人形に連れられて
そして、児童達の姿が完全に見えなくなった後、私達は李徴にすぐさま、連絡した……。
「なるほど……奴はシャドウ・ウイルスの名前を残して消えていったのか……」
「ええ、そのウイルスは主はシャドウ・コロナだみたいな事を言っていたから、間違いないはずよ」
「だが、最近厄介な事に、我々フューチャーファイターズの依頼が前より明らかに減ったのだ……」
「はぁーー? どういうことだよー! これからは、自分で守りますとでも人々は言うのかよ~!」
「落ち着いてくれ、ラルク……。確かに自分で自分を守ることは、常識的な事だが、それが、ウイルスを相手にするとなるとは、考えにくい。その件については、オペレーター達が詳しく知っている。トア、説明してくれないか」
李徴の隣にある椅子に、トアがこっちを向くように回し、立ち上がった。
「了解しました。みんな、これを見て」
トアは大きな画面を私達に見せて来た。これって、この時代のSNSアプリ、『ツブヤキリンゴ』だ……。でもなんで急に……。この投稿をよく見たら、フューチャーファイターズを批判することが書かれている……。
フューチャーファイターズ? 依頼を出してみたけど、大した事なかったぞ
これからはどこに依頼を出すべきだろうか
正義面している戦士なんか、ウイルスにやられるべきだ
依頼を出してみたが、すっごく乱暴だった
特にイッヌ剣士が手柄悪すぎ
後、イッヌの毛が落ちてた
戦士なんか仕事泥棒と同じだ!
この前、バイト先で訳も分からずクビを言い渡された! 消えろ!
返信:お前はいつも仕事をサボってるからクビにされたんだろ。戦士に責任を押し付けるなゴミ
「……」
「酷いわ! 私達が必死でウイルスと戦ってきてるのに!」
「これは、駆とネリネ、そして弓が集めてきてくれた資料だよ。前からは批判に関することは数える程だったのに、この時期になると、急に増えだしてきて……とりあえず、私は原因を探ってみるよ」
トアはそういいながら、再び端末の方向へと向かって、パネルをカタカタと打っていた。そして、それをみて、こわばった視線で見ているセナなの横目に、優二とラルクは、それぞれ顎に手を当てたり、腕を組んでうつむいていたりしていた。
「詳しくみた結果、確定ではないデータがいっぱいあるな……よく見たら、賛否両論の書き込みもある……」
「オイオイ、俺達は今まで戦ってきたのに、何様のつもりだよ~! ネリネなら「突然の悪口許せん! 戦士代表して、お仕置きしてやる~!」って言ってレスパしそうだしな」
「……もう、無視して報告だけでいい……」
「ああ、私達はなるべく早く原因になった投稿を突き止める。皆もなるべく不要な口争いだけは起こさないように。それでは」
私達は、そろそろ拠点の中へと戻ろうとしていた。優二とラルクは、まだ、悩んだり怒ったりと繰り返していた。その後、セナに『ツブヤキリンゴ』の通知がピコっと鳴っていた。
……ん?
皆さん初めまして! これからは、ウイルス達と共に歩む時代です! 今まで、全人類の皆様と、私達との関係が争いを絶えなかった時代でしょうが、これからは違います! 私達はただ普通に過ごしたいんです! なのでどうか、私達の同族を倒すのをやめてください!
(なんだろう……この書き込み……ウイルスの書き込みに違いないみたいだけど……)
――そして、翌日……、ベッドから降りて、背伸びをしていたら、セナから着信音がしていた。
「あら? 笑からだわ? 繋げるわね」
「おはよう! イリルさんにセナさん! ちょっといいかな?」
画面から、笑と美菜が映っていた。どうやら、二人は今、自販機がある部屋にいるらしい。美菜が不思議そうな顔で私達に手紙を取り出した。
「実は、変わったお人形さんが手紙を持ってて、部屋の窓から、私と笑ちゃんの元へとやってきました……そして、手紙にこんな事書かれてました」
トキワタリ様へ
突然のお便りで、失礼いたします。
あなた様に解決してほしいことがあって、
この手紙に書きました。
この手紙と共に、パペットちゃんを連れて
ミライ大学のプラネットゲート前に来てください。
そこで、合流しましょう。
ミライ大学 2年 巣止音 コマ子
「これって……ミライ大学の学生からの手紙……」
「ミライ大学の学生から……? 普通、依頼を出すときに手紙じゃなくて、サイトにログインして出す……って感じだよね……」
「恐らく、フューチャーファイターズの評判が影響しているのでしょう……周囲からは「戦士に依頼を出すな」って言われたりそれに関した事を噂に流したりしていたので、それができない状況だったのでしょう……」
「なるほど……」
私とセナは笑と美菜と一緒に、ワード区にある『ミライ大学』へと、たどり着いたのだ。
『ミライ大学』はこの第二の地球上、トップクラスの成績を誇る国立大学だ。合格率は僅かの8%であり、非常にレベルが高く、多くの医師や教師、そして、天才科学者がこの大学を卒業しているらしい……。
また、同じ設立者が、『ミライ学園』と呼ばれる学園も設立されており、こちらもトップクラスの成績を誇る。その為、初等部からエリート学園と呼ばれている。
ミライ大学のプラネットゲートが見える頃になると、笑と美菜がビクビクしながら、人形の頭を撫でたり、手を摺り寄せたりしていた……。
「等々、ここに来る日が来ちゃったね……」
「はい、メイキョウ地方内で、トップクラスの成績を誇ると言われている……」
「「ミライ大学に!」」
「……ここがミライ大学か……ん? 二人共、どうしたの?」
「い、いや! 何でもない! ただ、平日の大学は、ちょっと緊張しちゃって……」
「行ったことあるのは、去年の学園祭以降ですよね……」
笑達がミライ大学について話し合っていると、パペットちゃんと呼ばれる人形が、やたらと落ち着きがない様子だった。待って、そもそもこの人形……なんで動いてるんだろう……。
「あっ! パペットちゃん! どこいくの?!」
人形は笑から手を離して、プラネットゲートと呼ばれる門の方向へと進んでいった。後を追った私達は、さっきの人形を持った、紫色の髪の毛の学生の前に立っていた……。
「貴方が手紙に応じてくれた、トキワタリさん?」
「あら? 手紙を持って来た人形にそっくりだわ!」




