Act.1-3 大型襲来
――その一方で……。
「はぁ……熱かった……」
オレはチェックを終えて休憩中……。さっきの炎が消えてからしばらく経って、歩こうとしたけど、まだ腰が抜けてて歩けなかった。
「早く戻りてーなぁ……」
そう呟いたら、美菜がこっちに向かってきた。
「駆さん、身体の調子はどうですか?」
「あ、美菜……。うん、さっきよりはマシになったけど、まだ腰が抜けてて……」
美菜にまた助けられて、オレはまた情けなく感じた。さっきの炎を水のマジックで美菜が消してくれたおかげで、中止にならずに済んだけど……。さっき起こっていた出来事を美菜にお礼を踏まえた上で話してみた。
「ごめん……また助けられて……」
「いいえ、大丈夫ですよ。あっ、あの……これをおひとつどうぞ」
美菜は端末から袋を出していた。
「これは……」
美菜が袋からクッキーを取り出して、オレに1枚差し出した。
「研修の人たちにと思って、私はお菓子を作るのが好きで、ちょっとした気持ちですが……」
「あ、ありがと……」
オレは早速一口食べてみた。味は、甘さもちょうど良く、サクサクで、口で溶ける位の硬さで自分好みの味だった。
「う、美味い! 食ったらなんか調子が出てきた気がするよ!」
「それは良かったですね」
美菜が作ったクッキーを最後の一かけらまで食べた後、急に立てるようになった。何で急にこうなったのかな? 練習の成果ではなさそうだけど?
「でも……たくさん練習してきたのに、あんまり活かせなかったのは、情けないよな……」
すると、美菜も立ち上がって、こう言い放った。
「さっき炎が消えなかったりしたのは、多分練習のし過ぎで休憩をしなかったのが原因でしょうか?」
「練習のし過ぎ……」
そういえば……しばらく休憩しないで練習ばっかりしてたっけ……。
「練習に励むことは素晴らしいですが、休憩も大事ですよ。次からは練習時に休憩を挟んでみてくださいね」
「うん、次から気を付けるよ」
美菜の支えもあり、オレは完全調子が戻った気がした。次の研修になんとか行けそうだ。そろそろ戻ろうかと思っていた時、レイさんが慌てた様子でオペレーションした。
「た、大変です! 一旦研修を停止します!」
「え、どうしたの?」
「ウイルスが! 大型のウイルスが会場に出現します!」
会場にウイルスが来る?! オレはあまりに急展開すぎてまた腰抜かしそうになった。いや、いけねぇ……早くどっかに逃げないと……。あれこれ考えたら、大型のウイルスが何だか禍々しい穴から現れた!
休憩を終えて、そろそろ次の研修に向かおうとしていたオレ、しかし突然大型のウイルスが会場に現れて研修どころではなくなってしまった。一旦撤収しようかと思っていたところ、炎や雷でできたかの様な変なスライムみたいな生き物がそこの茂みから出てきた! 一体なんて言う生物だろう……。
「なぁ……このスライムみたいなのって何?」
「あっ! 触らないでください!」
美菜は慌てた様子でオレに話しかけた。
「それは、セルゼリーと言うウイルスの一種です! 駆さん、離れてください!」
美菜に言われるがまま、オレは後ろへ緊急回避をした。美菜は杖を取り出して、マジックを放った。
「ヴァーダー!」
美菜はAquaのマジックを放ち、さっきのセルゼリーは液体のようになっていって消滅した。どうやらセルゼリーと呼ばれる奴はTypeの力の因子で出来ているスライム型のウイルスで色々な種類があるらしい……。
さっきのセルゼリーが消滅したら、穴からセルゼリーの大群が降って来た!
「まだ出てくる! オレも一緒に戦うよ!」
「あ、ありがとうございます。そしたら、私が吸引マジックを使うので、まとめて攻撃を!」
「きゅ、吸引? Aquaのマジックに吸引なんてあったっけ?」
「吸引マジックはWindタイプで、マジックは自身と違うTypeの攻撃を行うことが出来ます。でも、時間がないので、早速使います」
確か美菜が消火使ってたマジックは『Aqua』だった。……ってことは美菜のTypeの力は『Aqua』のマジックユーザーってこと……?
「ウィンデール!」
風の発生場所にセルゼリーが引き寄せられてきた! マジックってすごいなぁ……。あ、いやいや……今のうちに……。オレはTypeの力を使って攻撃した。
「フレイムアッパーー!」
美菜との連携もありセルゼリーや他の小型のウイルスをたくさん倒していった。
「この辺の小型のやつはもういないよな……」
「はい、あとは大型のウイルス、バグト・タラチュラのみですね……」
「バグト・タランチュラ……? さっきのでかい蜘蛛みたいなやつ?」
「そうですね、実は私の研修時にもバグト・タラチュラが現れてしまって……その時は先輩が一人でなんとか倒し切ったようですが、2体目が現れるなんて……」
えぇ……オレがこの街に来る前に来ていたってことか……。最近この街で物騒な襲撃事件が連発しているって聞いたけど本当だったのか……。
「ブガァァァァ!」
バグト・タラチュラが突然足で攻撃を仕掛けた! ヤバい、避けきれない!
「ふんっ!!」
すると突然誰かが攻撃を防いだ! ん? 狼? この人もファイターなのかな……? 狼の人がバグト・タラチュラの攻撃を防ぎながら、突然こう言った。
「俺はこいつを引き付けるから、お前らは早く逃げろ!」
オレ達に突然逃げろって言われた。でも、めちゃくちゃやばそうなのに一人で挑むつもりか……? いくら倒したことがあるからと言って、無理ゲーじゃないか! オレも一緒に戦わないと……!
「いや……」
「何もたもたしてんだ!」
「オレは……君を見捨てることは出来ない……!」
急いでバグト・タランチュラの方に向かい、狼の人が防いでる間、急いで攻撃を与続けた。パンチや技を繰り返していたら……。
「ブガッ?!」
なんと、バグト・タラチュラの脚が部分破壊されて、やつの体制が崩れた!
「おい……」
「ん?」
狼の人が突然オレに話してきた。……ってとどめは……。
「何で勝手なことするんだ?」
「だ、だって君がピンチだと感じたから……」
「……フン、借りができちまったな」
オレって勝手なことをしてたのか? ただオレは助けようとしただけなのに……。それを考えたら美菜もこう言ってた。
「えっと……逢神さん、私は間違ってないと思います……誰かが困っている時に助け合うこと、そして支え合うこと、このことを意識すればファイターズはもっと強く、優しく、凛々しくなるのではないしょうか」
美菜はオレをフォローしているように、狼の人に話した。それを聞いた狼の人は……。
「フン……勝手にしろ……」
どうやら狼の見た目からとしてかなりの群れ嫌いの人だったようだ。
あ、まずい……! あれこれ考えていたらバグト・タラチュラが起き上がりそうだ! 早く倒さないと逃げ出したしそう!
「まずい……このままだと再び逃げ出してしまう……。そこの研修生と美菜! 急いで攻撃を仕掛けろ!」
「あっ、う、うん!」
「は、はい!」
狼の人の指示通りに、オレと美菜は急いでバグト・タラチュラに攻撃をした!
「ヴァーダー!!」
「フレイムナックル!!」
バグト・タラチュラはフラフラ状態になっていたが、まだ倒れていない。すると狼の人も攻撃に参加してきて――
「お前ら、早く逃げろ! あとは任せろ! 弱点は、そこだ!」
狼の人は、ブラストを使って、バグト・タラチュラの弱点に向かって、トドメを刺した。
「雷に飲まれろ!!」
「ブギャァァァ!」
「やったー! 討伐できた!」
バグト・タラチュラは声を挙げて消滅していった。すると、レイさんの通信が入って来て……。
「駆さんに美菜さん! お二人とも大丈夫ですか?!」
「はい、こちら駆、三人全員異常なしです!」
「さ、三人? まさかそちらに逢神さんも?」
お、逢神? ひょっとして、さっきの狼の人だと思うけど……。
「はい、俺は大丈夫です」
「こちら見剣、ウル……散々一人が良いと言ってたお前が珍しく連携をするとはな……。協力をした方がリスクが少ないって言っただろう」
「……ふん、たまたまです……」
ウル(?)って言う狼の人が少し赤くなり、尻尾を大きく振りながら話していた。今回で協力することの大事なことを知ったのかな。
その後、研修を全て終わらせることができて、オレも今日から本当に戦士として認められるようになった。その後オレは、食堂に向かった後、ウルがこっちに向かって来て話しかけてきた。
「駆……だよな……」
「あ、うん、そうだけど……」
「名前は名乗らなかったが、俺は逢神 ウルだ。駆、今日は……ありがとよ……」
ウルは突然オレに礼を言い出した。
「お、おう……!」
「もしお前がいなかったら、バグト・タラチュラを倒すことはできなかった。今回は礼を言いに来ただけだ」
「ど、どうもいたしまして……?」
え、えっと……オレ、ファイターの人助けをできちゃった?
ウルはお礼を言ったあと、このまま食堂の方へゆっくりと向かって行った。とりあえず……新しく戦士になったオレ、これからの戦いは一体どうなっていくのだろうか……楽しみだ!
――一方、異次元のどこかで……。
茶髪の少女がタイムマシンに乗り、放浪していた……。
『エンジントラブルが発生しました』
タイムマシン内のAIが少女にアラーム音を流しながらアナウンスをした。
『緊急着陸を推奨します、身の安全を確保してください』
着地先は、西暦3020年……。タイムマシンは光より早く着地先へと向かって行ったのだ……。
駆達のキャラクターデザイン、只今、制作中です……。
進行状況によっては遅くなってしまう事もあり得るので、ご了承ください。




