ニックの婚約破棄発言のはじまり
私はヴェントン侯爵家で生を受けた。次男だった為、母さんに甘やかされ自由奔放に育った。
私には幼馴染のエヴァ・スカッシュ伯爵令嬢がいる。
父親同士が仲が良く、スカッシュ伯爵邸で兄と三人でよく遊んでいた。
エヴァはいつも甲斐甲斐しく私の世話を焼いてくれた。
「ふふふ、ニックさまのお口にクリームが付いてますわよ」
口周りに付いたクリームをハンカチで拭ってくれた。
「ニックさま、もうお昼寝の時間ですよ。寝る子は育つと言いますから、一緒に寝ましょうね」
あやしながら一緒に昼寝をした。
「すごいですね!もう6歳で自分の名が書けるなんて」
何をやっても褒めてくれた。
「大変ですわ!血が出てます!!」
転んで怪我をした時はすぐに駆けつけ、傷の処置をしてくれた。エヴァは私と同じ6歳児には見えなかった。
私はそんな子供ぽくないエヴァが大好きだった。まるで母が2人いるみたいに感じていたのだ。
私はこんな幸せな時間がずっと続けばいいと幼いながら思っていた。
だが、そんな時間は長くは続かなかった。
エヴァは私と違い6歳で神童と呼ばれていた。
6歳児で字がすらすらと書け、計算、国の歴史、他国の言葉を習得していた。この時点で学園卒業レベルを超えていた。
10歳になったエヴァはお人形のように白く可愛らしい子に育っていった。そして神童だと同年代の貴族に知れ渡り私は焦ってしまった。
エヴァが私の側から離れてしまうんではないかと‥‥。
そんな時、父さんからエヴァと私は婚約したと伝えられた。私は父さんと一緒に喜んだ。エヴァは私に惚れているんだと!これでエヴァは自分の物だ!と喜んだのだ。
たぶんこの時から私は変わってしまったのだろう。
この時の私はエヴァを狙っていた令息達に対して、こんな風に思っていた。
「お前ら!神童のエヴァと結婚するのは私だ!エヴァは私にベタ惚れなんだぞ!お前ら羨ましいだろ」と優越感に浸っていた。
これからもエヴァは私の独り占めだ!と思っていたが‥‥
エヴァと婚約者になってから会う頻度が減っていった。エヴァは当主教育に入り忙しくなったのだ。
兄さんも遊びもせずに当主教育に励んでいるから大変なのはわかっていたからエヴァの為に何かやることはないかと母さんに相談した。
母さんは
「何もしなくていいのよ!ニックちゃんの代わりに当主教育してるんだから!だってニックちゃんが次期スカッシュ伯爵になるのよ。ふふっ、だから自由にしてていいの。本当はもっと格上の所に婿に入れてもらえるよう旦那様に頼んでいたのに‥‥ごめんねニックちゃん、格下の伯爵で。
エヴァちゃんが神童かなんだが知らないけどニックちゃんは畏まらなくてもいいのよ!だから何言ってもエヴァちゃんは許してくれるわ!だってニックちゃんのこと大好きなんだから!ちゃんとニックちゃんの言う事聞くようにしないと駄目よ!結婚してから大変になるんだから。だからちゃんとエヴァちゃんを躾けるのよ」
そうか!私の為にエヴァは当主教育をしてくれていたのか!
そうだよな!私に惚れているんだから‥‥ふふっ、私がエヴァを躾ないと!私が次期伯爵になるんだから!まずは、上下関係をはっきりさせる為に厳しい言葉を掛けてやるか!
それが‥‥
「エヴァ!婚約破棄だ!」
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