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3020ストーリー~『第二の地球』と戦士の記憶を辿りながら~  作者: ユニィウルフ
〈第一章〉共鳴する過去の灯

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人形を探して


 「初めまして、あなたがトキワタリのイリルさんとセナさん? 会えてうれしいわ! アタシはミライ大学教育学部、2年生の『巣止音 コマ子』、よろしくね!」

 「よろしく、コマ子」

 「初めまして、コマ子さん、私は――」

 「フューチャーファイターズの美菜さんに笑さんね! お会いできて光栄だわ!」

 「まだ紹介していないのに?! 戦士達の情報って、キャンパス中に広まるものなのかしら?」

 「そうよ~工学部や理学部の学生達は、ある戦士さんのことばっかり話してたの。その人はミライ大学をトップの成績で卒業していたらしいの。『機山 桃』って言ってたわ」

 「えっ……桃が……?」


 なんと、桃がミライ大学出身だったなんて……私は目を見開いた。

 確かに桃は、普段は変わり者だけど、技術力は誰よりも優れている。セナに出来ることを増やしてくれたり、プロジェクターを直してくれたりと、色々助けられているな……。

 そう考えていたら、コマ子は笑顔から一転、真剣な表情で私達に話した。


 「あっ! お喋りしている場合じゃなかったわ! 用件を話すわね! 実は、今度撮影に使う人形が、気付かないうちにいなくなっちゃったの……やっと見つけたって思ったら、何だか怖い感じで一人で動いてたの! ウイルスになったみたいだったわ……」

 「人形がウイルス……?! どういう事かしら……?」


 コマ子は人形をぎゅっと抱きしめて、下を向いていた……。


 「一体を捕まえて見つからないように、マジックを使って、荷物に隠してたの。でも、席を離れた隙に人形がまた逃げちゃって……。その上で、他の子が目撃しちゃったの! そのせいで、アタシがウイルスのスパイだの、大学汚しだの書き込まれちゃう始末なのよ~! このままデマが広まっちゃったら、退学になっちゃうかもなの……」

 「それは酷いわね! 早くしてでも、人形を元に戻しましょう! そして、大学で誤解を解きましょう!」

 「ありがとう、セナさん!」


 コマ子はセナの手を掴んで握手をしていた。その後ろに、小さな何かがシュっと素早く飛んでいた……。


 「あっ! あの人形じゃないかな? は、速い!」


 美菜は急いで、長杖を取り出して、Typeの力を使った。


 「おまかせを! バブルバインド!」


 美菜が繰り出した泡で、逃げ出しそうになった人形は手足も動けなかった。そして、その人形と同じような人形も大学に入ろうとしていた……。


 「美菜! まだいるよ……!」

 「はい!」 


 他の人形達も泡に閉じ込めた。人形達は必死になって動こうとして、泡が弾けそうになってきた……。笑は、泡に向かって飛び出し、出て来た人形達を捕獲した。


 「よし、捕まえた! ……う~ん……?」

 「笑? 難しい顔してどうしたの?」

 「捕まえたお人形さん、何だかコマ子さんのパペットちゃんに比べて、ちょっと雑じゃない?」


 笑は私達に、持ってた人形を見せた。すると、コマ子は手を腰にあてて――


 「もう! アタシのパペットちゃんにそんなこと言っちゃったダメ……ってあら?」


 コマ子は何か違和感を覚えたかのように、首を傾げながら、人形をじっくりと観察した。


 「よく見たら、アタシが探してたパペットちゃんじゃないわね……色は似てるけど、作り目が雑だし……この素材は使ったことがないし……」


 確かに、パペットちゃんと比べると目や体の造りが何だか違う気がする……。コマ子が作ったかにしてはあまりにも雰囲気が違いすぎていた……。すると、美菜は前を長杖を指して来て――


 「あっ! 皆さん、前にご注目を!」

 「え? うわぁ!」

 

 地面から突然、ウイルスが湧いて出てきていた!


 「セルゼリーとチキ・トリス……?」

 「みんな、ここは私が!」


 笑はウイルス達の前に立ちはだかり、Typeの力を使って、回し蹴りを繰り出した。


 「それっ!」


 回し蹴りに巻き込まれたウイルス達は、次々と飛ばされながら消え去っていったのだ……。


 「すごいわね、笑さん!」

 「それにしても、この辺りはウイルスの目撃情報が少ない地域のはずです……一体どういう事でしょうか……」

 「確かに……ミライ大学周辺は防御態勢が高いから、あまりウイルスは見ないんだね……でも、どうしていきなり……?」


 私達は、これまでの事で、疑問に思ったことを考え合っていた……すると、私達に男性の声がして来て――


 「それは、その人形に反応したからなんだ」

 「ん? あんたは?」

 「あら? 従兄弟の希人(きひと)じゃない! どうしてここがわかったのかしら?」

 「たまたま、コマ子の人形が襲ってきたって噂を聞いてさ、手伝いに来たんだ。そしたら、ここに来た」

 「大学内の噂って、結構広まるの……?」

 「そういえば、今度撮影に使う人形達が何処にもないのよ……可愛い箱に入ってたんだけど……希人は何か知らないかしら?」

 「箱? ごめん、知らないなぁ……道中、人形が飛んで行ったのは知っているけど……」

 

 希人は首を横に振って、話していた。すると、セナはこれまでの事を話した。


 「私達、コマ子の人形探しに来て、やってきたのよ。でも、飛んでた人形がコマ子のじゃなかったわ」

 「なるほど……これは、キャンパスの中の誰かがコマ子の事を狙っているかも知れないね」

 「え?! アタシが?! サークル内はみんな和気あいあいとしているし、噂ですら信じなかったし、同級生達は、そうしてくるとは思えないし、心当たりがないわ!」

 「実は、本当なんだ……誰もかも、外装と内装があったりする。例えば、見た目は可愛いぬいぐるみでも、中身は綿じゃない何かのような物さ……人間に例えると優しく振る舞ってた人が、裏では陰口を叩いている……のような感じでね」

 「た、確かに……」


 希人は目をつぶりながら話していた……。美菜は笑が持っていた、雑な造りの人形をそっと見つめて、コマ子達にこう話した。


 「あ、あの……この人形を預けさせても大丈夫でしょうか……」

 「え……アタシは全然いいけど……あなたは危なくないの?」

 「はい、フューチャーファイターズに何か分かる人がいるかもしれないので」

 「きっと、桃博士のような人だろうか……博士がいれば――」

 「いえ、桃さん以外にも優秀な戦士がいっぱいいます。特に捜索に適した人を呼んできますので」

 「そ、そうだよね、それじゃあ俺はこれで失礼する」


 希人は私達の前から去っていき、駅の方へと向かっていった。そして、気が付いたら、日が沈んできた時間帯となってきた。私達もそろそろ戻らないといけないと思っていたら、コマ子が人差し指を合わせて、視線を逸らしながら、こう口にした。


 「アタシから、もう一つお願いがあるの……ダメ元だけど……」

 「何?」

 「今日だけ、あなた達の所へ泊まってもいいかしら……? アタシ、一人暮らしの上に狙われているって言われて、何だか心細くなってきちゃって……友達も巻き込みたくないから……」

 「ええ?! なんで急に?!」

 「私達の拠点はホテルじゃないのよ。でも、狙われてるってなると、命の危険もあるかもしれないし……」

 

 笑は見開き、大声で話して、セナは画面をシュっと取り出した。


 「ちょっと、隊長と連絡してみるわね」

 

 セナが急いで、李徴に通信を繋げて、これまでの出来事を詳しく簡単に話した。セナは画面をコマ子の方へと向く。


 「君がフューチャーファイターズに依頼してきた、コマ子殿か、部屋の貸し出しは本来行っていないが、イリル達が使っている部屋を使うといい、身の回りの物は自分で用意することとなるが、それでも大丈夫か?」

 「はい! ありがとうございます!」

 

 コマ子は胸に手を当てながら、李徴に礼を言った。そして、私達はコマ子と一緒に拠点に戻って行った……。

 そして、拠点内にて……笑は駆とウルを呼び出し、ロビーに円になりながら話していた。


 「つまり、依頼者の学生さんが泊まりに来てるってことなんだね」

 「俺達も状況が怪しいのに、よく許可を出してもらえたよな……」

 「こんな状況の中、人形を探してくれて本当にありがとう!」

 「オレは全然、どうってことないよ」

 

 二人共、コマ子の人形探しに協力してくれるそうだ。それをは別に、美菜はコマ子に向かって、不思議そうな顔をしながら話していた。


 「コマ子さん、少しお聞きしたいことがあります……パペットちゃんはこの手紙を持って来てくれたってことですが、実際どんなマジックを使うのでしょう?」

 「ああ、あれはマジックじゃなくて、超能力なの」

 「ちょ、超能力?! 実際にもあったんだ……」

 「うん、アタシの一族は『ストップ・ドール族』と呼ばれていて、物をコマ撮りのように動かすことが得意な人が多いのよ」

 「何だかストップ・モーションとドールが混ざったような名前ね……」

 「このように動かすのよ! パペットちゃん!」


 コマ子は長杖を取り出して、パペットちゃんを呼びかける。パペットちゃんはロビーのツルツルの床を歩いて行った……まるで、人形に命が宿っているかのようにと……。すると、笑は拍手をしながら話した。

 

 「わぁ~すご~い! 何だか『コマドリアニメ パペットランドのペペ』にそっくり!」

 「ええ! アタシがもっと、この力について知りたいと思ったのは、ペペのお陰! そして、その力が鍵となって、みんなに人形について知ってもらいたいと思いもあって、ミライ大学の教育学部に入学したわ」

 「先ほどの超能力で、子供達に人形劇を披露するんですね」

 「そうよ! でも、この超能力は、昔はあまりいい事には使われていなかったの……人を脅かしたり、人形を使って悪いことに使われていたから……そのせいで、アタシもストップ・ドール族って知られたら、白い目で見られるか心配で……」

 「そんなぁ……コマ子さんは何も悪くないのに……うっ!!」


 笑は突然、頭を抱えながら、考え込んでしまった……どうしたんだろう……。



 ――「みんな、妹の――だと知られたら……」

 「笑?! どうしたの……?」

 「あっ……ううん、何でもない……」


 笑は何事もなかったかのように振る舞っていた……。そして、コマ子が話し続けた……。


 「でも、おばば様はこの状況を変えてくれたの。アタシが小さい頃、この力を使って、コマ撮り映画を作ってくれたの! そして、大反響だったの! その後、おばば様は「自分の好きなことをやってみなさい。周りから、厳しい目で見られても」って言われるようになってから、アタシはここまでこれたの。だから、フューチャーファイターズの皆さんにも、どんな酷い事を言われも……この世界を守って欲しいの……」


 コマ子は輝くような表情で、私達に話した……。私は胸に手を当てて――


 「うん、コマ子の思いは伝わったよ……私達は守ることをやめたりしない」

 「今更、心無い書き込みを書かれてもって感じだしな」

 「ああ、俺は他人の評価は気にしてねぇ、自分のことをやる、それだけだ」

 「みんな……ありがとう!」


 コマ子が目を輝かしながら、私達を見渡していた。

 すると、駆は美菜が持っていた人形について話した。


 「あれ? 美菜、その人形って……」

 「これですか? 実は、襲ってきた人形の正体かもしれないと思い、少し預からせてもらって――」

 「ん? それ、なんか変な臭いがするぞ……今すぐ素材を確認してもらえ」

 「本当に? 確かに変だなって思ったけど、そこまで酷いのかしら!?」

 「俺は嗅覚が得意だから、すぐわかった……カメムシみてぇな臭いがしたから」

 「カメムシ!? アタシのパペットちゃんじゃないからまだいいけど……」


 こうして、桃の所へ行って、人形を調べてもらうこととなった……。すると、とんでもないものだと判明した!

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