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第10話 旅立ちへの一歩

 ――フォルダー本部会議室――


 フォルダー本部の一角の一部屋で、1つの巨大な長机を囲むように8人の人物が各々自由に座っている。その中には、猜疑と早瀬の姿がある。扉が開き、黒田が中に入ってくる。長机の上座の席に座ると口を開く。


「全員、入団テストの審査はご苦労だった。君達も多少なりとも疲れているだろう早速始めよう。今回の議題だが、3つある。さっきの入団に関連する話題の方から話そうか。1つ目だが、あの場にいなかった少年を1人入団させるかについて」


 黒田の発現にその場の空気がざわつく。きつね色の髪を持つ細目の男性が声を上げる。


「総隊長はん、そりゃ無しやないですか?入団テストを律儀に受けてもろた彼らにどう説明するです?筋が通らんやろ」


假宿(かりじゅく)4番隊団長、筋も何も、入団テストはもともとが私を含めた団長から推薦を得るためにテストを行うのが目的だ。その点で言えば彼は既に数か月前にクリアしている」


「そないなもん団長個人の横暴でいくらでも人間を入団させられるやろ。それをなくすためのテストやないんかい?そもそも誰が推薦しとるんや?」


「私だよ」


 早瀬の返答に不快そうな表情を假宿は浮かべる。


「なんや、またあんたかい。毎回毎回、何度あんたの我儘通されちゃ組織が成り立たへんやろ。この前のフォーミュラも、かなり費用がかさみましたえ」


「実力はあるよ?それにフォーミュラの件は、私お願いしただけじゃん」


「ありゃ脅しやろ!それにそういう問題じゃないやろ。1人の横暴をそう何度も許すわけにいかへんって話なんやわ」


「万年人手不足なのにそんな人の選り好みしている場合なのかい?随分と悠長なこと言うじゃないか君は。実力があって、ある程度、こっちの思想に賛同してくれるなら引き入れるべきじゃないのかい?」


 机を挟み睨み合うと、空気が2人の圧に怯えているかのように震えだす。


「両者、そこまでだ」


 黒田の一言が、2人の圧が支配していた空気を切り裂き一変させる。


「私に剣を抜かせるな。君達2人を相手するのはさすがに厳しい。それに両者の言い分は理解している。私としては、人材は多く欲しい所だ。だが、一方で横暴は例外を作りすぎるのは、組織の規律に関わる。そのため、こうして君達に集まってもらっている。それに、假宿第4番隊団長も判断するのは、2つ目の内容を聞いても遅くはない。早瀬第2番隊団長もあまり人を挑発するものじゃない。」


 穏やかでありながら有無を言わせぬ言葉を発したと思ったら、すぐに優しく諭すような声色に戻る。


「は~い」


「はぁっ、しゃぁない。俺もまだ、死にとうないわ」


「さて、2つ目だが、固有種と思われていた化け物(AM)が新種である事実の確認と増加が判明した」


「ねぇ、それさ不死性を持つ固有種って言われてた奴のこと?」


 黒田へ、純白と形容すべきほど白い髪に赤い瞳の美少女と呼べるであろう彼女が気だるげそうに体を起こし疑問を投げる。


「そうだ。不死性を持つと考えられていたAM固有種、仮称:ウロボロスと呼ばれた個体が複数存在していたのが各拠点の出現場所と時刻から判明した。そして、一週間前、初めてウロボロス種の討伐が確認された」


「ま、まさかやけど」


「あぁ、そのまさかだ。さっき君が入団させるかどうかで言い争っていた子だ」


 この場にいた黒田と早瀬を除く全員が驚いている中、早瀬は自慢げな顔をする。


「本気で言っとります総隊長はん?!」


「私はいたって大真面目だ。ライト反応でも一致している。疑う余地はあるかね?」


「はぁ、確かに実績がある以上、入団を蹴ったとなれば、入団を希望するやもしれへん能力者への外聞が悪うなりますからなぁ。それに、何かしても実績につながらんっていう不安になられて士気が落ちてもあかんわ。そうなると入団させへんわけにもいかへんか」


 渋々といった表情ながら納得していた。


「では、彼の入団の可否について、皆はどう思う?」


「入団に異議な~し!」「私にも聞く必要あるかいそれ?入団に賛成だよ」「同じく」「はぁ、しゃあなしやけどな。賛成や」「おなじく~」「異議はない」「異議なしだ」「賛同いたします」


 黒田の質問に全員が入団への賛同の意思を各々言葉にする。


「では、ウロボロス種についてだが……」


 ――――


「――ってな感じで君の入団が決定したから明日から頑張ってよ募」


 目覚めて早々、昨日あったという会議の話を病院の一室で話してきた。


 うん。また、どっから突っ込めば良いかわからないけど……。


「一週間寝てた状態の俺に起きて早々言う事ですかそれ」


「え、だってき募、明日退院でしょ?傷は全部直って健康状態含めたすべての状態は、正常。運動能力の低下は能力での治療もあってなし。どこに明日から頑張って言わない人がいるのさ」


 俺に先生はあっけらかんとした笑顔でそんな事を口にする。


 はぁ、まあいいか。入団できたこと自体は良好だ。早いにこしたことはないしな。問題は、この後の動きが一切わからない事だけどな。


「今後の動きだけど、必要な物はこちらで用意するし、君が所属するのは、この拠点にいる団の内の1つだから家から出勤すれば良い。特段、募がすることはないから明日、時間へ間に合うように支部に来ればいいさ。というわけで、はい。フォルダーの団員に支給される端末。これに拠点の地図やら、色々入ってるからこれ見て遅れないようにするんだね」


 畳み掛けて話し先生は、俺に大人と手と同じ程度の大きさの端末を手渡してくる。そのまま先生は、病室を去っていった。


 言いたいことだけ言って帰っていきやがった!はぁ、まあ今日はしっかり休んで明日に備えますか。


AM:この世界に発生した一応生物に分類される化け物の総称。食事、排せつ、睡眠の活動は確認されているものの交配が確認されておらず、個体数増加の原因は不明とされている。見た目は様々、動物が複数ぐちゃぐちゃに組み合わさったものもいれば、本当に生物なのか怪しい姿のものも存在している。その特徴に合わせ種ごとに分類している。

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