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先読みスキルを手に入れた俺は、最初ですべてを解決しちゃいます  作者: シュガー
ルナ編

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2/12

第一話 同業者トラブルを事前に解決する

――備えは、すでに終わっていた


薬草を採取してから2週間後

アインスで伝染病が流行った

伝染病といっても、日本では風邪と変わらないが、より高熱にさらされやすい。

この世界においては、この伝染病は比較的重い病気に分類される



俺は薬屋を営んでいる。

この前採取した薬草で、薬をあらかじめ作っておいた。

おかげでお店の前は朝から大行列だ。

列は静で怒号も、割り込みもない。

この町の住民は総じて行儀がいい。

薬を求めてお客さんが来る。



開店してまだ半年だが、過去最多の来客だ。

外を確認してみるが、見える分だけでカウントすると五十人ほど。

後は建物に隠れてしまって見えない。



お客さんの注文はほぼ同じ薬である。

この病は自然治癒し、5日程あれば完治する。

だが、薬を使えば翌日ごろには治る。



働かなければ収入が途絶えるこの世界では、その差は致命的だ。

前の世界程、社会福祉が手厚くないから、収入の減少はそのまま生活に直結する。

おそらく、それが理由でうちの店に薬を求めてきたのだろうが、人が多すぎる。


「いらっしゃいませ」

「はい、こちらですね」

「ありがとうございました」

同じ言葉をひたすら繰り返す。

これはいつになったらさばけるのだろうか。



時々、お客さんの手に触れた瞬間、視界が切り替わる。

そこにあるのは、相手の目に映る世界だ。

触れた客の視界には、店の外は映らなかった。

皆、薬を受け取ることしか考えていない。

その先の列を意識している者はいなかった。



おそらく、薬を買ってすぐ帰宅するから列の終わりを確認できないのだろう。

そうなると、他の元気な街の人に触れられれば視えるが、あいにく列を捌くので手一杯だ。

これはお昼ごはんも食べに行けなさそうだ。

アインスには、ここ以外の薬屋ももちろんあるが、どこも同じ状態だ。

お昼ご飯をあきらめて、俺は接客に徹した。



あれだけの長蛇の列も、五時間後には流石に引けていった

事前に人が大量に来る未来を視えていたとは言え、あそこまで列が長くなり、忙しくなるとは思っていなかった。

店を閉め、椅子に腰を落とす。


「あーしんどかった…!でも売れたぞ!」

つい言葉が漏れる。

今日に関しては、「いらっしゃいませ」、「はい、こちらですね」、「ありがとうございました」の言葉しか話していない気がする。



完全に機械になってしまっていた。

だが、売り上げは過去最高を記録していた。

今日一日で今月の家賃は賄えるし、すでに先月の3倍の売り上げだ。

売り上げ計算を終え、ほっと一息をついていると扉を開く者がいた。



「おっ、ルーク、聞いたぜそっちも大盛況だってな」

同じ薬屋仲間でお世話になっているアクノさんだ。

「そうでしたが、大変でしたよー。お昼も抜きできつかったですよ」

「はは、ならこれから飲み行かないか。薬草の礼もしたいし、他の奴にも声かけてんだよ」

断る理由はなかった。




アインスは大きめな町ということもあって、飲食店が多く並んでいる。

薬屋同士で飲む際はここ『スジュウ』でいつも飲んでいる。



お店につくと他の薬屋仲間のイマドさん、ウルクさんの顔が見えた。

軽めの挨拶をすませ、席に着き注文する。

『ピーエア』という、前の世界のビールというかほぼ同じものが来る。

前の世界でも変わらないが、全員分の飲み物がきたら乾杯をして、一気に呷る。



のどを抜ける炭酸が今日の疲れを流してくれる。

「ぷはっ!それにしても、ルークには助けられたぜ。あれがなかったら昼には終わってたな」

イマドさんが言った。

俺は軽く手を振った。

「あの量なら、独り占めする意味もないですし」



本当の理由は、別にある。

俺には1つスキルがある。

未来を断片的に視る能力だ。

万能じゃない。

自分自身には使えない。

常に使えるわけではない。

俺はそのスキルで事前に伝染病が来ることを知り、薬草を集めていた。



その時視えたものは、伝染病が流行ること、想定以上の患者数。

今いる面子と他の薬屋の在庫でもすべてをまかなうことができない、ということだ。

俺はその未来を視たとき、アインボワに向かい大量に薬草を仕入れた。



また、別の理由がある

このスキルは使い勝手が少々悪いところがあり常に発動できるわけではない。

また、自分自身に対しては使用できないため、使用するなら誰かに対して使用する必要がある。

それ以外にも不便なところはあるのだが…

アインボワに向かうと決めた後に、アクノさんに対してスキルを使った。



その未来は、俺一人では薬の生産が追い付かないこと。

作ったとて、お客さんすべてに販売するのにかなり時間がかかること。

そして、薬の在庫が多いためそれを聞きつけた人が押し寄せ

今日の比にならないほどの行列ができ、近隣住民に迷惑をかけること。

最後にアクノさんから妬まれ今の面子の仲に亀裂が入ることだった。



視た未来では、今日、アクノさんのお店では早々に薬が切れてしまい、他の薬屋の様子を見ている最中、俺の店の盛況ぶりを目撃する。

流石に営業中に突入することはなかったが、営業終了と同時に突撃されてしまい、いろいろ詰問されてしまう。

アクノさんは普段は気のいいおじさんなんだが、ところどころで人を妬むところがある。



一応、伝染病の予兆みたいなものはあり、アクノさんも準備していたのだが予想以上の人の多さですぐに完売。

なぜそんなに準備していたのかとか、教えてくれなかったのかとか、色々問答する羽目になる

他の2人については、読み切れなかった自分が悪いと思っているようで特に何もなかった。

それから、アクノさんの態度がとげとげしくなって毎回会うたびに胃が痛くなるという未来だ。



そういうところもあるが、俺はアクノさんは好きだ

もちろん変な意味ではない。嫉妬深いところもあるし、直情的なところもあるが、どうしても嫌いになれないところがあるのだ

気に入った相手には割と尽くすようで俺が薬屋になるときに色々世話になった。

そのお礼も込めてこの世界の季節の贈り物とかはしている。



その件に関しては、俺の配慮も足りなかったように思う。

せめて、何かきっかけみたいなものは伝えてやれればよかったかなと

流石にスキル使って未来を視ましたなんて言うと、後々厄介ごとになるのは目に見えているし、前の世界の漫画や小説ではいいように利用されているのが大体だ。

物語にはヒーローがいて助けてくれるが、現実にはヒーローはいない。なら、視える厄介ごとは避けるべきだ。

そうして俺は、自分の分に加えて3人分の薬草を採取した。

幸いだったのが、大量に咲いており、その場所にさえ行けばあとは採取するだけだったので楽だったことだろう。



採取後、一旦はすべてを家に持ち帰り、伝染病の予兆、先行で罹患した人が出始めた段階で3人に分けた。

すぐに分けなかったのは、その時点では予兆すらないため、材料が余ることを危惧して断られるからだ。

伝染病は周期ごとにくるわけではない。ましてや薬草もそう長くも持たない。

タイミングを見計らってうまく渡すことができた。

おかげで、物事はうまく回った。薬屋仲間とギスギスすることはなく、在庫が多い薬屋が分散したことでより早く人々に行きわたったし。

今日の忙しさも視る前よりはずっと楽な状態だった。

近所の人に苦情を入れられることも…実は睨まれたが、まぁよし。

今回の件はこれでうまく立ち回れただろう。

――これでいい。



俺はさらにピーエアを呷ると、昔の仕事で疲れた体をビールで癒していた社会人人生を思い出しながら皆と談笑した

「そういえばよ、きいたか、夜のアインボワの話」

ウルクが酒を傾けながら言った。

「あれか、夜の森に最近現れた赤い目の魔物のことだろ?」

イマドが続ける

「ああ、夜になると赤い目の魔物が現れて他の魔物をやっちまうんだろ。やった魔物をそのまま持ち帰るらしいじゃねえか」

随分と好戦的な魔物だ

「しかも、こどもくらいの大きさの魔物らしい。ギルドの冒険者が夜の仕事でたまたまその影を見たんだとよ。暗くてはっきりと見たわけじゃないようだが」

話を聞きながら、例の魔物について考えていた。なんだか異様に気になる。

だが、夜のアインボワには行きたくない。

流石に明日の営業があるので、何かあったら開店できないだろうし。

無茶をする理由はない。

ないんだが…。




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