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みさきの噂

作者: 戸川涼一朗
掲載日:2025/10/23

誰もが一度は耳にしたことのある「学校の七不思議」。

それを確かめようとした少女たちに訪れた、

“信じることの代償”を描いたホラー作品です。

何気ない好奇心が、取り返しのつかない夜へと変わっていく――。

私たちは、学校に伝わる噂を確かめるために――

夜の学校へと足を踏み入れた。


「ねぇ……やっぱりやめない?」

怖くなった私は、震える声でそう呟いた。


「何言ってるのよ。前々から計画してたのに今さら帰れないでしょ」

そう言って、みさきは笑った。

あみも「そうだよ!楽しみにしてたのに」と明るく言って、

ふたりは迷うことなく校舎の中へと入っていった。


夜の学校は、昼間とはまるで別の顔をしていた。

ドアの隙間から吹き抜ける風が、ヒュー……と鳴る。

その音さえ、私には何かの“声”のように聞こえた。


「最初はどこに行くの?」

私が尋ねると、みさきは口角を上げて答えた。

「最初はやっぱり――二階の踊り場の鏡でしょ」


その鏡には“未来を映す”不思議な力があると言われていた。

夜の七時を過ぎてから覗くと、自分の未来の姿が見えるという。


私たちは階段を上がり、その鏡の前に立った。

あみが言った。「ねぇ、これじゃない?不思議な鏡」

「みんなで覗こうよ」


三人で鏡を覗き込んだ。

けれど――何も映らなかった。

どれだけ見つめても、そこにあるのは私たちの顔だけ。


その後、他の噂も確かめてみたけれど、どれも何も起きなかった。

気味の悪さだけを残して、私たちは学校を後にした。


「みさき、大丈夫?」

校門を出ると、みさきはどこか元気がなかった。

「うん……ちょっと疲れちゃって」

そう言って微笑むと、「また明日、学校で話そ」と言って帰っていった。


しかし――翌日、みさきは学校に来なかった。


心配になった私とあみは、放課後、みさきの家へ向かった。

インターホンを押すと、しばらくしてドアが開き、

青ざめた顔のみさきが現れた。


「どうしたの?学校休むなんて珍しいじゃん」

そう声をかけると、みさきは怯えた目で私たちを見つめ、

かすれた声で言った。


「……昨日ね、鏡を見た時、

私だけ――服がボロボロで、まるで焼け焦げてたの」


みさきの手は震えていた。

その指先から、焦げたような匂いがした気がした。


「噂なんだから、信じちゃだめだよ」

そう言って私たちは家を後にした。

けれど次の日も、みさきは学校に現れなかった。


先生に理由を尋ねても、「知らない」と言うばかり。

不安を押えきれず、放課後、再びあみとみさきの家へ行った。


──そこに、家はなかった。


跡形もなく焼け落ち、黒い灰だけが風に舞っていた。

あとから聞いた噂によると、

その家に住む少女が自分で火をつけたのだという。


私はもう、学校の噂を確かめることはやめた。

……そう、みさきの噂も――。


この物語は、単なる怪談ではありません。

誰かの噂を軽い気持ちで確かめた先にある「後悔」と「恐怖」。

見てはいけないものを見たとき、

人はその記憶を消せるのでしょうか。


あなたももし、夜の学校に鏡を見つけたら――

決して、覗かないでください。


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