守りたい物――
完全体シャドウ・ウイルスと化して、戦士達に襲い掛かるシャドウ・コロナ。イリルは片手剣を構えてコロナの腕を狙い、攻撃を仕掛けた。
「はぁ!」
「無駄ですわ! フン!」
イリルが振り下ろした片手剣は、コロナの腕に命中した。しかし、頑丈な手に弾かれてしまい、すぐさま反撃を仕掛けられる。
「そこですわ!!」
「まだ!!」
コロナは指を指して、魔力を使った光線でイリルを攻撃する。イリルはコロナが放った光線を盾で防ぎながら隙を伺った。
「貫きなさい!!」
「ぐっ、速い!」
コロナは床に魔力を蓄えた手を力強く当てた。すると、床からトゲのような物が生えてきて、イリルを追いかけるように攻撃を仕掛けた!
次々とトゲ避けたイリルや笑達は、その隙として攻撃を仕掛けようとする。
「光線!」
「無駄ですわよっ!」
イリルは魔力の技を次々と避けながらTypeの力を放った! コロナはイリルの隙を突いて、再び魔力の光線を放った! イリルは空中に居ながらも盾を構えて、技を防ごうとしていた……すると――
「あっ! しまった……!!」
イリルが持っていた盾は、強烈な攻撃に耐えられずに壊れてしまった……! 光線は止まることはなくイリルを押し出して、床のトゲにも刺さってしまった……。
「ぐあぁぁぁ……!」
「きゃぁぁぁ!! イリル!!」
「そんな……イリルさん……」
イリルは片手剣を離してしまうぐらいに力が入らず、仰向けのまま倒れてしまった……。
凛星は、床に倒れていたイリルを痛々しく見ながら、ポケットから十字架が描かれている長方形の石のペンダントを取り出していた……。
(コロナに弱点を与えれば……でも……)
「凛星……まさかその石で、弱点を与えるのか?! この『十字架の魔力石』は、魔物を連想させるウイルスに対して、高い効果を発揮するが、Typeの力を持たないものや使いこなせない物が使うと、命まで消耗してしまう! 劉輝の死因はTypeの力を持たない状態で、それを使ったからだ! 君がTypeの力を使った所は見てないが……」
「そんなの分かってるわ! 父上は犠牲になってでも、シャドウ・コロナとの戦いに必死だった! それと、私は李徴さんと同じ『Thunder』タイプの力を使えるわ……でも、Typeの力はみんな「プログラムの力だね」って言われて、嫌な気持ちだったから……あまり使ったことはない……けど……」
凛星はうつむきながら、手に持っていた十字架の石を見つめていた……。
それと横目に、駆は前に出て拳を握りしめながら、はきはきした声で話した。
「イリルさんが起きるまで、オレがコロナを耐えしのいでみせる!!」
「無茶だ! コロナと君じゃ、力の差が……!」
「いや、オレの『属性体』もこの時に必要としているかもしれない……もしかして、持病じゃなくて『祝福』かもしれないね……」
駆はTypeの力を拳に蓄えながら切ない感じで、手を見つめていた……。美菜は、長杖を持ちながら話して、次に笑や李徴も、危険を感じて――
「待ってください……! ひょっとして、一人で挑む気ですか?! 私もご協力……します……!」
「私も……イリルさんの為にも戦いたい!」
「君一人では、危険だ!」
「美菜……笑もいいの? 一人で挑むことをするつもりないけど……奴は強力だし……」
「はい……バグト・タラチュラが研修会場にやって来た時、私が逢神先輩に言った言葉を覚えていますでしょうか……」
駆は初めて、美菜とウルに出会ったあの時を思い出していた……。出会ってから約二ヶ月程度経っていた今でも、まるで昨日の事かのような思い出だった……。
――「えっと……逢神さん、私は間違ってないと思います……誰かが困っている時に助け合うこと、そして支え合うこと、このことを意識すればファイターズはもっと強く、優しく、凛々しくなるのではないしょうか」
「うん……覚えているよ……美菜は遠くからマジックを、笑とセナさんはイリルさんの防衛に、李徴さんと凛星様はオレとは別の方向から仕掛けて! オレ提案について乗ってくれるかな……?」
「はい」「いいよ!」「お願いね!」「これでいこう」「わ、わかったわ」
「あ、ありがとう!」
満場一致で、駆の作戦に乗ってくれるみんなに、「ありがとう」では足りないぐらいに、みんなに感謝した。
「あら? あなたたちもやる気ですわね! かかってらっしゃい!」
コロナは再び魔力を纏いながら、戦士達に攻撃を仕掛けた! 駆の作戦通りに、李徴と凛星は駆と別の場所から攻撃を仕掛けた! 笑はイリルを必死に守ろうと向かって来る攻撃を、ジェットブーツで蹴って防いだ。その後、美菜はマジックを繰り出して、支援や攻撃を繰り出した。
そんな中で、後にやってきた二人の影がこちらへやって来る……!
「間に合ったか……? ……! イリル! 大丈夫か?!」
「……」
「遅かったか……?」
「ウル……と、あの人は……?」
北郎はイリルの脈を調べる為に、右腕を当てた……。
「いや、まだ息はあるぜ!」
ウルはイリルの安否確認を聞いた後、セナに向かって牛乳パックのような物を投げた。
「まだ息はあるなら……セナはこれをイリルに!」
「これって……ポーション? しかも一番いいやつじゃない! いいの?」
「ああ、万が一の為に取っといたんだ……」
「イリル……飲める?」
イリルは意識はあるものの、言葉を発することは出来なかった……。 口にストローを当てると少しずつだがポーションを吸っていた……。
そして、ウルと北郎はすぐさまコロナの元へと向かって、戦いに参加した……!
「ヴァーダー!」
「うらぁ!!」
「はぁ!!」
「なんて素晴らしい連携……でも残念ですわね! これであなた達は終わりですわ!!」
「……! なにあれ……?」
コロナの頭上に禍々しくも、光り輝いている魔力の塊を空に浮かびあがらせた! すると、コロナはその塊を地面へと落下させた!
「さようなら!! 永遠に!!」
「落とさせないよっ!」
「ダメだ! もう間に合わない!! イリルさんはまだ起きないのか?!」
笑は魔力の塊に向かって、ブラストを使おうとした……! それを見たセナは、笑を守ろうとしてバリアを展開しながら、急いで向かいながら叫んでいた!
「みんなーーーーーー!!」
ドッカーーーーーーン!!
……。
ここは……私……さっきコロナの攻撃を受けて……。
いったいどこなんだろう……何だか身体が軽い気がするし……それに、みんなはどうなったんだろう……。
ダメだ……今のままだと様子を見る事ですら出来ない……。
とりあえず……歩いてみるしかない……。
「イリルと言ったか……初めましてかの……」
「あんたは国立 劉輝……?」
いきなり真っ黒な場所から、芝生が覆われており、川が見える場所へと移動していた……。そして、老人の言葉を使う中年男性が私の前に立っていた……。
「イリル……主には秘められた力がある……これは、わしの遠いご先祖様が残した言葉じゃ……」
「ご先祖様って……『リグル』のこと……?」
「なんじゃ、もう思い出しておったか」
「初めまして……イリルさん……」
劉輝の背中から、恐る恐ると姿を見せた茶髪の青年が劉輝の隣に立って、言葉を発した……。この青年……確か……ニュートラル中央公園で事故に遭った――
「あんたは確か……笑と親しかった『俊』……?」
「はい……」
俊は何だか元気ないような感じで、私に挨拶をした。劉輝は悲しい顔をしながら、首を横に振る。
「イリルよ……主がこんな死者だらけの所にはいちゃいけないよ……主には『第二の地球』を守る重大な事を任されてる事をわしでも知っておるよ……」
「うん……でも、私はシャドウ・コロナの攻撃を喰らって……負けちゃった……こんな私が、世界を変えるなんて……」
「だからと言って、ここにとどまる気か? そう簡単に諦めるからこそ、世界は変わらないんじゃよ! 主にはライルの他に、笑や駆、ウルや美菜に李徴だっておる! そして戦士以外にも、若葉や凛星、コマ子や蜥影にアプルだって皆、イリルの為にも『第二の地球』の未来の為にも懸命に戦っておる! それにも関わらずにダークマターに平気で奪われたら、「残念だったね」じゃ済まされん事になるんじゃぞ!」
「……」
「イリルさん、僕は笑ちゃんに伝えたかった事があるんだ……でも、闇バイトに応募した上で事故に遭って……せっかく上京したのに、人生がなくなっちゃうなんて……」
「……笑もあんたがいなくなって悲しんでた……」
「わしも、シャドウ・コロナを倒すことに鍛錬に必死で、娘の凛星の顔があんまり見られなかった……コロナは余りにも強くて、あの時のわしも致命傷になりえなかった……そして、雄一弱点を知っていたわしが身体が尽きても、コロナの力を弱めることに全力を注いで、李徴がトドメを刺したのじゃ! 心残りは、娘にもう一度会いたかった事を酷く後悔しておる……だから、主にまでわしらと同じ運命を歩ませるわけにはいかぬ! 主だってそうじゃろ?」
「私も……! 私もでかいウイルスとの戦いで……命を落としちゃって……私は……今まで、笑や子供達を孤児院の外に連れて行けなかった事を悔やんでたの……笑はあんたのようなトキワタリに憧れを抱いてたから……」
「あんたは?」
「私は『大橋 美子』孤児院の児童指導員で、子供達からおばさんやおばちゃんって呼ばれてるのよ。多くの子供達は孤児院の外に出たがらなかったけれど……笑だけは違った……あの子は外の世界も第二の地球の事を知りたがってた……オーナーがあんなルールを立てなかったらみんなで旅行に行きたかったんだけど……立てられずにじまいだったなぁ……あんたが私の代わりに、あの子を外の世界を連れていってくれないかな? それに、あんたにはまだ思い出せてない事がいっぱいあるんでしょう?」
孤児院の児童指導員の女性、『大橋 美子』は私に手を差し伸べた。
「うん……そうだね……劉輝の言う通り、みんな私の為にも戦ってくれて、シャドウ・コロナの道まで運んでくれた……ここで終わるなんて……『第二の地球』が終わっちゃう……。私……本当はもう一回立ち向かいたい……! そして、ライルともう一回会いたい……!」
私ははっきりとした表情で、美子の手を繋いだ……!
「うむ、その意気込みじゃ! それでは、これを持ったままあの光の柱に向かいなさい。これは、主の秘められた力の一つ『騎士の力』じゃ! 主が雄一残っている『戦士の力』と比べて、守る力に重点を置いておる。これを上手く使い、シャドウ・コロナを倒すんじゃ!! さぁ、行け! 世界の運命は主らにかかっておる!」
「うん……ありがとう、劉輝も俊も美子も元気でね……」
私は走った! 私を呼ぶ、みんなの声を思い出しながら、あの光の柱へと力を振り絞って、息を切らしながら走っていった!
――「もしも『ウイルス大戦』が終わったら一緒に……宇宙で一番素敵な場所へ行きましょ!」
そして、戦いの場に戻り、ガレキまみれで戦った跡が沢山残ったこの場所で、笑は力をふり絞り、ゆっくりと立ち上がった……。
「ゴホッゴホッ……。 あっ! セナさん! みんな!!」
「これで邪魔物はいなくなりましたわね! 今日からあなた達の墓場ですわ!! おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
コロナは指を笑の方に指して、禍々しいオーラを蓄え、笑に魔力砲を放った! すると、駆けてくるように、笑とセナを必死で守ろうとする戦士の姿が鉄壁のバリアを張り、魔力砲をしのいだ!
「はぁぁぁぁ!!」
「……! イリルさん……?」
「セナ……駆……笑……みんな……遅れてごめん……」
「イ、イリル?! それに、そのハンマー……それに、さっきの大きなバリアは……」
コロナの魔力砲を全て防ぎ切ったイリルは、ハンマーを地面に着きながら、片手でぎゅっと握りながら、顔をしかめて、ハッキリと言った!
「なんですの? 私とまだやる気ですの? 今度こそはとどめを刺して差し上げましょう! そして、『コロナ禍3020』を完成させますわよ!!」
「いや……あんたの言う『コロナ禍3020』はもう来ない……来させない! だって、私には守りたい物が沢山あるから……!!」




