ニック破滅のはじまり
「エヴァ!婚約破棄だ!」
エヴァに会う度に私は告げていた。もちろん2人きりになった場でしか言わない。もし、父さんやスカッシュ伯爵に聞かれたら面倒になることはわかっていたから。
「‥‥そうですか 」
エヴァはこの頃から私に対して無表情になっていった。
私に婚約破棄だと毎回言われ不安になっているんだろう!母さんの言った通りだ!これが躾になってるんだな。ふふっ、そんなに私のことが好きなのか!私も好きだから婚約破棄は絶対しないけどな!あと婚約破棄と告げた瞬間のエヴァの反応がおもしろくてやめられない!
そんな反応を見て私は優秀なエヴァの上に立った気になっていた。
ここからニックの勘違いに拍車がかかるのだ。
17歳になったエヴァは淑女の鑑と呼ばれ、優秀な生徒しか入れない生徒会の副会長に選ばれた。会長はこの国の王子だ。
そのおかげでエヴァは忙しくなり、私との逢瀬は更に減っていった。
そんな時、久しぶりに見たエヴァは私には見せたことのない顔で楽しそうに生徒会の男子生徒と仕事をしているのを見てしまった!
私は怒りに満ち溢れた!私以外の男に媚を売りやがって!お前は私のことだけ考えていればいいんだ!
エヴァに対して腹が立ち学園で優秀なエヴァを生徒達の前で悪口を言い罵って回った。
そしたら学園の生徒は私から離れていった。だが、逆に近づいて来る者が現れた。私より爵位が下の者や素行の悪い生徒だ。今思えば、いい金蔓だと思い近づいた者達だろう。
なぜならニックは最近、自分で自由に使えるお金が増えたのだ。
父さんからはエヴァのドレスや宝飾品に使えと言われたが無視だ!私以外に媚を売るなら俺だって同じようなことしてやる!
ニックはエヴァに使うお金を自分に近づいて来た奴らと学園を抜け出しギャンブルしたり男爵令嬢ナタリーと街にくりだして楽しむことに使った。
ナタリーは私が次期伯爵になると知り近づいたのだ。
ナタリーはエヴァと違い私の全てに対してニコニコ笑顔で私を癒してくれた。私はそんなナタリーが好きだがエヴァほどではなかった。エヴァは凛とした佇まいで優秀で綺麗なのだ。そこで私は考えた!自分が次期伯爵になるのだからナタリーを第二夫人にすればいいのではないかと!それは名案だとナタリーに話したら喜んで了承してくれた!
「嬉しい!これでニック様とずっと一緒にいられるわ!」
ナタリーはガバッとニックに抱きつ自分の胸を押し付けた!
「そうか、私も嬉しいよ!今日は婚約記念にいい所にいこうぜ」
「はい♡」
そしてナタリーと熱い夜を共に過ごした!ニックはエヴァを婚前交渉に誘っていたが断られ、その鬱憤をナタリーで晴らしたのだ。
「ふふっ、ニック様!もし、私が先に妊娠したら第一夫人になっちゃいますね♡」
ナタリーはエヴァを蹴落とそうと考えているのだろう。
「それは駄目だろう!おじさんが許さないだろうし。でも、私が伯爵になったら変えてやってもいいぞ!そしたらエヴァには伯爵領の運営や執務を任せとけばいい!で、私達は楽しく遊んで暮らそう」
本当はナタリーを第一夫人にするつもりは、さらさらないがナタリーの夢を壊さない為に嘘をついた。
「優秀なエヴァ様なら1人で大丈夫そうですね。はぁ〜っ、結婚生活が楽しみですわ‥‥私もこれでエヴァ様の上に立てますわね」
最後の部分は声が小さく聞こえなかったがニックはナタリーと楽しく暮らせればいいやと軽い気持ちだった。
この時のニックはエヴァもナタリーも次期伯爵も手に入れたと思い込んでいた。
次期伯爵の私が決めたのだから大丈夫だろうとエヴァには伝えなかった。伯爵を継ぎ結婚したら驚かせてやろうかと考えているのだ。
刻一刻と自分の破滅が近づいているとは知らずに‥‥
そして、ニックは王家主催の学園卒業パーティーでやらかしてしまった。
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誤字報告ありがとうございます。ニックの不貞相手はナタリーです。ユリヤとなってまし