〈一章アウトロ〉共鳴する歌姫の未来-1
――「りんご、次は演技の稽古をするぞ」
アタシ、『アプル・ディーパ』うん、そうだよ……みんなから巷で大人気のタレント兼アーティストって呼ばれているわ……。
でも、最近調子が優れない……あの悪い出来事を思い出したから……。
アタシの本名は『宝灯 りんご』、アタシは小さい頃から芸能界デビューした。昔から歌が好きでアタシの歌がこの『第二の地球』全体に届けられて、喜びと感動でいっぱいにするって心に決めていた……。
でも、実際にはそんなには甘くなかったけど、何とかやり遂げて、この世界に入ることができた……出来たんだけど……お父さんはアタシに厳しく接していたの……。
「ええ~……この前も演技の稽古したじゃない! 今日は歌の稽古がやりたい!」
「ダメだ、ワガママ言うな!」
「今日だけワガママ言うもん! 歌の稽古を入れないと、もう演技はやんない!」
「ああそうか……それなら、父さんも母さんも生活できなくなっちまうけどいいか?」
「いや……でも、歌の稽古がしたいの……演技と両立させれば、きっとみんな笑顔になるはずだよ……!」
「それもそうだな……でも、今日は演技の稽古が先だ! その後に、ドラマの撮影をやるぞ」
「え?! 稽古の後に、予定なかったじゃん! 何で、前持って言ってくれなかったの?」
「お前に言っても、すぐ嫌がるからなるべく口を封じた。言うこと聞かないと、歌の稽古はなしだ! さぁ、いくぞ!」
「いたたたた! やめて! 引っ張らないで!」
役者になりたかった、お父さんは演技をしろと歌を歌うなとうるさかった……その度に、お母さんと一晩中言い争いをしていた……。
結局の所、歌の稽古をしばらく行うことはなく、仕事やオーディションなどでスケジュールがびっしりと詰められていた……。
休むことなく一週間が経ち、生中継の番組で突然、お茶の間が凍る程の大惨事が起こっちゃった……。
「大変です! あなたの娘さんが……! ロケ中で大怪我を負ってしまいました……!」
「えっ?!」
特番の番組で競技をする企画で、アタシは足場の悪い、丸太の上を歩いている最中で足を踏み外して、水に落ちたまま動けなかった……水辺に浮いたまま、視界が真っ暗な状態が長く続いた……。
目を開けると、倒れてしまったアタシを必死に心配していて、涙を流していたお母さんの目が映っていた……。
「あっ! りんご……! お母さんよ! 見える?!」
「お母さん……見えるよ……」
目が覚めたら、病院のベッドの上で仰向けになっていた……アタシが目を覚ました事を知ったお父さんは、心配することもなく、鋭い目つきで声を荒げていた……。
「りんご……! どうしてくれるんだ! お前の大惨事で、仕事が全部取りやめになっちまったぞ!」
「やめて! あなた、りんごは疲れてるのよ!」
「叱るのは当然のことだろ!」
お母さんは涙声になりながらも、お父さんの頬を力一杯叩いた……。
「ふざけないで! 子供は親の人形じゃないわ! あなたがりんごに無茶なスケジュールを押し付けたからあんな事になったのに! この子はアタシが育てるから! 二度と関わらないで頂戴!」
こうなった事が原因で、両親は離婚した……アタシはお母さんと一緒にメイキョウ地方のニュートラル区へと暮らすことになる事が決まったの……そして……退院後、お母さんはアタシの背中を撫でながら、優しい声で話していた……。
「りんご……今まで気づかなくてごめんなさい……これからのあなたは自由の身よ……若いうちからやりたい事を何でもやりなさい……例えば、あなたの好きな『歌うこと』……とかね……」
メイキョウ地方、リリィ市にある広大な花畑に私とセナは笑と理央とのお誘いで、やって来た。
この広大な花畑、『リリィフラワーパーク』はメイキョウ地方の中でも最大種類の花が展示されており、季節によって違う花が見られるため、一年中やって来る人もちらほらといる。
この時期は蒲公英や菜の花、パンジーなどの春の花が見られるって笑が言っていた……セナは花畑を空中から見ようと上昇し始めた……。
「いいなーセナさん……」
「そんなに高く飛んだら……大変な事になるだろ……」
「ふふ~ん! 案外とドローンも便利かもね!」
セナは空中を一回転しながら、笑顔で飛んでいた……しかし、この時期は風が強く吹いていて……突然、ビュンっと吹いてきた強風に私達を襲ってきた……。
「うっ……風が……!」
「嫌ぁぁぁぁぁ!!」
「セナ……!」
セナは突然吹いてきた強風に耐えられず、飛ばされてしまった……! すると、ハンチング帽を被った、ストレートヘアーの女性がセナを両手で受け止めた……。
「危ないっ!」
「ありがとう……ってあら……? あなたはアプル……?」
「あっ……やっぱりアンタの目は誤魔化せなかったか~……セナさんがいるって事はイリルさんも一緒……?」
「ええ、そうよ! あそこに……」
セナの元へと向かった私達は、ハンチング帽を被った女性に話しかけた……この姿は……アプル……?
「アプルは何でここに……? 収録にしては、コソコソしているけど……」
「アタシはここで……プライベートで来てるの……! アーティストたるもの、時には休む事も肝心だからね! それにここは……一度は来てみたかったから!」
「なるほどね……」
「アプル……せっかくだし、ソフトクリームでも食べに行かない? ラベンダーを使ったソフトクリームが有名みたいよ! 助けてくれたお礼にね!」
「えっ? いいの……? ありがとう!」
アプルは私達と一緒に、ソフトクリームとティーカップの看板の店の方へと向かって行った……。そこには、長座の列ができるほど人気で、花畑の花を使ったハーブティーやスイーツが有名だそうだ……店の前に数十人列に並んでいたが、笑曰く、この列は少ない方らしい……。
私達が並んでいると、その前に来ていた親子が何やら話していて、女の子は地面に座りながら、文句を言っていた……。
「ママ~! 疲れた~!」
「まだ3分しか経ってないじゃない」
「もう立ちたくな~い!」
「仕方ないわね……ほら、あなたの好きなアプルの曲でも聴いてなさい」
母親は端末を操作した後、女の子にイヤホンを渡して耳につけさせた。
「うん! ららら~♪ はいっ!」
アプルは、女の子が曲を聴いている姿を見て、少し微笑んでいた……自分の曲を聴いてくれて嬉しく思っているのかな……。
(ようやくアタシの歌が、世界中に広まって来たんだ……)
そして、長い列は徐々に進み、やっと私達の番となっていた……厨房が見えるカウンターで、店員が困り顔で話していた……。
「申し訳ございません……ラベンダーソフトは最後の一つになってしまいました……」
「えっ?! 並んだのに……残念……」
残念ながら、ラベンダーソフトは最後の一つとなってしまった……セナとアプルはがっかりした様子でいた……。
「アプル……あんたに譲るよ……」
「え?! いいの……?」
「あんたは仕事で忙しそうだから……この機会を逃したら食べれないかもしれないと思って……」
「確かに……イリルさんの言葉がわかる気がする……せっかくだし、アプルが食べてみて! あっ、私はカモミールティーで!」
「アタシは限定ものには興味ない……ミントティーがあればそれでいい……」
「うん……そこまで言うなら……お言葉に甘えて……ラベンダーソフトクリームを一つ……!」
「かしこまりました!」
店員は笑顔を取り戻して、私達にそれぞれの注文を読み上げていった……セナは、他のソフトクリームがあるのかを店員に問いかけた……。
「えっと……他のソフトクリームってあるかしら……?」
「ゴチャマゼソウとドリアンのミックスソフトクリームなら唯一残っていますが……よろしいでしょうか……」
「いい訳ないでしょ!! ゴチャマゼソウは青汁によく使われる野菜の原料なはずよ!」
結局……セナはゴチャマゼソウとドリアンのミックスソフトクリームを注文した……私もちょっと気になってセナと同じ物を頼んだ。
道中、みんなで花を鑑賞しながら、ソフトクリームやハーブティーの食レポに挑戦をしながらゆっくりと歩いていた……アプルはタレントらしく、的確かつ高い表現力でラベンダーソフトを食レポしていた……セナは……ちょっと垂れながらうようよと飛んでいた……。
「うぅ……変な味だったわ……ドリアンだけのソフトクリームの方がいいかもしれないわね……」
「大丈夫……?」
「セナ……無理して食べることなかっただろうに……イリルはセナと同じ物頼んでたが、具合は悪くないのか……?」
「えっ……私は美味しかったけど……」
「次は、あっちに行ってみようよ! Type因子が含まれた花がいっぱい咲いているの~!」
「Type因子が含まれたお花? 観たい!」
テンポよく歩く笑に連れられるがまま、Type因子が含まれている花が展示されているエリアへと向かって行った……。
そこには、沢山の人が鑑賞に来ている中、アプルは見覚えのある姿を目撃していたのだった……。
「ん? あの子って……」




