ニックの終わり 完
「婚約破棄!真実の愛に目覚めた王子の末路」を新たに投稿致しました。
扉が開き20代後半の屈強な男性が入ってきた。王家の血筋の金の髪色をしている。この方が王弟のアルベルト公爵だ。
「廊下まで下品な声が聞こえてきたぞヴェントン侯爵夫人。
スカッシュ伯爵、突然の来訪申し訳ない。今日はあなたに渡す物があって訪問したんだ。そんなに怯えなくていい。不正の資料ではなく、あちらにいるヴェントン侯爵子息の不貞の資料と違法賭博に通っていた資料だ。ヴェントン侯爵にも見て貰おうじゃないか」
「「「「「「‥‥‥‥!!」」」」」」
全員一致で無言になった!さっきまで元気だったオリビアの顔は見る見るうちに顔が青ざめていた。
もちろんニックも。
(はぁ?不貞?違法賭博?‥‥もしかして‥‥あの賭博場が違法だったのか!不貞とはナタリーのことか!)
いち早く回復したヴェントン侯爵とスカッシュ伯爵は一緒に資料を見ている。本当に仲良しなのだ!
「ニックよ‥‥これは本当なんだな?男爵令嬢はお前の子を身籠もっているんだな!お前の金遣いが荒いと思ってたら違法賭博とは‥‥」
「違法賭博だなんて知らなかったんです!でもナタリーが妊娠したって問題ないでしょ!私が次期伯爵になるのですから。ナタリーは第二夫人にすればいいのです」
(あいつら私に違法賭博やらせやがって!許さん!これで私の経歴に傷ついたらどうしてくれるんだ。私が伯爵になったら平民にしてやる!でもナタリーは妊娠していても問題ないだろう。いずれ私の妻になるんだから)
ニックは当たり前のように答えている。常識のないオリビアもわかってしまった。もうニックを庇えないことを。
「ほう?ご子息はこのスカッシュ伯爵家に婿入りのはずだが、私の調べた資料ではそう記載してあるのだがね。どうなのだヴェントン侯爵」
「申し訳ありません。ニックは入婿で次期伯爵にはなりません。この愚息がただ1人で戯言を言ってるだけです」
ヴェントン侯爵は額から沢山の汗を滴り落としながら、アルベルト公爵に答えた。
「ふむ、おかしいな?もう貴族の間では噂が広がってるぞ。そちらにいるヴェントン侯爵夫人が茶会で息子が次期伯爵になると言っていたとね。これは、もうお家乗っ取りだと貴族達が教えてくれたよ」
(乗っ取り?7年前から次期伯爵になるって母さんが言っていたのに)
「お前という奴は!これでは我が侯爵家が没落してしまうぞ!どうしてくれるんだ!オリビア」
「私は悪くないわ!全てエヴァがいけないのよ!神童だからって私の可愛いニックを馬鹿にして!私が貴族の間で何て言われてるか知ってる?神童のもとに婿入出来てよかったわねって言われてどれだけ私が惨めだったか。この格下のくせに〜!」
そしてオリビアは隠し持ってい
た鉄扇をエヴァに向かって振り下ろした!だがその鉄扇はエヴァには当たらなかった!なぜなら。
ドスゥ!!
アルベルトがエヴァを守り、オリビアの鳩尾を殴ったのだ。そのままオリビアは崩れ落ち意識を失った。
「母さん?このやろ〜!母さんを殴りやがってぇ〜!」
(何やってるんだこいつは?王弟だか何だか知らないが絶対に許せん!)
ニックはアルベルトに対して殴りかかった!王弟にだ!もちろん当たるはずはない。彼の側には常に護衛騎士がいるのだから。
ドゴン!
「ブフォ‥‥」
ニックは逆に護衛騎士に殴られ気を失った。
オリビアもニックも似た者親子なのだった。
「‥‥オリビア‥‥ニック‥‥もう我が侯爵家は終わりだ」
そのままヴェントン侯爵は崩れ落ちた。ニックが王弟を傷つけようとしたのだから。
そして倒れたヴェントン侯爵家3人は護衛に連れていかれようとしていた。だがニックの意識が戻った。
「‥‥く‥‥っ、エヴァ!俺と婚約破棄しないよな!俺はお前のことが好きなんだよ!見捨てないでくれ!幼い頃から俺の世話してくれたよな!俺のこと好きだったからだろ!俺達まだやり直せるよな」
エヴァは呆れてしまった。もう我慢の限界だったエヴァは淑女を捨て本音でしゃべりだした。
「馬鹿は死ななきゃ治らないわね。あなたのことなんて好きになる所ないわよ。いい歳して思考回路は子供のままだし。私の容姿を馬鹿にする、顔を合わす度に婚約破棄。挙げ句には浮気で妊娠させる!?馬鹿じゃないの!もう出来の悪い子の面倒見るなんてこりごりよ。これ以上私に関わらないで!もう顔も見たくないわ」
「‥‥‥‥」
(う、嘘だ‥‥淑女の鑑と呼ばれていたエヴァが‥‥こんな酷いこと言うはずがない‥‥言うはずがないんだ‥‥エヴァはいつだって私の味方なんだから‥‥)
いつものエヴァの物言いではなくニックは言い返せずにいた。
「大丈夫だよエヴァ嬢。ヴェントン侯爵子息は私に襲いかかったのだ。もうエヴァ嬢の前には現れないよ。縛首か斬首、よくて鉱山の労働刑だろうな。だから長くは生きられないだろう。
早く連れていけ!目障りだ」
(えっ!え〜っ!死刑!この私が‥‥そんな‥‥)
「嫌だよ〜!まだ死にたくないよ〜エヴァ助けて〜」
(何で助けてくれないんだよ!婚約者だろ、あともう少しで結婚するのに!エヴァは何で私を見捨てるんだ〜っ!‥‥もしかしてさっきのエヴァの言葉が本当なのか!‥‥そんなはずはないんだ‥‥まだ死にたくない‥‥エヴァから離れたくない!私の何が間違いだったんだ)
ニックは叫んでいるがエヴァは助けてくれなかった。もう以前のようにエヴァは助けない。赤の他人になったニックの尻拭いをする必要がなくなったのだから。
そのままニックは護衛騎士に連れていかれた。護送車に乗るまでエヴァと叫び続けたがニックに手を差し伸べる者は誰もいない‥‥ニックの唯一の味方だった母もいない。
◆◆、
牢の中でニックの叫び声が響いた。
「あぁぁぁああ〜っ!」
ニックは頭を抱え叫んでいる。やっと自分の過ちに気づいたのだ。
「煩いな!今更後悔したって遅いんだよ」
「‥‥勘違いだったのか‥‥エヴァは私に惚れていなかった」
「やっと!わかった!君思い込み激しすぎだよね!自分にとって心地いい話ししか聞かないから、こんなクズ人間になっちゃうんだよ」
「ハハッ‥‥クズか‥‥確かにそうだ‥‥私は死刑か鉱山送りなんだろ‥‥」
「まだ選択肢あるよ!何で君の前に僕が現れたかわかるよね」
「お前は影だったな‥‥ふふっ、目の前に死神がいること忘れてたよ」
「じゃあ、君の刑を発表するね。それは‥‥‥」
こうして自分の運命を受け入れたニック。これから死刑になるか、鉱山送りになり肺病、ガス中毒になり5年以内に亡くなってしまう。もしくは影に消される。もし神様がいるならば神の気まぐれで助けてくれるかも‥‥しれない‥‥それは神のみぞ知る。
一END一
読んで下さりありがとうございます。
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ブクマ、評価してくださった方々ありがとうございますm(_ _)m
以前にモチベーションがアップしたらニックが後悔しながら這い上がっていく物語を追加すると記載しましたが、このままザマァされたままの方がいいと思いニック編は終了致します。
自分が考えていたニックの救済をざっくり紹介します。
10年以上過酷な環境で生き延びる→その後平民として生きる→父に拾われる→田舎で一緒に暮らす→兄デュークが父に会いに行く→デュークは死んだと思っていたニックに驚き愛の鉄槌をする予定でした。
もしかしたら神の気まぐれで救われるかも?‥‥それはないか!!