トンビバチ
ニュートラルシティのニュートラル中央公園にて、穏やかな風に吹かれるまま、私はセナと一緒に、見張りをしていた……。セナはピクニックで座っている人達や、走り回っている子供達がいる芝生の方へと見つめながら話していた。
「この公園も、色々大変なことになっていたわね……」
「そうだね……こうしてみんな、この公園を安心して使っているのは、戦士達が協力してから得た成果だね……」
すると、歩いていた男性二人が並行して歩いていて、何かを話していた。
「最近、フューチャーファイターズの批判が殺到しているけど、オレはそんなの信じない。戦士達には感謝をしているから」
「ああ、普通の生活をしたいって言ってくるウイルスの方が信じられないな」
この声を聞いて、私達は少し微笑んでいた。以前、檜木様から『ウイルス大戦』は人々からどんどん忘れ去られていくということ、この平穏の物語が当然のように扱われているという、悲しい時代からしての、戦士達への恩恵……。私達はあの二人を暖かい視線で見つめていた……。
そんな中で、公園のモニターで何だか見覚えのある影とカラフルな記事が載っていた……。
「ウル~休憩時間の時、このオープンカフェで休もうぜ~」
「すまねぇ……そこはちょっと……そもそも男二人でいくような所でもねぇだろ?」
「ここのカレーパン美味しいって、ネリネが言ってたから食べたくなって来たんだ~テイクアウトでもい――」
「悪いが、そこに行く時は俺抜きで行って来い!」
駆とウルは、以前ウルと笑と共に依頼を受けたオープンカフェ、『ペドロ・ニュートラル』の独占記事を読んでいた。ウルはここで依頼を受けて以来、可愛い制服が嫌だったのか、二度とあそこへ近づきたがらないようだ……。
そこで、私はウルを助けるべく、二人の元へと向かった。
「駆、カレーパンは私が買ってきてあげるよ」
「あっ、イリルさんにセナさん! 本当に? んじゃ休憩時間の時に一緒に行っていいかな?」
「ええ! それよりも、二人は一体何してたのかしら?」
「実はオレ達、匿名の依頼を受けてここへとやってきたんだ……ここで、待ってろと言われちゃってね……」
「匿名の……?」
「ああ、俺は相手の罠かもしんねぇと思い、駆と同行することとなった」
駆とウルはいったい誰からの依頼なのか、難しい顔をしていた。その後ろに、モニターがピロロンと鳴っていた……。
【速報】 アプル・ディーパが金銭欲を暴露!? 「歌もダンスもお金のために――」
「ええ? アプル・ディーパって有名なアーティストだよね?! でも、何でいきなり……」
「その記事は真っ赤な噓だよ!!」
「誰?」
突然、赤いメッシュがかかったパンクファッションの男性が私達に大きな声で話しかけて来た……。
「お前は……? そして、この記事が真っ赤な噓ってどういう事だ……?」
すると、駆は何かに気づいた感じで、赤いメッシュの男性に話していた。
「あれ? 君もしかして、『木胡李 蜥影』君……? ひょっとして君が依頼者?」
「そうだよ、俺は『木胡李 蜥影』、君たちに依頼した」
「やっぱりそうだよね! 君は『最強! トップスクール!』で紹介されてたから、どうりで似てるな~って思ったんだ! 『虫マニアの男子に密着!』で放送されてたからさ……」
「俺はテレビを観ねぇからわからねぇ。それよりも、お前の身の回りでなにが起こったのか説明してくれるか」
「ああ、実はまさに今日は『最強! トップスクール!』の収録で、俺もスタジオで出演する予定だったんだ……」
――ドキュメンタリー番組の出演者の蜥影は、今まで起こったことを全部話してくれた……。すべてはテレビ局、『メイキョウテレビ』で起こった事だという……。
「俺はこの後、番組の収録にスタジオに向かう途中で、忘れ物に気付いて一度楽屋に、急いで戻ったんだ。もう一回向かおうとしたらスタジオに『トンビバチ』っていう原生生物が飛んでいたことに気付いたんだ……。トンビバチは比較的に大人しい虫型原生生物で自分からは攻撃しない、そしてテレビ局に対処してくれる人がいてくれて、急いでって言われたから急いでスタジオに行ったら……」
「うわぁぁぁぁぁ!! なんやねんなぁぁぁぁ!!」
「今日の収録どうなってんかいな!!」
「MCのザ・インターネッツの二人が大声で叫んでたから、どうしたんだろうって開けてみたら……」
「ゴホッゴホッ……! こ……これって……」
「変な霧がモクモクと出てきて、必死に振り払った! そして、霧が晴れたら、スタジオには誰もいなかった……そして、中にもトンビバチがいるだけだったんだ……」
蜥影は、下を向きながら手に腰を当てながら話していた。話を聞いたセナは――
「ひょっとして、アプルもザ・インターネッツの二人も出演者もさらわれたってことかしら?! それなら何で最初から言わなかったの?!」
「いきなり知らない男から、アプルさんの事を話しても怪しまれるかもと思って……でも、駆さんが俺の事を知ってて、本当に感謝してるよ」
「う……うん……ありがと? あと、オレは呼び捨てで構わないよ……同い年だし」
「なるべく早く、急いで救い出さないとな……ってん?」
ウルは何かを見つけたのか、歩道橋を睨み付けていた。そして、歩道橋の上に飛んでいる何かに対して指を指し、蜥影質問をした。
「なぁ、あれってトンビバチか……? 追いかけてみるぞ」
「あっ、ウル! 待ちなさい!」
「戦士達ってみんな単独行動が得意なのかな……?」
「ウルの様な人だけだよ……」
ウルが音速でトンビバチの後を付けた。その後、私達もウルを追いかけてトンビバチの後を付けていったのだった……。




