「はい。ルークさんよろしくお願いします。」

新しい従業員をゲットしたぞ。



さらに翌日

開店30分前のお店に俺とルナはいた。

この時間で基本的な接客技術を教えていくつもりだ。

物覚えがよいのもあるだろうが、所作がもともと綺麗である。

また、指導していてわかったがある程度の教育を受けていることがわかった。

この世界は電卓やパソコンがないので会計計算は暗算で行う。会計計算も完璧だ。

なんかもう優秀の片鱗を見せ始めているルナ。

薬の位置は1回教えたが、流石に種類があるのでそこは俺がやろうと思う。

基本を教えていたらもう5分前だ。

教えるのをそこそこに開店準備に入る。

そして今日も営業が始まる。



ゆーしゅーだったーこの娘。

初日の営業終わり、初めに抱いた感想だった。

会計も完璧、薬の配置も完璧に覚えてたし、かわいい笑顔で接客して満点。

もう俺いらなくねってなるほどには働いてくれた。

んー文句なし!雇ってよかった。

と感動しながら、閉店作業を続けていると

「おーっす、なにやらかわいい新人入ったって」

アクノさんが来店した。

流石顔が利くアクノさんだ、もうルナのことが耳に入ったか。

「お疲れ様です。アクノさん、少々お待ちを。ルナちょっと来てほしい」

ルナを呼ぶ。

「アクノさん、今日から働き始めたルナです。」

「ルナです。よろしくお願いします」

接客の時と同じかわいい笑顔でぺこりとお辞儀した。

「おーかわいいね。俺はアクノだ、ルークとは長くはないがそこそこの付き合いだ。何かあったら俺のところに相談しに来い」

「はい、ありがとうございます」

そう話しているとイマドさんやウルクさんも訪ねてきた。

やはりお目当てはうちの新入りだ。

軽く5人で談笑してあと3人は帰っていった。

初めて聞いたことだが、出身はユキタ地方らしい。

北の地方にある雪が降る町だ。そこに住む人は特徴として肌が白く、目が赤いらしい。

ウルクさんがその地方に友達がいるらしく、ルナの赤い目を見て

出身を言い当てた。

ルナも隠す気はないらしく、そのまま肯定した。

新しい事実に驚きながらも、俺たちは閉店作業を完了させたのだった。



そこからの5日間は何事もなく過ぎていった。

最初は物珍しそうにしていた常連さんも今ではすっかりルナを一員として迎え入れている。

最初に挨拶されるのがルナになるほどだ。俺の存在って…

お店の方も助かっていて大変心強い。

ここ最近はルナに接客を覚えさせようとすべての接客はルナに任せっきりにしていたが

ここまでくればもう大丈夫だろう。

俺はルナに1日休暇を与え、店番をしていた。

ルナには少ないながら5日間分の給料を渡している。

うちは支払いは融通が利くのだ。

久々の感覚に新鮮な気持ちになりながらも接客をしていく

「こんにちは」

いつもの常連のおばあさんが来店する。

「こんにちは、いつものですよね」

「ええ、ありがとう。あら、あの子は今日は」

「はい、こちらがいつものです。ルナは今日はお休みです」

そういいながら、お会計をする。

この人とルナは最近は特に仲が良く孫とおばあちゃんみたいな関係になりつつある。

「あら、残念だわ~」

おつりを渡す際に手が触れた。

スキルを発動する。最近はルナにやってもらっていたからスキルを発動するのも久々だ。



情景が入り込む。

「あの子がいなくなったばかりなのに、火事まで…かわいそうに」

衝撃の未来の風景だ。

俺の店が火事で消し炭になっていた。

焦げた看板に薬瓶の破片、そしてその傍らにルナがいなかった。

情景はそこで終わる



「ありがとうございました」

常連のおばあさんは店を出た。

スキルで見た情景、まぁルナ関係だろう。

俺は今のところ誰かに店を消し炭にされるほど恨みを買うようなことはしていない。

危険は想定していたが、ここまで早いとは思わなかった

常連さんでは結果しか見えないが、この未来があるとわかるだけでもかなりの収穫だ。

後は片っ端からスキルを発動していって情報を集めていこう。

そう思っていた時だった。

「…」

明らかに怪しい男が来店した。

フードを被った男だ。

男は来店早々、商品棚を見るよりも店内を見まわしているように見える。

…いやこれって

多分ルナ関係だろう…常連さんで情報を集めるつもりがいきなり大物を引いたようだ。

フードの男は今度はこちらを品定めするように見ている。

俺はそんなフードの男に一芝居打つことにした。

「お客様大丈夫ですか、お顔がすぐれないようですが」

そう言って男に駆け寄る。

「なんでもねぇよ、こっちくんな」

無理やり男の手を取る。

手は特に手袋や装備品がないので素手だ。つまりスキルを発動できる。

「そんなことはできません、そのお顔は今すぐ薬を処方するべきです」

「うるせぇって言ってんだろうが!」

そう言って男は俺の手を払いのける。

もう偵察は無理だと悟ったのか、そのままお店を出ていった。

ナイス演技だった。必要な情報は手に入ったがこれは随分と胸糞悪いものが出た。



最悪な未来だった

あの男は奴隷商のピーグの斥候だった。

奴隷商ピーグは新興の奴隷商で主に混血種を中心に商売をしている。

すでに何人かの混血種を売りさばいているとうわさに聞いたことがある。

そんなピーグは偶然にも混血種をただで手に入れたようだ。それがルナだ。

道中、最新の首輪でつないでいたルナがその力で首輪を破壊し、ルナが逃走。

混血種1人につき、向こう20年は遊んで暮らせるお金がもらえるため、ピーグはあきらめることはなくルナの捜索を続けた。

そして、ようやくルナを見つける。

ルナは薬屋の店主の元に転がり込んで暮らしていた。

これを知りピーグは好機と見た。

見たところ店主は普通の優男だ。

ルナは優しい、言い換えれば甘っちょろい部分があるため世話になった店主を人質にすれば大した手間もなく戻ってくるはずだと。

そして薬屋を偵察したところ普通の薬屋であることを確認し、夜ルナに手紙を送った。

それをみたルナはその日のうちに薬屋を出て、ピーグの前に戻ってきた。そして言ったのだ。

「あの人には何もしないで」と。

そして自嘲気味に

「私がいなければ、全部うまくいく」とも。

ピーグは、それは約束する。もうあそこに用はないから何もしないと。

ルナはどこかあきらめたような表情でお願いしますと小さくつぶやいた。

だが、翌日の夜にその店に火を放った。

火はあっという間に燃え移り、お店のすべてを燃やし尽くした。

燃やした理由は、ただの腹いせ。

その事実はルナには伏せられている。

何かしたと知ったら今度こそ逃げ切られてしまうかもしれない。

首輪は装着したものを気絶させ、そのまま電撃拷問ができるようになるアイテムだが力には弱い。

全身を拘束して手足を動かせないようにすることもできるが、逃げる意思があれば、気の緩みで拘束が弱くなった時にまた破壊される可能性がある。

だが、人質がいれば逃げる意思はなくなる。ならばこちらの方がよい。優しさはどんな鎖よりも強い。

そしてルナは抵抗なく、お客様の元へ連れていかれた。

その顔に笑顔はもうなかった。




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