〈一章アウトロ〉共鳴する歌姫の未来-3
――その一方で……。
イリル達と別れた後、アプルとラルドはドラマ撮影の現場にやって来た……夕焼けに照らされる花畑の前で、出演者の他、カメラマンや監督、照明がおりスタッフが話し合っている所、ラルドの方を見つけると、こっちに寄ってきた……。
そして、何だか不機嫌そうに立っていたラルドの両親は足を強く踏み入れながらやって来た……そんな様子を見たラルドは震えながら声を発した……。
「お疲れ様です……」
「ラルド!! 今までどこで油を売ってたんだ!!」
「ご、ごめんなさい……」
「全く! みんなを待たせて……今度からもっと仕事を増やさせないとね!」
ラルドの父は大きく荒れていた声で話していた……それを見ていた監督は、落ち着かせようと落ち着いた声で話していた。
「まぁまぁ……そんなに怒らなくても……ワンシーンなら撮影できるはずだよ……さぁさぁ、今回のシーンは『夕暮れに親子で花畑で思い出を語る』シーンは撮れますから……」
現場はピリピリしている状況下で、アプルは勇気を持ってラルドの両親に状況を説明した……。
「ご両親さん……ラルド君はちょっと休憩しただけですよ……偶然にもアタシと出会って、色々と見て回ってきたから、遅くなっちゃいました……だから、ラルド君を責めないでください……」
「アプルちゃん……まぁ、ラルド君の体調も良くないし、放送には時間があるから、今回は大目に――」
アプルは、ラルドの両親に向かって、ラルドに申し訳ない感じで、あんまり怒り過ぎないようにして欲しいと話していた。監督は状況を把握して、アプルの言葉を受け入れたが……――
「駄目だ!」
監督の言葉を書き消すかのように、ラルドの父親はそれを一切許さなかった……。
「アンタはラルドの貴重な時間を無駄にしたんだ! さっさと立ち去れ! そして、二度とラルドに近寄らないでくれ! アンタのせいでラルドは演技に集中出来ないじゃないか!!」
「あの! あの有名なアプルさんですよ! 流石にそれは言い過ぎじゃないですか?」
他の出演者はラルドの父親に向かって、厳しい声をかけていた……このままだと、口論がエスカレートして撮影が始まらない……ラルドは悲しい表情で、アプルに申し訳なく思いながら、こう話した……。
「ごめん……アプルさん……」
「ううん、気にしないで……アタシもそろそろ用事があるから、じゃあ後でね!」
アプルはこの場から、半分追い出されるような感じで、去っていった……監督はため息混じりでメガホンを掴んだ。
「……時間も惜しいですし、そろそろ撮影を始めましょう……!」
アプルは急いで、特番の現場へと向かっている最中に、何やら違和感を感じていた……。
(ラルド君の両親は、毒親とは無縁な優しい親だったって言ってたのに……全然違っていたじゃん……ひょっとして……何かあったのかな……)
マネージャーが手配した、空飛ぶ車のシートにアプルはゆっくりと腰を下ろした……。
そして、空が暗くなってきた時、テレビ局の『メイキョウテレビ』にて、スタッフ一同や大勢のタレントが番組を放送する準備をしていた……内装は、式典をテーマにしつつお祭りの要素もあるようなスタジオで、美術チームのセンスとクオリティーの高さが伺える内装となっていた……。
先ほどの監督とスタッフ一同がスタジオの撮影外の場所で打ち合わせを行った後、監督がカメラマンが何かが違うことに気づいていた……。
「カメラマン、最近、太ったり瘦せたりしているようだけど、体調は大丈夫か?」
「いいえ、大したことじゃありませんよ……ダイエット中なので……監督も最近、娘さんが反抗期だそうですね……大変でしょう……?」
「まぁ、大変だけど……そこがまたかわいいんだよ……そう言えば、カンペ……髪の色変えたか……?」
「はい、たまには気分転換に……彼女に失恋されてしまいましたので……思い出の断捨離に……」
「そ……そうなんだ……良くないこと言っちゃったな……すまん……それよりも、天才子役の『大鈴 ラルド』君もこっちに向かってくるぞ! 連チャンの仕事だけど……頑張ろう……!」
監督達は少しも疲れを見せずにそれぞれの持ち場にスタンバイした……。
そして、いよいよラルドが両親と共にスタジオへやって来る頃だ。ラルドはフラフラとしながら歩いていて、息を切らしながら壁によりかかっていた……。
「お疲れ……様……です……」
「次は特番の『生中継! クイズ大戦!!』の出演よ! なんと! 大女優の『竹内 アリア』さんも来てるんだからね!」
「う、うん……」
ラルドの両親は、ラルドのこの瞬間に対して、期待に満ちていた……いつか、大スターとの共演でうちの子の素晴らしさを世間に知ってもらいたいと、目を輝かせるばかりだった……。
しかし、ラルドの目標は大女優のアリアもそうなのだが、タレント兼アーティストのアプルに憧れていた……趣味の歌を通じて、生き生きと世の中に繰り出せる姿勢……例えば、批判されても前を向いて歌を歌い続けたり、堂々とテレビに出演する姿勢に憧れていた……。
ラルドはそう思いながらも、現在厳しくなっている両親に対してそれを明かすと、怒鳴られる事も配慮して、両親に噓をついていた……。
そして、番組は後半戦で、『水汲みバトル』のコーナーに突入した。それぞれのチームで一つずつ、さじを持って、プールに汲んである水を汲み、ビーカーに目掛けて歩いていきビーカーに注いでいく、水の量が最も多いチームが勝利となるシンプルなゲームだ。
「さぁ~、残り時間もいよいよ大詰め! お~っと! 『俺の青春が、ベタでもマイナーでもなく、キチガイから抜け出せない件について』チームはラルドさんに交代だ~!!」
司会の男性芸能人が、声を高くして、盛り上げていった。そんな中で、ラルドは水を汲んだ後に運ぼうとすると、視界がぼやけ始めていた……。
(あ、あれ……? 何だか、力が入らない……)
「あっ!」
「ラルド君!!」
ラルドは、ビーカーに向かっている最中に、つまづいてしまい、転んで倒れてしまった……そして、会場は熱狂的な声援から一転、悲鳴と青ざめた表情で充満してしまった……。
「ラルド君……! 腰が抜けてるぞ?! 大丈夫か……?」
「は……はい……やめます……ボク……」
ラルドの傍に駆け付けた、スタッフ一同と両親に運ばれて行き、スタジオを立ち去った……アプルは心配しながら、目をソワソワしながら、撮影外の場所で端末を繰り出して、マネージャーと顔馴染みの戦士に通信を繋げた……。
「ラルド君……やっぱり疲れてるのね……」
(まずい事になっちゃった……とりあえず……マネージャーとイリルさんに連絡をしないと……)
――フューチャーファイターズの拠点にて、イリルとセナは自分の部屋で、今までの中継をテレビで観ていた為、真剣な表情になっていた……そんな中でセナから着信音が――
「……あっ! アプルから連絡だわ!」
「イリルさん、セナさん、聞こえる?」
アプルは焦りを見せながらも、イリル達に通信を行った……イリルはラルドの事について心配しながら、アプルに様子を伺う。
「うん、中継を観ていたけど……ラルドは……?」
「ラルド君は車に運ばれた所なの……マネージャーから聞いた情報なんだけどね……最近、家でも学校でも窮屈らしくて……同級生とは上手くいってないみたいで、陰口を叩かれたり意地悪をされることがあるみたいなの……」
「えっ?! それは酷いわね! 芸能界に対しての嫉妬ってやつかしら?!」
「うん……そこで、アタシからお願いがあるんだけど……あの子と一緒にフューチャーファイターズの拠点の見学って出来ないかな……? 車で、アンタ達の所に向かって行ったはずだから……」
フューチャーファイターズの拠点に、ラルドとアプルが突然としてやって来る情報に、セナは少しビックリしていた……イリルは、顔を変えないまま――
「私達はいいけど……ラルドの方は大丈夫なの?」
「ええ、そこは大丈夫よ。両親には何とか誤魔化せたから」
「……あんたは?」
「ああ、自己紹介がまだだったわね、私は『竹内 アリア』――」
アリアは、アプルの通信に突然として割り込み、アプルの横で腕を組んでいた……アプルは突然の大スターの登場により、少し戸惑いを見せた。
「あ、アリアさん……? スケジュールは大丈夫なんですか?」
「ええ、走っていけば、次の仕事へ間に合うから。まずは今の状況を解決するべきよ」
イリルはアリアに、本日の出来事を的確に細かく話していた……。
「なるほどね……一日中、そんなことが……」
「それに、何だかアタシの事を邪険にしているようでした……ラルド君のご両親は優しいと聞いたことがあります……でも、実際にはそうでもなくてて……最近厳しくなったって、ラルド君から聞いたので、その間に何かあったのかなと……」
「私は少なくとも、ラルド君の両親は知ってるけど、少なくともあんなに厳しく接するタイプの人じゃないわ……恐らく他の誰かが、ラルド君を標的に、何らかの形で操ろうとしている……その可能性の方が高いわ」
「……なるほど……気に留めておくよ……」
「まぁ、あくまで私の推測だから、外れる可能性だってあるわ。君達がラルド君を元気づけられる事を祈っているわ。ところで、アプルちゃんはラルド君を全力で応援しているけど、今日、初めての共演のはずなのに、何かキッカケがあるの?」
「……アタシも、家も学校も、窮屈だった頃があったんですよね……アタシは、お父さんが毒親で、歌よりも演技や仕事をやらされたり……学校に行っても、クラスの子に白い目で見られたり、知らない児童からサインを強要されたりと……」
「窮屈……? アプルも……?」
――「アタシがエンタメ業界に入ってから間もない、小学2年生の頃……隣のクラスの男子二人が遠くから見つめて――」
「あいつったら……学校休める上にテレビに出れるよな……」
「本当に羨ましいよな~」
(アタシ……みんなと同じように、学校に通って授業を受けたいのに……)
――「アタシが教室に入った瞬間、クラスの班の女子三人がやたらと楽しげに集まりながら――」
「宝灯って、いっつも大勢の人からチヤホヤされて、何だか腹立つよね~」
「そうそう! この前のCMでさぁ、憧れのミニ様と共演しててショックだった~」
「あいつなんかもう――」
(班のみんなはアタシに親しかったのに……結局はアタシの事をそう思ってたのね……)
――「下校時間になった時、知らない男子児童から、サイン色紙とペンを持ちながら――」
「ねぇ、アプル・ディーパなんでしょ? サインをくれないかな?」
「ご、ごめんなさい……人違いじゃないですか? アタシは普通の児童ですよ……」
「とぼけるな! お前が芸能界入りの話題はもう学校中に広まってるんだぞ! さっさとよこせ! よこさなかったらタダじゃおかねぇぞ!」
「ちょっと! 弱い者いじめなんて最低なことだっていつも言ってるじゃない!」
「チッ! サインを転売して小遣い稼ごうかと思ったのに……! 覚えとけよ!!」
「そっちこそ、もうこの子に関わってこないでねー!」
――「急に話しかけられた、凛々しいも優しい声により、サインを強要された男子児童達は逃げていったんです……そして、振り向くと、担任の先生と学校行事で仲良くなった5年生の先輩が助けてくれました……そして、悩んでいるアタシにこんな言葉を掛けてくれました」
「宝灯さん、あんな言葉、気にしちゃダメだからね……」
「せ、先生? 先輩も……あ、ありがとうございます……」
「いいのよ。班の子やさっきの子達はきっと、宝灯さんの事を羨ましいがっているだけだわ……いわゆる、『ヤキモチ』ね……」
「そうですよね……私はりんごちゃんの歌ってる所が好きだよ! 5年生の間ではりんごちゃんの歌で話題が持ち切りなんだから!」
――「この時、アタシは先生と先輩に背中を押されるかのように、不思議と前に進みたくなってきました……気づかされたんよね……自分に持ち場があるって事に……」
「そう……かな……」
「だから、もう少し自信を持って! りんごちゃん!」
「宝灯さん、例え自分の持ち場が地味でも活かせる場面が必ずある……だから、自分の特技や好きなことを大事にしてね……」
「うん……! ありがとうございます……先輩、先生……! アタシ……周りがどう言われようとも、頑張る……!」
――「こんな感じで、この言葉を大切にしながら、芸能界に挑戦し続けて、その結果として、『メイキョウ地方の歌姫』とこの『第二の地球』に広く伝わるようになりました……! でも、アタシはもっともっと歌いたくて、今でも歌の稽古に通っています……! そして、お母さんの言葉も今でも覚えています……「若いうちからやりたい事を何でもやりなさい……例えば、あなたの好きな『歌うこと』とかね……」って……」
「アプル……」
アプルは、微かな微笑みで、過去の記憶を回廊していた……そして、明日フューチャーファイターズの拠点にやって来る事を繰り返し伝えたアプルは、イリル達に協力に感謝の言葉を伝えながら、優しい通信を終わらせた……。




