第6話 覚悟の行方
投稿がかなり遅れてすみません。啓蒙を集めに行ってたら気づいた時には、かなり時間がたってました。
『始まりはいつも唐突で準備なんてさせてくれない。終わりもいつも唐突で知らせてなんてくれない。火の車に包まれて、チのそこでいつも冀う。我々の始まりに絶望と憎悪の炎があらんことを。その終わりにすべての始まりに幕が下ろされんことを。そして……』
頭の中で誰かの声が響いていた。女性のようで、男性のようにも聞こえる中性的な声が聞こえた。その言葉を聞き終えたと同時、自分が何をしていたかを思い出す。目を開けて体を起こしてあたりを見ると、そこはさっきまでいたであろう円の中心ではなく、先生に用意してもらった部屋だった。
なんでここに?確かさっきまで能力の使い方を教わっていたはず……。途中で気絶したのか?なんで?能力を使った影響か?いや、使った覚えはない。でも暴発的に使ってしまったのかもしれない。そもそも暴発する事なんてあるのか?
そんな風に思考を回していると扉が開き、先生が中に入ってきた。
「ん?起きたかい。いや~盛大にやったねぇ。私としても君に十分素質があってうれしい限りだよ」
少し機嫌がよさそうな声で俺に声をかける。
能力どうこうは、いい結果に終わったみたいだ。それは良いとして、なんで俺が寝てたのか聞いとかないと。
「ありがとうございます先生。えっと、俺はどうしてここで寝てたんですか?」
「それは、能力を始めて使う時に良く起きる事でね。初めて使う時は勝手がわからず使うだけ使って気絶する場合が結構あるのさ。まあ、珍しい事でもないから気にすることでもないよ」
そうかならよかった。でも、俺はどれぐらい寝てたんだ?その辺も聞いてみるか。
「わかりました。あの、俺はどれぐらい寝てたんでしょうか?」
「ん?まあ、気になるところではあるだろうね。君の場合、1日ぐらいだったね。起きるまで結構早かったのは、修行をさっさと進められてありがたい限りさ」
1日か。そんなに寝てなくて良かった。まだ、止まる訳にはいかない。俺は、決めたはずだ。あの時、人間として殺すのだと、人として復讐するのだと。なら、ここで止まれる訳がない。いや、止まってたまるか。少しずつでも進み続けろ。
俺が考えている表情を先生は見て声をかけてくる。
「さ、昨日の続きだ。募も焦る気持ちがあるんじゃないかい?昨日と同じ場所だ。さっさと始めよう」
「はい」
先生の後について行き、件の場所に来ていた。先日と違いは、円を作っていた杭が無くなっていた事だろう。おおよそ円があった場所の中心で止まり、俺の方へ振り返る。
「さて、今から修行もとい、訓練を始めるわけだが、その前に募には自分の能力について知ってもらわないといけないねぇ。ほら、早速やってみたまえ」
そんな軽く言われても、能力の扱い方なんてわからないのですが……。まあ、ぶっつけ本番だけどやるしかない。
昨日したように瞼を閉じ、全身神経を研ぎ澄ませる。より鋭く、より深く、真冬の水底へ沈むような感覚と、それと共に全身が研ぎ澄まされてる。研ぎ澄まされた意識の中で暗く何も映していないはずの瞳に世界が映る。流れる風が震える空気が、それらが見える。なぜかはわからない。見えているように感じているのだ。その目の前の光景に手振るってみようとしたが、違う何かが振るわれた。俺自身であるものの、俺ではないもの。それは、目の前の光景を歪めながら何かを形づくる。形作られたそれは、地面に落ちて音を立てた。
瞼を開け、下を見るとさっきまで無かったであろうものが、目の前に落ちていた。それは、目を閉じながら見た形作られたものであり、釘のような姿をしていた。
これは?俺が作ったのか?
「と、言うわけで君は世にも珍しい物質の生成、いや、創造が能力だとわかったわけだ。今のその能力はクソ雑魚と言っても過言ではない。その能力を強力な武器とするために必要な訓練を始める。覚悟したまえよ」
俺の能力は、物質の創造。そうか、俺も二人と同じか。良かった。まだ、つながってる。これを少しずつ、使えるように変えていくんだ。これをもって進むんだ。
ヨカッタ。マダ、ミチハツヅイテイル。
「はい」
確実にできることを増やせ、今できる事を重ねろ。終えるために重ねろ。歩みを止めるな。一歩、一歩ずつ進んでいこう。