プロローグ
カクヨムというサイトで同時連載させてもらってます。宜しくお願いいたします
ひどく、耳障りな音だった。
甲高くけたたましいサイレン。
誰かの叫び声、怒鳴り声、泣き声。
乾いたブレーキ音と、何かが軋むような金属の衝突音が、頭の奥に焼きついて離れない。
そして──
「澪先輩!」
心が声を上げた瞬間、まぶたが弾かれるように開いた。
天井のシミを、しばらくのあいだぼんやりと見つめていた。
汗ばんだ額に、ひとすじの髪が張りついている。
寝苦しい朝だった。
また、あの夢だ・・・
ベッドの端で身体を起こすと、すぐ横で猫がこちらを見上げていた。
黒く、灰色の混じった毛並み。まんまるな瞳。
何を思っているのか分からないその目が、ただ静かに僕を映していた。
「……勝手に入ってくんなよ、お前」
そう言っても、この猫は動じない。
まるで、ここが自分の家であるかのように、当然の顔をして隣にいる。
僕はこの猫に名前をつけていない。
というより、関わりたくなかったのかもしれない。
気まぐれで、勝手で、やたらと人懐こいその仕草が──
……彼女に、似ていたから。
今日で、ちょうど二年になる。
彼女が死んでから、二年目の朝。