第18話
心地の良い微睡みから目覚めると、見覚えのない場所で辺りを見回した。窓のない白い一室、置かれた病床とカーテンが病院の大部屋を思わせる。
体を動かそうとすると、鉛のように重く、ろくに動かせない。体の先の感覚が鈍い。それでも何とか上半身を起こした辺りで、部屋の扉が開いて誰かが入ってくる。顔を見てみれば、顔の右側が見事に腫れあがった音無だった。何があったのかと、顔を見ていると音無と目が合った。
「よう。元気そうだな」
「まあ、おかげさまで」
軽く挨拶をかわし、片手に持っていた重そうなものが入った袋を俺の寝ているベットの横にある机へ置き、俺の横に座る。
つうか、この人が何しに来たんだ?こういうの来るタイプじゃないでしょこの人。
「これ、お見舞いの果物な。明日には退院だし、今日中に食っとけ」
「あ、ありがとうございます」
この量、全部食えるだろうか。最悪、先生とかにあげればいいか。
今にもはち切れんばかりの袋に大量に収められた果物たちを見ながらそれの処理の仕方を思案する。
そうしていると、本題に入るのか音無が椅子に座り直す。
「さて、本題だ。ある程度察してはいるだろうが」
いや、全然。何も察して無いですけど。
「ああ、俺が面倒を見ることになった。文句は、俺に言ってもしょうがねぇから諦めろ」
文句はないんだけど、そんな顔じゃあ話が頭に入ってこないんだけど。
「それは良いんですけど……顔どうしたんですか?」
「あ?ああ、これか……あ~ついさっき訓練でな、まともに食らっちまったんだよ」
音無は、気まずそうな顔をしながら言葉を選んでいるように返す。触れられると思いながら、触れてほしくなかったといった顔だ。
「これについては、近々お前も似たようになるだろうから気にすんな」
音無は自分の腫れた方の顔を指しながらそう言った。
余計に気になるんですが……。
「じゃあ、俺も忙しいんでな。訓練開始は、明後日からだ。十分休めよ~」
そういって音無は、病室から出ていき、誰もいない病室は静まり返り、暇を持て余す。とりあえずと、机に置かれた袋の中から果物を1つ取り出し、口へと運ぶ。
「酸っぱっ!」
あまりの酸っぱさに口をすぼめる。
どうやってこれ、食べ切ろうか……。
大量の果物を見てより、食切るイメージが霧散し、思考を巡らせていた。




